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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.119】
『プラチナデータ』、さらなる可能性へ

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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.119】
『プラチナデータ』、さらなる可能性へ

2013年03月21日
 二宮和也主演の『プラチナデータ』は、いろいろなことを考えさせられるスタートであった。本作は、3月16日から全国310スクリーンで公開され、16、17日の2日間で全国動員30万5743人・興収4億0049万6000円を記録した。ヒットである。ただ私は、前売り券の売れ具合から、もっと数字が上がってもおかしくない気がしたのである。私の期待は、もっと高かった。

 本作は、アイドル映画という“枠組み”をもつ。そのなかで、映画の企画は斬新だったと思う。嵐の二宮和也を主役に起用したその枠組みのなかで、描かれた題材が新鮮であったからだ。当代の人気者の主演作というと、かつてはお手頃な軽いノリの娯楽作品が主流だった。もちろん、冒険的な作品もあったが、今回はとくにその野心性が際立っていたと思う。

 それは、大いに評価したい。ただ、ヒットの客層の中身を見ると、女性層が非常に多いのである。ということは、男性層が少ない。当然と見る向きもあろうが、今回はその“当然”の枠を超えてもらいたかった。前売り券の好調さは、二宮の人気のゆえであるが、その人気と中身の力がどこまで波及するか。ここが興行上の最重要ポイントの作品であったはずである。

 昨日の水曜日のレディースデー、『プラチナデータ』上映の各劇場は、女性客でにぎわった。土日以上の成績だったシネコンもあったそうだ。二宮のもつ魔力のなせる業であろうか。確かに、彼以外では、なかなか実現できないような興行の威力だと言える。ただ再度言うが、その広がり方が、今のスタート時点では、彼のファン中心の興行になっている。これが、何とも惜しい気がするのだ。

 ここで先の企画の野心性が、ポイントとなる。野心性が、彼のファン以外の人々に関心を広げる方向にいくかどうかは、また違う要素がからまってくるからである。人間のDNAデータをめぐるサスペンスと、ここは簡単に言ってしまうが、その中身がどこまで浸透していたか。さらに、浸透していたとして、それはどこまで関心の広がりに貢献していったのか。そこが、少し曖昧だったのだと思う。

 二宮和也は、得難い俳優である。人気はすごい。企画も面白い。だから、もっとヒットの“格”が、上がってしかるべきなのだと思う。今回の興行は成功しているが、その先の大きな可能性に向けて、より彼の個性が生かせ、作品の中身と彼の魅力双方で広い層の人たちを、もっともっと吸引できるような作品の出現を、私は希望したい、これは、ないものねだりではない。

(大高宏雄)

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