トップインタビュー:鈴木英夫ウォルト・ディズニー・ジャパン(株) ウォルト ディズニー スタジオ モーションピクチャーズ ジャパン 日本代表
2009年05月08日
本誌 ラインナップ発表会でゾラディ社長が自らの言葉でプレゼンしていくというやり方は、我々からすれば非常に新鮮でした。自らの言葉で語ってくれることによって、3D作品を含めた、本当の意味での新しいディズニーが伝わってきたという印象を持ちました。
鈴木 ディズニーの哲学は非常にシンプルで「量より質」。言い換えれば価値の追及で、その「価値」というものは、価格を分母にして、品質を分子にして生まれるということです。その哲学のもとに、他のスタジオと一線を画すユニークな存在が我々です。ディズニーというブランド、これは一日にしてならなかったですし、その哲学を貫くことで全世界にそのブランドが浸透していきました。逆にディズニーというブランドが、ある一つの固定観念を持たれるのは、会社としては衰退していく方向なんですが、ディズニーというブランドだからこそ信頼を基に発展していけるところも多分にあると思うんです。言葉が足りないですが、それをうまく我々のベースにしながら、お客さんに対してディズニーの価値を広げていくのが、部門名変更の一番大きな理由でした。今後、よりディズニーというブランドにフォーカスしたラインアップや、会社としての3Dに代表されるような新しい技術の導入というのを推進していきます。

やっぱり映画って、3つの要素からは絶対に大きくブレちゃいけないと思うんですよ。それは、まず一つ、「憧れ」、それから「感動」、そして「驚き」。それが3Dの技術をもって、その3つのファクターをさらに後押しできるような、そういうものであれば、3Dという言葉だけ一人歩きせずにお客様はコンテンツそのものを受容して頂けると思うんです。今は3Dそのものの認識は二軍かもしれないし、他社を含めたラインナップもそう取られがちだと思います。でもこれから間違いなく一軍のスターティング・メンバーになっていくコンテンツに育っていくと思うんですよ。3Dで見るべきコンテンツというのが、大きくこれから市場を変えていくきっかけになるんじゃないかという風に思います。これは何もアニメに限らず、実写、ライヴ・アクションも含めてだという気がしますね。
期待が挑戦のエネルギーに本誌 アメリカ本社は、改めて日本を重要なマーケットだと位置づけているわけですよね。鈴木 一つのバーとして、アメリカの興収の約20%が大体日本のシェアという風に考えられているんです。アメリカを除くインターナショナルの配給収入のグロスの約15%が、日本のマーケットのシェア。それはおそらくスタジオさんによって違うと思いますが。近年、北米カナダのシェアが大体40%、それ以外のインターナショナルが60%です。昔はその逆でした。それから50%:50%ぐらいにシフトして来て、今は60%ぐらいがインターナショナルから上がって来ています。これもスタジオさんによってたぶん違うと思いますが、我々に関して言えば、そういう状況ですね。その中で、日本が果たしているアメリカの20%、インターナショナルでの15%の利益というのは、やはり非常に大きい。ですからマーケットで言うと、日本、UK(イギリス)、ドイツ、この3つが会社にとっては成否を左右するテリトリーになっています。
本誌 今回のショーケース実施後、興行会社からの反応は。鈴木 特に3D作品に関して言うと、今成長の過程にあって、8月までで約57スクリーン、それから「クリスマス・キャロル」が公開される11月までに大体110から120スクリーン、来年の4月ぐらいまでには大体180スクリーンぐらい導入される予定なんですが、興行者さんによっては、「3Dって一体なんなんだ?」という部分は多分にあったんですよ。「3Dだからお客さんが来るのか!?」という部分も。以前に、実際に3Dを経験された興行者さんもいらっしゃるし、あのプレゼンの場で初めて3Dをご覧になって経験された興行者さんもいらっしゃる。ただ、先ほど申しあげた通り、やはり3Dというだけではなかなか設備投資できない。どんなコンテンツかが全て。つまりどれだけお客さんが呼べるのかというのは、コンテンツ次第というところがあって、それをあのプレゼンで確認して頂けたようですね。ですから、今後3Dのプロジェクターを導入していくことに積極的に投資をすることを、興行者の皆さんお選びになったようですし、それは非常にプラスだったんじゃないかなという気がします。
それと、異口同音にご賛辞を頂いたのは、やはりバラエティに富んだ、非常に立ち位置のユニークな会社だというお褒めの言葉でした。それは我々のブランドの特徴であるアニメだけではなく、ライブ・アクション――それはジェリー・ブラッカイマーと、スピルバーグという2人のマネー・メイキング・プロデューサーが牽引者になって、ブロックバスター・フィルムをライブ・アクションとして製作にあたります。加えてアカデミー常連の非常にクオリティの高い作品を作るミラマックスという会社、それとディズニーのデジタル3Dという21世紀の技術に支えられた映像コンテンツのご案内が出来ました。
※全文は「文化通信ジャーナル09年4月号」に掲載