インタビュー:村上主税TOHOシネマズ(株)代表取締役社長
2008年09月17日
組織と人事で、今考え得る最良の手を打った 3分科会で合併に向け準備
劇場従業員は当面異動せず
組織と人事で、今考え得る最良の手を打った
“興行一本化”の大号令のもと、興行部との統合(06年10月)、傍系興行4社の吸収合併(08年3月)という2つのステップを踏んだTOHOシネマズ。国内の映画興行環境が厳しさを増している中、5社合併という“大仕事”を終えて新たな歩みを始めた同社には、その厳しさへの闘いが待っている。同社の一挙手一投足に、同業の興行他社、配給会社ら業界関係者が注目の眼差しを注いでいる。 ??まず、はじめに06年10月の東宝(株)興行部とTOHOシネマズとの統合以来、08年3月の5社(TOHOシネマズ、東宝東日本興行、中部東宝、東宝関西興行、九州東宝)合併に向けて、どのように準備を進めてこられたのか、お聞きしたいのですが。 村上 06年10月の統合直後から、08年3月の5社合併に照準を合わせ、東宝(株)とTOHOシネマズ、そして興行4社でプロジェクトチームを組織しました。
3分科会で合併に向け準備 ??東宝(株)では、どの部門がこのプロジェクトチームに関わってきたわけでしょうか。 村上 ?橋(昌治)専務取締役が担当するグループ経営企画部が関わってきました。このプロジェクトチームの傘下に実務推進部隊として、3つの統合分科会を組織しました。ひとつは「組織人事分科会」で“合併5社の労働諸条件、雇用管理諸制度をどのようにすり合わせて一つのものにしていくか”ということを、専門的に取り組み推進した分科会です。
もうひとつは「営業分科会」で、さらに『番組編成部会』『コンセッション・ストア部会』『劇場運営部会』に細分化し、5社それぞれの現状の運営、展開の認識からスタートし、オペレーション面での統一を図るべく、部会ごとに課題を解決していきました。
そして「業務分科会」は、『経理部会』『財務部会』『CAST推進部会』『情報システム部会』に細分化しまして、5社それぞれの管理方法や業務の進め方を統一すべく、これも部会ごとに課題を解決していきました。
??5社合併に向けたこうした作業の中で、どのあたりが一番大変だったのでしょうか。 村上 これは一言では言えません。各分科会、各部会共にそれぞれの苦労があり、ここでは各論の詳細に触れることはできませんが、例えば「組織人事分科会」は、社員一人ひとりの仕事を含めた今後に、深くかつ直接的に関わることに取り組むわけです。方向性や具体案を策定する担当者も、それを新制度として受け入れる社員もそれぞれ一言では言い表せない苦労があったと思います。
「業務分科会」の特に『経理部会』でも、5社の会計方針は大枠においては同じなのですが、実務処理のレベルまで掘り下げると5社5様の状態でした。これを“CAST”という東宝の基幹システムを導入するにあたって、各社の業績管理単位の最小単位まで掘り下げて統一せざるを得ないなど、実務面で直面した問題もありました。
会計などは会計原則や法的な基準がありますので、個別特性に富んだ処理というのはそう多くはないのですが、「営業分科会」の中では各社それぞれの“流儀”のようなものや、映画興行という地域密着の展開ゆえに、“地域ごとの独特な商慣習”といったものに対応してきた個別特性が多々ありまして、それらのものへの対応や判断、意思決定には難しいものもありました。