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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.100】
コラム100回、興行激変の形をまざまざと

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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.100】
コラム100回、興行激変の形をまざまざと

2012年10月16日
 この映画興行コラムも、今回で100回目である。スタートは、2010年の10月だった。タイトルの「興行戦線異状なし」は、私が1995年から1999年まで、キネマ旬報で連載していた「映画戦線異状なし」から取ったのだが、もはやそんなことを知る人も少なくなっただろう。

 ただ、この間、映画状況、映画興行とも、激変のときを迎えた。私の立場としては、その生々しい変化を一つ一つ、文面に叩きつけていくこと以外なかったわけだが、隔靴掻痒、なかなか伝わりにくい面もあったようにも感じられ、わが力不足を、毎回のように痛感したものである。

 さて、100回目にふさわしく、興行におけるとめどない変化を、改めて実感する出来事がつい最近あった。この10月12日から15日まで、「お蔵出し映画祭2012」(広島県尾道市、福山市で開催)という映画祭に出かけたときのことだ。私は昨年同様、審査員を依頼されたのだが、映画祭の合間をぬって、福山市にあるシネコン、福山エーガル8シネマズを訪れた。

 JR帰山駅から、車で30分ほど。車が、かろうじてすれ違えるような狭い道路を行くと、フジグランという商業施設が見えてくる。とりたてて、大型という感じはしないが、その3階に同シネコンは位置していた。ここで、「ツナグ」を見ることにしたわけだが、映画時間の表示を見ているうちに、あることに気がついた。2週目にあたる「ツナグ」や「アウトレイジ ビヨンド」以上に、何と「最強のふたり」の上映回数が5回と、上映作品中一番多かったのである。

 「最強のふたり」も上映が始まったばかりだったが、配給のギャガからは、尻上りの動員になるので、回数を多くしたほうがいいとのアドバイスが、劇場側にあったという。その上映回数が、生きた。つまり、「最強のふたり」は、単館系作品によくあるような都会型をあっさりと超え、地方のシネコンにおいても、十分な稼働を見せる作品だった。

 その「最強のふたり」の全国興収が、10月14日で10億円を超えた。正確には、14日までで、82万3361人・10億1044万3200円を記録したもので、この勢いがまだまだ続けば、「スラムドッグ$ミリオネア」(12億円)の突破は確実で、「英国王のスピーチ」(19億円)に、どこまで近づけるかという展開にさえなっている。

 ちなみに、この10月13、14日の週末興行ランキング(興行通信)では、「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[後編]永遠の物語」が、動員で2位、興収で1位という快挙を果たし、しかもその劇場数たるや、43スクリーンという少なさであった。限定公開、限定館数であり、ちょっと特別上映的なニュアンスの興行ではあるが、これは、今の興行の激変をなす象徴的なものの一つと言っていい。

 コラム100回目に、「最強のふたり」と「劇場版 魔法少女~」を取り上げる。これまでとは、全く様相が違う映画興行のありようが、そこからは見えてこよう。ただ、見えてくるものの代わりに、見えなくなってきたものも、決して忘れてはならない。というより、映画興行にとっては、そちらのほうこそが、非常に大切な要素だと思うのである。

(大高宏雄)

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