11月に公開される映画『馬々と人間たち』を試写会で観てきました。アイスランドのウマ映画という珍しいジャンルですが、とてもユニークな作品だったのでご紹介します。(ネタバレありなのでご注意を)
舞台はアイスランドの田舎町。はるか遠くまで見渡せる広大な自然をバックに、人間と馬々の、滑稽かつ驚きの生活を描き出します。馬好きの人に限らず、日本人なら誰が観てもカルチャーショックを受ける内容だと思いますよ。
もう、冒頭の強烈な映像から目が釘付け。乗馬をする方はご存じだと思いますが、馬は基本的に、常歩(なみあし)、速歩(はやあし)、駈歩(かけあし)の3つの歩様があります。常歩は歩き、速歩は早足、駈歩は小走りってな感じですが、この映画に出てくるアイスランドの純血馬は、そのどれにも当てはまらない走法を持っています。あえて言えば「超ハイスピード速歩」という感じ。普段見慣れているサラブレッドには無い動きです。この「超ハイスピード速歩」を冒頭からじっくり見せられて、早々にアイスランド馬の個性と愛らしさにやられてしまいます。
でも、「可愛い」だけで終わらないのが本作です。この町の人間と馬の関係が興味深い。どの家にも馬がいるのですが、ペットでもないし、家族というわけでもない。「運命共同体」のような不思議な関係で成り立っているのです。主人公が飼うメス馬が、主人公の婚約者が飼うオス馬に交尾されてしまうショッキングな場面(ポスターにも使われていますね)があります。そして、その光景は町の住民の目にも触れてしまった。名誉を傷つけられた主人公は、帰ってすぐにメス馬を撃ち殺してしまいます。単にペットのように飼っているだけなら、そこまでしませんよね。いかに馬が人間に根付いているかがわかります。
この映画はフィクションですが、監督が見聞きしたエピソードも盛り込んであり、実際にアイスランドの田舎で働いていたこともあるそうなので、実体験に基づくところが多いのだと思います。それを踏まえてみると、素直に文化の違いを楽しむことができます。
いくつかのエピソードが連なる形で構成されていますが、どの話にも個性的な人間と馬が登場して、それぞれユニークな展開が繰り広げられます。冒頭の超ハイスピード速歩のほかにも、馬のトレーナーを目指す女性が、逃げた馬たちを一網打尽にし、6~7頭を横一列にヒモで繋いで連れてくる場面はプチ『ベン・ハー』のようで面白いです。
そんな不思議な魅力の詰まった80数分のアイスランド映画は、昨年の東京国際映画祭で最優秀監督賞を受賞するなど、すでに色々な映画祭でお墨付き。馬好きの私が一人でイレ込んでいるわけではないで、気になった方はぜひご覧ください。
さて、金曜日なので毎週の競馬予想で締めます。今週はG1のような豪華メンバーが揃った札幌記念。本命はラブイズブーシェとします。人気が予想されるゴールドシップは凱旋門賞に向けたステップレース。他の有力馬は休み明けが多く、最も理想的なローテーションと感じるのがラブイズです。前走は後方からマクっていく強い競馬で、今モリモリ強くなっている感じがします。振り返れば昨年の有馬記念でも4着に善戦。地味なイメージですが、すでにG1でも戦える馬に成長しているかもしれません。