「踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望」が、大ヒットのスタートを切った。たいしたものだと言えると同時に、予想どおりで、驚きはないとも言える。それだけ、大ヒットが約束された作品であり、大ヒットして当然との見方があった。同シリーズの凄さが、そこにある。
▽9月7日=動員19万4292人・興収2億4272万7200円▽8日=30万5312人・4億0053万6150円▽9日=29万8778人・4億0373万4200円(452スクリーン)。文句なしである。前2作と違って、夏興行作品ではないので、平日の数字はそれほど伸びないかもしれないが、それでも低く見積もっても、最終で50億円以上は確実であろう。
1998年の10月に公開された第1作「踊る大捜査線 THE MOVIE」から15年。この最終作は第4作目にあたるが、第1作目(101億円)、第2作目(2003年7月、173億5千万円)、第3作目(2010年7月、73億1千万円)という数字の推移を見れば、日本の興行史において、とてつもないシリーズものであったことは疑いえない。
テレビ局発の人気テレビドラマの映画化という、2000年以降に日本の映画興行を席巻していく一つの製作、公開の形が、ここに形成されたと言えよう。ただ、2作目以降、よりイベント化していった公開手法や、電波の独占化が一段と進んだ宣伝展開など、テレビ局主導の映画作品における問題点も多々あぶり出されたのである。
テレビ局主導のもと、邦画の興行が上向きになってきたこの10年にわたる一つの時代が終わったと言えるだろう。その主導権を握ってきたのはフジテレビだが、その節目の年を象徴するかのように、同社の製作作品が、邦画と洋画を合わせた今年の作品別興収で、上位3本までを独占しそうな気配が、今のところ濃厚である。
今年の夏興行のトップを走った「BRAVE HEARTS 海猿」が、最終で72~73億円前後まで数字を伸ばすのをはじめ、すでに「テルマエ・ロマエ」が59億円を記録。この一画に「踊る大捜査線~」が入ってくる可能性が高く、そうなれば、上位3本の独占となる。
さて、問題は今後である。フジテレビの大看板がなくなり、同社の映画製作はこれからどこへ行こうとしているのか。いろいろな戦略を練っているだろうが、私はまずもって、いかなる企画であろうとも、作品の中身の充実感こそを第一義的に考えてもらいたいと思う。この当たり前のことが、実はなかなか難しいのだ。ひっきょう、最終作のタイトルにある「新たなる希望」とは、それ以外にないのである。
(大高宏雄)