閲覧中のページ:トップ > コラム > 特別編集委員コラム >

【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.155】
2014年春興行、邦画実写作品を考える

特別編集委員コラム

最新記事

【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.155】
2014年春興行、邦画実写作品を考える

2014年04月17日

 前回、「さあ春興行」と言ってから、随分経ってしまった。失礼しました。もう早くも、GW興行の季節ですからね。ただ約束どおり、春興行の分析をしておく。といっても、「アナと雪の女王」の独壇場は、前回から全く変わっていない。というより、さらにその勢いを増した。

 この週末、4月19日か20日には、興収100億円を突破する。何と最終で140億円を超える見通しもあり、その後どこまで数字が伸びるか、現段階では推測できない状態になってきた。昨年の「風立ちぬ」(120億2千万円)が、完全に射程距離に入ったということだ。

 凄まじいばかりの「アナと雪~」のこの興収見込みは、邦画と洋画を合わせた歴代興収トップテンに食い込む可能性さえある。ただ、以下の春興行の作品別最終興収見込みの成績を見てもらえば、別の意味で大変なことになっているのがわかるだろう。

▽「アナと雪の女王」=140億円~
▽「映画ドラえもん 新・のび太の大魔境~ペコと5人の探検隊~」=36~38億円
▽「ホビット 竜に奪われた王国」=14~15億円
▽「LIFE!」=10億円
▽「平成ライダー対昭和ライダー 仮面ライダー大戦 feat.スーパー戦隊」=10億円
▽「白ゆき姫殺人事件」=10億円
▽「映画プリキュアオールスターズ~」=9億3千万円
▽「チーム・バチスタFINAL ケルベロスの肖像」=8~9億円
▽「神様のカルテ2」=8~9億円
(※数字は一部推定)

 大変なことの意味は、一目瞭然である。邦画、洋画の別なく、実写作品が厳しいことになっているのだ。とくに、ここには入っていない「銀の匙~」(7億5千万円~8億円)を加えた東宝配給の3作品の成績を見て、頭をひねる人が多いのではないか。東宝よ、どうなってしまったのかと。

 ちなみに、「チーム・バチスタの栄光」(08年)は15億6千万円。「神様のカルテ」(11年)は18億9千万円を記録している。いわゆるこの2本の続編、あるいは続編的な作品であるさきの2本が、前作のヒットから大きく踏み外したのである。

 続編(あるいは続編的な作品)を製作する意味は、いったい何か。すでに実績のある作品の成果を見越した安全パイであろうが、それがそうではなくなった。実績は実績として、果たして続編を製作する意味があるのかどうか、シビアな戦略が必要になったということだ。

 このシビアな戦略の必要性はある意味、結果論であるとも言える。「銀の匙~」を除いた2作品の安全パイ路線は機能すると、私も見ていたからだ。だが、今回の成績は、今後に大いなる反省点を生んだのではないか。続編の意味を、徹底的に吟味する。さらに、シリーズの意味も問いかける。そうしていかいないと、事態はさらに悪化する。

 問いかけの先には、人気テレビドラマや人気コミックの映画化の意味さえ、入ってくるだろう。観客の興味の潮目が、そろそろ変わってきたのではないか。これまでの “ヒットの方程式” が、崩れ始めたのではないか。いろいろなことが考えられる今年の春興行だったと思う。

(大高宏雄)

関連記事

過去のタイトル一覧

2017年

10月

2016年

1月│ 7月

2015年

1月│ 3月│ 4月│ 6月│ 8月

2014年

1月│ 2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月

2013年

1月│ 2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 6月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月

2012年

1月│ 2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 6月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月

2011年

1月│ 2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 6月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月

2010年

10月│ 11月│ 12月