富士フイルムが今年春でアーカイブ用を除く映画用フィルムの製造・販売から撤退するなど、フィルムからデジタルへの流れは加速している。
そんな中、いまフィルムを使った映画撮影が活発に行われている。
昨年文化勲章を受章した山田洋次監督が『東京家族』に続く最新作『小さいおうち』(松たか子主演/松竹配給/14年1月公開)の撮影に入っているのをはじめ、葉室麟の直木賞受賞作を映画化する時代劇『蜩ノ記』(監督小泉堯史/役所広司主演/東宝配給/14年公開)、キャメラマンの木村大作監督が『劒岳 点の記』に続いてメガホンを取る『春を背負って』(松山ケンイチ主演/東宝配給/14年公開)、そして『それでもボクはやってない』(’07)、『終の信託』(’12)とシリアスな作品が続いた周防正行監督が、『Shall we ダンス?』(’96)以来となる大エンターテインメント作品『舞伎はレディ(仮)』(14年公開予定)の撮影に5月から着手する。
こういったフィルム撮影の流れはアメリカも同様で、今年のアカデミー賞では、作品賞を受賞した『アルゴ』を筆頭に、『リンカーン』『世界にひとつのプレイブック』『ジャンゴ 繋がれざる者』『ハッシュパピー バスタブ島の少女』『レ・ミゼラブル』といった作品が映画用フィルムで撮影された作品。なお、作品賞にノミネートされた9作品のうち、実に6作品がフィルムで撮影された作品だった。
とはいえ、フィルム撮影にこだわるのは、山田洋次監督ら巨匠ならではのことで、一般の監督では製作コストを考えたらとても無理なことなのだと言う。
イマジカをはじめ、東京現像所、東映ラボ・テックの現像3社はデジタルにシステムを変更し、上映がほぼ100%デジタルになっている現在、1、2本のフィルム現像は経費がかかるわけである。
これらコスト高を踏まえても、あえてフィルム撮影をする監督達が続くのか、注目される。
(取締役会長:指田 洋)