BS-TBS「吉田類の酒場放浪記」(月21時)が9月17日(祝・月)で放送500回を迎える。2003年からスタートし、東京の下町を中心にぶらり呑み歩いておよそ10年。これまで1都2府1道21県を放浪した。BS放送と言えば…この番組が代表格の1つに名があがるほど人気番組に成長。地上波の月9が若者向けなら、これは大人が気軽に見る “BSの月9” だろう。
ぶらっと立ち寄った酒場で、吉田類の呑みっぷりと下町の人情に、懐かしさと忘れかけていた心のふるさとを垣間見て、庶民派から企業のおエライさんまでファンの裾野が拡がっている。番組ロケ中に小学生から「あっ、吉田類だ!」と声をかけられ、本人含めスタッフ一同腰を抜かしたというエピソードもある。
DVDも6巻が発売され、番組本もTBSサービスより今夏、6冊目となる「吉田類の酒場放浪記 6杯目」が発売されて人気だ。
そんな人気に乗って、BS-TBSは「おんな酒場放浪記」(土23時30分)を今年4月から誕生させた。テイストは同じ。モデルの倉本康子、写真家の古賀絵里子、料理家の栗原友の女性3人がそれぞれ登場して呑み歩く。初めはぎこちなさがあったものの、サバサバしたキャラクターの倉本はじめ、皆お店やお客に溶け込んで、スタートして半年、すっかり定着して好評だ。
そんなスピンオフ企画まで生んだ吉田類の人気もうなぎ昇り。HBC北海道放送のラジオ「吉田類のゆる~り・ほろ酔いトーク」(金17時10分)が始まって、今年4月からはFM高知の「吉田類の類語録」(月13時30分)、さらに今年7月からRKB毎日放送/鹿児島MBC南日本放送のラジオ「吉田類のくろいさでつながろう」(RKB月20時05分/MBC月19時45分)がスタートするなど大ブレイク。いずれも吉田類の冠付き。テレビにゲスト出演のほか、プロ野球「横浜×巨人」戦の始球式もやる活躍ぶり。吉田類と一緒に呑みまくる、お台場大宴会「吉田類のお台場昼呑み」というイベントまである。チケットは完売するほど大人気で、この8月中旬も追加公演ならぬ、追加大宴会として行われ、これまで実に8回開催されているという。大勢の酒呑みたちが吉田類と一緒にただ昼間から酒を呑む企画。吉田類の人気にほかならない。
ところで、吉田類とは何者? まだご存知でない方のために紹介すると、高知県生まれの酒場詩人。イラストレーターで俳人の顔を持つ。仏教美術に傾倒し、シュール・アートの画家として活躍、パリを起点に放浪を繰り返すとプロフィールにある。なるほど、メガネにハンティング帽の風貌はそういう所から来ているのかも。そして、後にイラストレーターに転身し、90年代から酒場や旅をテーマに執筆を始める。そうしてBS-TBSの番組に抜擢された。番組スタート当時は、開局から数年で、業績的にも苦戦していたBS放送にあって、低予算の中で生まれた企画。それが今では、BS-TBSの看板番組の一つに育った。牛久保剣プロデューサーも「酒を飲んでいるだけでこんな人気番組に育てていただけるとは、誰が予想したでしょうか」と話す。
番組は60分のうち4話で成り立ち、1話目が新作、あとの3話は過去の再放送という構成。記念すべき500回目となる9月17日(祝・月)は、沼袋「もつやきホルモン」を紹介する。500回といっても普段と変わらぬ構成で、力まず放送するところがこの番組ならでは。とくに大きく構えず、じっくり放送しているのが好感を持たれている秘訣でもあるようだ。とはいえ、後日、何か記念的なことも検討されているよう。
番組は河本邦弘のナレーションで始まる。吉田類は、きょうも「酒場という聖地へ 酒を求め、肴を求めさまよう…」。
(戎 正治)