ゴー・シネマ「手のひらの幸せ」、昭和の感動物語に客席が共感
2010年01月23日
(左から布施、加藤監督、小川、浅利、河合、西須、村田、生稲、永島)
ゴー・シネマ配給「手のひらの幸せ」が23日、有楽町スバル座で行われ、原作者の布施明、加藤雄大監督、出演の浅利陽介、河合龍之介、村田雄浩、生稲晃子、永島敏行、小川光樹(子役)、西須隼太(同)が登壇した。
布施明がコンサートで朗読し、会場を涙で包んだ童話「この手のひらほどの倖せ」を映画化した本作。昭和30年代、40年代を舞台に、身寄りを亡くした兄弟が出会う小さな幸せが描かれる。
最初に、布施が「歌手40周年の全国ツアーで北海道から九州まで回った時、このツアーはきついだろうから、何とか楽をする方法はないだろうかと考えました。そこで、間に朗読を入れればいいと思って始めたのですが…、逆につらかった。歌の方が楽だった」と原作誕生秘話を披露した上で、「この物語には、登場人物の名前の付け方も含めて、僕の思いの全てを込めた」と力を込めた。
弟の龍二役を演じ映画初主演を果たした浅利は「昭和30~40年代は、僕の全く知らない世界。父母に話を聞いたり、当時の事件を調べたりして、頭の中でイメージを膨らませました。(かなり練習したという)フルートのシーン、すごくなかったですか?」と客席に投げかけ、拍手を浴びた。
一方、兄の健一を演じた河合は「恵まれた現場で、僕には特別にすることはないと思い、とにかくシンプルに演じました。今の時代は少ないが、この時代の男には美学があった。そこに魅力を感じ、その部分を出せるように頑張りました」と述べた。
この日、一番大きな拍手は子役2人に対して。龍二の幼少時代を演じた西須(8歳)は「新潟ロケは米が美味しくて、星がいっぱい見られて良かったです。寒い日には、お兄ちゃん(小川)が着る物を貸してくれました。監督はお芝居を優しく教えてくれて、最後まで頑張れました」、小川(11歳)は「橋の上でおにぎりを食べて、泣くシーンが難しかった。感動できる映画なので、また見にきてください」と、元気いっぱいに挨拶した。
初メガホンを取った加藤監督は「感無量です。撮影監督を長くやってきて、こうして布施さんの素晴らしい作品で初監督ができて、大変光栄です。監督として自分を指名してくれた佐藤(ヒデアキ)プロデューサーにも感謝します」と関係者に深謝。そして、「今の日本。疲弊し苦しい時、“小さな幸せでいいんだ”と思えるきっかけになれば嬉しい。(客席を見渡し)皆さん、良い顔をしているので安心しました。現場に見学に来た方々も、撮影を見ながら涙を流していました。実に嬉しいことでした」と締め括った。
中高年層が大半を占めた客席は、「登場人物が全部いい人」(布施)で実に温かみのある映画と、自身の思い出をダブらせ、降壇する原作者、監督、出演者に温かな拍手を送っていた。