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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.105】
「ヱヴァンゲリヲン~」宇宙、果てしない感じ

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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.105】
「ヱヴァンゲリヲン~」宇宙、果てしない感じ

2012年11月20日

 「実写作品なら、最終興収で70億円、80億円が狙えるスタートだよ」。ある映画会社の幹部が、そうつぶやいた。「ヱヴァンゲリヲン 新劇場版:Q」である。それほど、空前の大ヒットとなった。

 映画興行の枠を超え、もはや映画界の“事件”とも言っていいかもしれない。いや、映画界さえはみ出している。その爆発力が、昨今の映画興行の枠を軽々と超えたからだ。熱を帯びた観客の精神と行動の形態は、“一現象”というより、壮大な“ある宇宙”を作り上げていると言ったほうがいいか。

 まず、データである。これを押さえないと、宇宙の意味が見えることはない。11月17、18日の2日間で、全国動員77万1764人・興収11億3100万4600円。スクリーン数は224だった。これが、どのくらいすごいものなのか。

 今年の作品では、トップのスタートである。これまでは、「BRAVE HEARTS 海猿」の3日間成績(7月13~15日、11億1917万1350円)が、最高だった。「~海猿」は、最終的に70億円を超えて、今年の作品別興収のトップが予想される作品であり、しかもその3日間成績を2日間で破ったところに、「ヱヴァンゲリヲン~」の規格はずれの爆発力が垣間見える。

 さらに、前作「ヱヴァンゲリヲン 新劇場版:破」(最終40億円、120スクリーン)の土日2日間対比で、220%となった。前々作「ヱヴァンゲリヲン 新劇場版:序」(最終20億円、84スクリーン)では、土日対比403%。84スクリーン、120スクリーン、224スクリーンと、スクリーン数が増えるごとに、興収が倍々になっていく推移が、ここからはっきりと見てとれる。

 歴代のアニメとの対比では、「ワンピースフィルム~」(最終48億円、188スクリーン)の109%、「崖の上のポニョ」(最終155億円、481スクリーン)の110・4%。さすがに、歴代の邦画興収2位の「ハウルの動く城」(最終196億円)のスタート土日成績を超えることはなかったが、 スタジオジブリの「崖の上のポニョ」を上回ったことは、特筆していい。

 「ヱヴァ」宇宙が、形成されつつある。「序破急(Q)」。なぜ、今回「Q」なのか。「クエスチョン」なのかどうか。中身を出さない徹底した宣伝戦略。いや、それは宣伝戦略でさえない。戦略なき戦略。人々の期待値は、肥大化しっぱなしだ。

 批評が出ない。批評の不在。観客の反応が、また賛否両論だと。いや、そもそも賛否などあるのか。「ヱヴァ」である。「ヱヴァQ」。宇宙の意味は様々だが、この文章を書いている人間も、そこに加担している。宇宙は果てしない。どこまでも続くような果てしない感じが、「ヱヴァ」には、べったりと張りついている。

(大高宏雄)

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