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OVAアニメの「劇場上映&BD先行販売」確立の経緯とは?『機動戦士ガンダムUC』バンダイビジュアル・

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OVAアニメの「劇場上映&BD先行販売」確立の経緯とは?『機動戦士ガンダムUC』バンダイビジュアル・チーフプロデューサーに聞く

2013年06月04日

 

ガンダムメイン.jpg 映画業界で着実にビジネスの幅を広げているODS(非映画コンテンツ)。スポーツやコンサートの生中継、「MET」や「シネマ歌舞伎」などの収録ものなど、ODSの形は様々だが、その中の1つとして既に浸透しているのが「OVAアニメの劇場上映&ブルーレイ発売」だ。OVAアニメを、発売に先駆けて劇場で2週間限定上映。同時に、その劇場でブルーレイも先行販売するものだ。

 このビジネススキームを確立したパイオニア的な作品が『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』。10年2月より上映を開始し、限られた館数・上映期間にも関わらず、最新作の第六章(13年3月上映)は興収1億円を突破。毎回驚異的な館アベを記録し、ブルーレイの劇場販売も即完売。物販も劇場の売上に大きく貢献している。

 その後スタートした『宇宙戦艦ヤマト2199』や、6月に上映開始する『攻殻機動隊ARISE』でもこのビジネススキームは踏襲され、OVAアニメをリリースする上で、すっかりメジャーな手法となった。

 「劇場でのパッケージ販売はあり得ない」という業界の通説を覆し、上映と同時にパッケージを販売するという、異例のビジネススキームを成功・確立させるにはどのような経緯があったのか。バンダイビジュアルで『機動戦士ガンダムUC』を担当する桑園裕子チーフプロデューサーに聞いた――。
 


一次利用から収益を

ガンダム1.jpg――ビジネススキームについて、これまでどんな経緯でやられてきましたか。

桑園 08年の後半に、サンライズさんから『ガンダムUC』をアニメ化したいというお話を頂き、その際に「(映像の)一次利用からビジネスになる方法はないだろうか」とご提案頂きました。
 当時はTVでオンエア→パッケージ化のビジネスも厳しい情勢だったのですが、『ガンダムUC』は劇場作品並の製作費が投入されているので、パッケージ以外での収入も見出したい考えでした。ちょうどその頃、アニプレックスさんの『空の境界』が、OVAアニメをまず劇場で上映する新たなビジネスを開拓し、成功を収めていたのもキッカケの1つだと思います。
 サンライズ、バンダイビジュアルとしては、通常の劇場公開作品でないことのメリットを活かすために、劇場にお越しいただいたユーザーに、その場でパッケージを購入できる販売システムを考えました。過去に例のない展開ですが、「ガンダム」であればそれが可能ではないかと考え、チャレンジしようと決意しました。制作スタッフも、劇場で上映し、料金を頂けるだけのクオリティの作品を作っているという自信もあり、今のビジネススキームが始まったと記憶しています。
 更に、サンライズさんの「ユーザー目線に立った革新的な同時戦略を行おう」という号令のもと、同時配信や、全世界で展開できるよう5か国(6言語)の字幕や英語吹替音声を収録するなど、話がどんどん膨らんでいきましたね。

――もともと06年に小説が連載開始しましたが、当時からそういった構想があったのですか。

桑園 その段階で、サンライズさんからアニメ化する意向は伺っていました。ストーリーの福井晴敏さんは、当初はまずTVアニメで放送したいという希望をお持ちだったと思います。一方、サンライズさんは、4本のOVAでアニメ化する考えだったようです。ただ、当時はまだ構想段階に過ぎず、弊社も『機動戦士ガンダム00』が走り始めたばかりだったので、まずは『00』に注力していました。
 弊社が正式に『UC』の企画に関わったのは、『00』が終わって、08年の後半ぐらいです。その頃、池袋でガンダムエキスポを開催し、そこで『UC』アニメ化の公式発表も行ったのですが、劇場上映の企画もその頃から少しずつ持ち上がってきたように思います。制作サイドではもっと前から構想はあったのかもしれませんが。そして、09年の夏に、お台場で開催したガンダム30周年イベントでこの企画を公表しました。

――ファンの反応はどうでしたか。

桑園 最初は、劇場の2週間限定上映のことを「プレミアムレビュー」と謳っていました。ただ、なじみのない企画だったので、「1日限定の特別上映」と捉えられた方も多かったようです。この反省を踏まえて、第二章の劇場上映の際から「2週間限定イベント上映」という名称に変更しました。


業界のルールの壁

ガンダム2.jpg――配給を松竹が担当しました。

桑園 ガンダムの劇場作品の配給はこれまでも松竹さんでしたし、ちょうど『00』の劇場版も松竹さんにお願いしていたので、『UC』についてもお願いしました。

――当初から、劇場上映と同時にブルーレイを発売できるメドがあったのですか。

桑園 最初はなかったです。映画は、劇場公開後に半年ほど空けてからパッケージを発売するのが普通です。もちろん劇場さんは発売までの期間を気にされます。その点を踏まえて、「映画館に行って観たお客様しかブルーレイを買えない」という形にしました、一般発売は、上映終了2週間後に設定しています。

――この企画を受けて、配給サイドはどのような反応をしていましたか。

桑園 私自身は当時その会議には出席していなかったので詳細は存じませんが、その後も色々な話を聞く中で、やはり劇場さんに納得頂くのは大変そうだなという印象はありました。劇場上映と同時にブルーレイ発売・配信という、映画界のルールから逸脱している行為なので、当初は全国5大都市・8館と劇場数を絞ったスタートになりました。
 第一章の結果が良かったので、館数を増やそうという話になった時も劇場サイドは慎重な姿勢でしたね。このビジネススキームが浸透してきた今でこそそんなこともないですが、開始してしばらくは本当に大変だったと思います。

――今は何館で上映しているのですか?

桑園 直近(3月公開)の第六章は16館でした。その前の第五章は12館でしたね。


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