いま数多くの現役映画監督が4年制大学映像学部の教鞭を執っている。
かつて、大学の映像学部といったカリキュラムは日本大学芸術学部(映画学科)のみだったが、ここ数年は日本映画学校が4年制の日本映画大学に移行したり、東京芸術大学や大阪芸術大学といった芸術大学が映画学科を新設したりと、少子化に対応して著名な現役映画監督を招聘し、学生の獲得に躍起となっている。
各映画監督は、後進の育成ということが主眼であろうが、それぞれ新作が決定したら「映画監督」としての仕事が優先できる契約になっているようである。
各大学と映画監督による教授陣の顔ぶれを列記してみたい。
いま最も映画学科に力を入れているのは京都造形大学(芸術学部映画学科)だ。高橋伴明、福岡芳穂、林海象の3氏を教授に、山本起也氏を准教授に、東陽一氏を客員教授に迎えたのをはじめ、脚本家(加藤正人氏)や映画プロデューサー(小川勝広氏)、宣伝配給会社代表(有吉司氏)らを非常勤講師に招き、学生による映画製作コースをスタートした。作品は同大学がある京都市左京区北白川にちなみ “白川派” と称し、海外映画祭への出品や国内での劇場公開なども展開している。
『ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~』の根岸吉太郎監督は山形の東北芸術工科大学の映像学科長から最近、同大学の学長に就任している。
東宝配給『リアル~完全なる首長竜の日~』(6月公開)を完成させたばかりの黒沢清監督は東京芸術大学大学院研究科教授に、大森一樹監督が中島貞夫氏の後任として数年前から大阪芸術大学映像学科長に就いた。同大学では原一男、金秀吉の2氏が教授に、三原三尋氏が客員准教授を手掛けている。
老舗の日本大学芸術学部映画学科は、朝原雄三、井坂聡、井上眞介、仲倉重郎、南部英夫の各監督が講師に就いている。昨年4年制の大学となった日本映画大学には、中原俊、天願大介、細野辰興、緒方明といった監督が教授陣に迎えられた。
東京新宿にもキャンパスを持つ宝塚大学メディア・コンテンツ学部では、成田裕介監督が教授に、崔洋一監督が特任教授を務めている。
松竹と業務提携を結んでいる立命館大学映像学部は山田洋次監督や阿部勉監督が講師をしたことがあるが、中島貞夫氏を客員教授に迎えた。
ほかに、青山真治監督が多摩美術大学映像演劇科教授、榎戸耕史監督が桜美林大学総合文化学科映画コース専任教授、山川直人監督が東京工芸大学芸術学部映像学科教授、新城毅彦監督がデジタルハリウッド大学デジタルコンテンツ学科教授、諏訪敦彦監督が東京造形大学教授、手塚真監督が東京工科大学教授をそれぞれ務めている。なお、米国での滞在が長かった原田眞人監督が日本大学国際関係学部教師に就いている。
たしかに後進の育成は大事なことだが、やはり「映画監督」には映画を撮ってほしいものである。
(取締役会長:指田 洋)