東映が、好調である。かつてないような快進撃と言っても、言い過ぎではないくらいアニメの大ヒットが続いている。
東映の関係会社ティ・ジョイ配給(カラーと共同)の「ヱヴァンゲリヲン 新劇場版:Q」(昨年11月公開、興収53億円)から、13年の正月作品「ONE PIECE FILM Z」(68億5千万円)。この3月30日から公開された「ドラゴンボール Z 神と神」(FOXと共同配給)が、30億円台を狙えるスタートを切ったのである。この3本だけで、150億円を超えてくる計算だ。
ちなみに、「ドラゴンボール~」は、3月30、31日の2日間で、全国動員56万1098人・興収6億8392万4950円を記録した(312スクリーン)。当初、初日の午前中に動員がかなり集中した展開だったので、2日目の31日には数字が落ちるのではとの推測もあったが、勢いは衰えず、全体では2日目は初日より10%ほど興収が上がる結果が出た。本物である。
これは、これまでのドラゴンボールファンに加えて、小学生の子どもなど新しいファンも集客できたことによる。上映時間は85分であり、上映回数を多く編成できる点も追い風になった。定番だが、先着150万人に対して入場者プレゼントを行ったことも、ファンにはたまらなかったろう。
さらに、自社ブランド作品の「映画プリキュア オールスターズ~」も、最終10億円が超える見通しで、これを加えれば、先の3作品計150億円超のさらに上を行く興収を上げることになる。大変な数字である。
同じ春興行の「相棒シリーズ X DAY」も、健闘だ。3月31日時点で6億円を超え、最終では12億円前後まで数字を伸ばしそうだ。ついているときは、こういうものである。ただ、これで東映の新時代が到来したという言い方はまだ早いだろう。この “流れ” を今後、どのように自社の配給作品のなかで生かしていくか。これからが、本当の正念場と言えるのではないか。
そこで、いつもの言い方になるが、実写作品のありようが問われる。アニメの “連打” を、強まる営業力とともに、製作面でも生かす手段の模索である。その際、社内の実写 “部隊” が、外部作品の編成や自社作品の企画、製作において、どこまでヒットへの意識を高くすることができるかが鍵となろう。
“流れ” を作るとは、従来の “定番的な” 仕事を断ち切ることである。人脈も、頭脳の中身も、変える必要がある。 “アニメの東映” で、いいのか。この意識を強く持ち、自身の持ち場を揺り動かす。アニメの “連打” とは、そうならざるをえない方向性を東映に指し示していると、私は思うのである。
(大高宏雄)