原正人氏、東映配給『草原の椅子』
プロデューサー人生最後の作品として映画化
2013年02月18日
『戦場のメリークリスマス』『乱』等で知られる原正人 原オフィス代表((株)エース・プロダクション会長兼アスミック・エース(株)特別顧問)が、プロデューサー人生最後の作品として製作した東映配給『草原の椅子』(監督成島出/佐藤浩市、西村雅彦、吉瀬美智子出演)が、2月23日の公開を控え、映画を見た女性達の間で評判を呼んでいる。
作品は、地球最後の桃源郷と呼ばれるパキスタン・フンザを背景に人間の喪失と再生を描いた宮本輝の同名原作(幻冬舎・新潮社文庫)の映画化だ。阪神大震災で自宅が倒壊する被害に遭った宮本氏が、自信の体験を踏まえて執筆した単行本前後1000ページに及ぶ大作。
原氏は、2000年に病に倒れ入院中に数々の小説を読んでいるが、その中の一冊として『草原の椅子』が非常に感動したという。
「主人公、遠間憲太郎(映画では佐藤浩市)が50歳で富樫重蔵(同・西村雅彦)と親友になり、新しい恋を見つけ、しかも地球最後の桃源郷・フンザを目指すという。これから先、日本に未来があるのだろうか、その中で人々は幸せを探しながらどう生きるのだろうかという作品の中に込められている主題に打たれました。私はシルクロードがもともと好きで、ロマンティックじゃないか!」と映画化を企画。難しい題材であり、実現までは数年、紆余曲折を経て『武士の家計簿』(’10)の後に動き出した。映画化が決まったのは2011年。キャストの佐藤浩市、西村雅彦、そして成島出監督も当時50歳と、原作の設定年代が揃い、時代背景も阪神大震災後から3・11(2011年3月11日の東日本大震災)後に置き換え、主要舞台も大阪から東京に、そして少年・圭輔を「原作よりずっと軸にしたものに肉付け」(原氏)された。
原氏は特に、主人公の遠間が捨てられた少年・圭輔を養子にし、「俺はこの子が大きくなる時には60歳を過ぎちゃう。この子に未来はあるのかなぁ」という原作をより深めたラストシーンが好きだという。
「心にはいつも草原が広がっていて、そこではいつも自分の椅子に座って、人生のあらゆる悩みや災いと戦いながら生きていくんだという」非常に象徴的なシーンだ。
原作者の宮本氏は、昨年12月の初号試写を含め3回見ており、音楽評論家の安倍寧氏は「原プロデューサーが作った中で一番いい」と絶賛。特に女性たちの間で評判となっている。この作品をプロデューサー人生最後の映画として取り組んだ原氏は、「未来は信じられる。信じて生きようというメッセージを込めて、私の息子と同じ年の成島監督にバトンタッチできたことは、私にとって完結。これからはお手伝い、アドバイスをしていきたい。」と語っている。
(取締役会長:指田 洋)