ソーシャル視聴拡大はリアルタイム視聴拡大となるか
2012年08月30日
テレビ番組を見ながらリアルタイムにつぶやく、いわゆる“ソーシャル視聴”が拡大している。8月29日発表したNTTアドの「テレビとソーシャルメディア利用に関する調査」結果によると、テレビ番組をネタに、リアルタイムでソーシャルメディアに書き込みをしている人は調査対象者のうち4割以上もいることがわかった。とくに20代では6割を超えるという。10代と30代もそれぞれ5割を超え、若者層を中心に同時利用者が多い。調査は7月27日~29日首都圏在住の15~59歳男女500名を対象にインターネットで実施した。NTTアドでは「ソーシャル視聴に流行の兆し」としており、ソーシャル視聴は拡大傾向で、ますますテレビの見方が変わっていくようだ。
同時利用者のうち、ソーシャルメディアでよくネタにするテレビ番組は「ニュース、報道番組」37.5%、「スポーツ」32.4%が上位を占める。続いて「お笑い・トーク」24.5%、「ドラマ」22.7%、「音楽番組」21.3%、「アニメ・マンガ」20.4%、「映画」18.5%、「天気予報・交通情報」15.3%、「情報番組」13.0%、「ドキュメンタリー」10.6%、「クイズ番組」10.2%。
従来の感覚ならば、「ドラマ」や「映画」はじっくり見たいと思われそうだが、見ながら書き込みする人は2割前後もある。やはり若い人に多く、こうした傾向は今後増えていくのだろう。
ただ、「同時利用者」の利用時間は、テレビだけを見る人やソーシャルメディアだけを利用する人に比べ、接触時間が長いことがわかった。つまり、ソーシャル視聴は、テレビのリアルタイム視聴の拡大につながっている傾向のようだ。テレビとソーシャルメディアの親和性が高いことは、広告収入が主事業のテレビ局にとっては明るい材料の一つ。このため、放送局はソーシャルメディアの活用が活発だ。FacebookやTwitterなどを番組ホームページに取り入れることが大半だが、主に深夜番組を中心に様々なトライアルが行われている。
その中、BSフジは、ソーシャルメディアを本格的に活用した新しい試みの情報生番組「ソーシャルTV ザ・コンパス」(土21時~22時25分)を4月にスタートさせている。 番組は、FacebookやTwitterを活用して、様々なニュースやカルチャーについて意見を集約し、有識者、視聴者と一緒に進むべき指針(コンパス)を見出す、視聴者参加型の生放送番組。スカイプも活用してスタジオの外からも有識者らが登場し話を聞いたりする。元日本テレビのアナウンサー西尾由佳理がメインMCを務めている。スタートして約4ヵ月で、まだ手探りが続くものの、「Facebookでは単に読まれるための投稿だけでなく、視聴者同士でコミュニケーションが生まれるようになるなど活発化して、手応えを感じている」という。
テレビを見ながら、スマートフォンやダブレットで書き込みしたり、情報ゲットしたりと、「ダブルスクリーン」視聴が今後定着するとも云われている。あるいは、スマートテレビの普及で、テレビ上だけでソーシャル視聴スタイルが確立していくのか。いずれにしても視聴スタイルは変わりつつある。その中で、リアルタイム視聴の拡大へは、良質番組の制作の一方で、ソーシャルメディアといかに付き合うかがカギとなっている。
(戎 正治)