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トップインタビュー:鈴木英夫ウォルト・ディズニー・ジャパン(株) ウォルト ディズニー スタジオ モ

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トップインタビュー:鈴木英夫ウォルト・ディズニー・ジャパン(株) ウォルト ディズニー スタジオ モーションピクチャーズ ジャパン 日本代表

2009年05月08日
ディズニーの“哲学”を感じられる作品群
3D作品を中心に約35本ものラインナップを発表
「量より質」「価値」「信頼」、ジャパンの役割とは─

鈴木 英夫(すずき・ひでお)
1962年11月4日生まれ。東海大学文学部広報学科卒。85年 東宝東和(株)入社(営業部/宣伝部勤務)。96年ブエナビスタ インターナショナル ジャパン入社(宣伝部勤務)。00年エグゼクティブ・ディレクター/宣伝本部長就任。05年11月より日本代表 に就任、現在に至る。
 ウォルト ディズニー スタジオ モーション ピクチャーズ ジャパン(WDSMPJ)は、「ブエナビスタ インターナショナル ジャパン」(BVIJ)の名の元に、1998年に自主配給を始めて以来、ちょうど12年目となる今年、アメリカ本社の全面的なサポートを得て初めて大々的なラインナップ・プレゼンテーション「ウォルト ディズニー スタジオ ショーケース」を東京のTOHOシネマズ六本木ヒルズで、去る2月20日開催した。

 旧BVIJは、07年7月よりWDSMPJと名を改め、現在まで順調に事業を展開。部門名の変更に伴い、“ディズニー”という強力なブランド力を更に活かした事業展開が可能になった。このブランド力こそが、映画ビジネスでディズニーの他社にはないアドバンテージであり、映画会社としてのユニークさになっている。プレゼン当日は、WDSMPグループのマーク・ゾラディ社長、同インターナショナルのアンソニー・マコーリー社長らもアメリカから駆け付けた。

 冒頭、鈴木氏が、「映画作品についても、更にブランディングを活かした製作及び配給方針へと全世界的に戦略をシフトし、ブランドの信頼を損ねるような作品は一切製作しないという『量より質』の不文律が徹底されております。皆様にご紹介させて頂くのは、こうしたディズニー・ブランドの精神から誕生した多彩なラインナップです。中でも、かつてない豊富で充実した3D上映作品群を皆様に実際にご体験頂けることは、今回のプレゼンの大きな特色となっております。しかしながら、3D上映という技術は、新しい映像体験によって観客の映画に対する興味を更に高める為の手段であり、素晴らしいキャラクターとストーリー、魅力的なプロットこそがディズニーにとっての映画の神髄です。

 いまや絶対的な価値観は存在せず、全ての価値は生活者自身が決める時代です。消費動向の動機付けは、『何が必要か』ではなく、『何に価値を見出すか』にこそあり、そうした多様な価値観に沿った、質の高いコンテンツを提供することが、エンターテイメント産業の使命となります。その哲学において、ハリウッドは今なおエンターテイメントの頂点にある、世界の娯楽工場です。昨今、『洋画低迷』と各メディアが盛んに煽っていますが、実はハリウッド映画に限って言えば、アメリカのスタジオが日本のマーケットに求めるシェアは十分に果たしており、その収益性の高さからも、日本におけるハリウッド・ビジネスは微塵も衰えていません。私どもWDSMPJは、これからも日本におけるハリウッド・ビジネスの牽引役として、日本人にとって価値あるエンターテイメントをご提供してまいります。面白いものは、洋の東西を問わず面白い。ワクワクするものは、年齢性別を問わずワクワクする。それを更に、日本人のニーズや感性、文化や世相にマッチしたパッケージで包装し直すことにより、もっとわかりやすく、もっと面白く、もっとワクワクできる映画をお届けすることが出来ると自負しております。ラインナップの全ての作品に、これまで申し上げてきたディズニーという会社の哲学を感じて頂けると確信しております」などと挨拶。続いて、ゾラディ社長自ら約35作品のプレゼンを熱く行った。09年以降の展開、戦略、自らの“哲学”などについて改めて鈴木氏に聞いた―。

ラインアップ発表は初めの一歩

本誌 「ショーケース」を東京で行うというのは初めてですが、この狙いからお聞かせ下さい。

鈴木 これまでも特に計画をしなかったわけではないのです。ただ、色々なタイミングで、我々がアピールできるものが、たまたま偶然重なって、大きなプレゼンテーションという運びになりました。それは今後積極的に推進していく、ディズニー・デジタル3Dラインナップと新たなレーベルの発表、更にドリーム・ワークスとの配給契約ですね。ラインアップ発表会は、当然我々にとっての商品をアピールする唯一の場なので、これまでにも大々的にさせて頂きたかったんですが、ラインアップ発表はあくまでも初めの一歩。実際その映画のプロモーションをどれだけちゃんと、興行の方に納得して頂けるだけのレベルまで仕上げるかということの方が大事。ある意味ラインアップ発表会は大風呂敷を広げるようなニュアンスもあるじゃないですか。結果、そのラインアップがすべて上映された時に、満足のいかない成績が――我々にとってではなく、興行者の方にとって満足のいかない成績だと、やっぱり会社の信用ってどんどんなくなっていってしまいます。もちろん大風呂敷を広げなきゃいけない時代というのもあったんですよね。

 私がこの業界に入れて頂いた25年以上前というのは、ある意味大風呂敷というものが生活者の中にも通用し、他作品との差別化の中に大風呂敷っていうのはインパクトがあったんですが、今は、逆に本来の力の6割ぐらいしか出せないような状況が、ずっと続いてしまっているような気がするわけです。例えば、100億円の興収が昔だったら上げられたのに、今は60億ぐらいしか上げられないとか、仮に50億のものだったら、30億しか上げられないとか。一方、その逆もあって、30億だと思っていたものが、50億になるとか。「レッドクリフ PartⅠ」などは凄いインパクトのある興行をしたと思います。だからそういうものはあっても、昔は大風呂敷を広げれば広げるほど、業界が大騒ぎしてくれて、その業界のお祭度が一般の観客に伝わって、というのがあったんですが、最近なかなかプロモーションが――みんな色々な意味でマーケティングのプロモーションが過渡期というか、全てをやり尽くした感がある。お客さんも映画という商品を買うにあたっては、かなり検証されて買っているような気がするんですよね。つまり、映画館に行って映画を見ることが、以前は気軽な娯楽だったんですが、今の人は本当に無駄な時間を使うのは嫌だという感じ。ですから、わかりやすいモノの方にお客さんが集中するようになり、そういう意味では作り手がこちらに住んでいないハリウッド映画は、お客様に共感を持っていただくレベルまでいくのに、非常に難しい時代になりました。

 昔ほどハリウッドがバラエティに富んだ作品を、正直言って供給できていないところは否めないと思うんです。だとすれば、やっぱり想像してわかりやすい映画にお客さんが向いているっていうのは、あるのかなと。邦画と洋画のシェアが逆転したのも、たぶんお客さんのそういう映画を買うにあたっての、一つの指標になるものが“わかりやすさ”なのでしょう。

 決定的に邦画と洋画が違うのは、作った人がこっちにいるかいないかの差というのが大きいと思うんですよね。洋画の宣伝プロモーションの場合は、ある程度メディアを使って認知を上げて、マスコミの方々に映画を評価して頂き、それが数多く出て成り立つ訳で、パッケージを伝えられるのが精一杯。加えて内容に踏み込めば、かつての洋画の憧れの対象だった一つのシンボルマークになるような俳優、監督、それからアメリカでのその映画がもたらした現象、もしくは奇想天外なストーリーでもいいんですけど、そういうパワーそのものが少なくなってきている。一方で昨今の邦画プロモーションの核となる部分を勉強してみると、洋画には出来ない事が多い。やっぱり作った人がこっちにいると、なぜ作ったか、なぜそのテーマを選んだか、そのテーマに最初に触れた時に、作った人はどう感じたからそのプロジェクトを進めることになったのか、まずそういう映画のバック・グラウンドのストーリーを伝えることができる。「おくりびと」(松竹配給)なんかは、いい例だと思います。映画って元々人間くさい商品なんですけど、その人間味くさい商品としての最後のアピールっていうのが、洋画の場合できないところがある。それが洋画のプロモーションにおいて、今後改善をしなければいけない大きなポイントだと思うんです。



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