【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.84】
今年上半期、東宝配給作品が興収上位独占
2012年06月26日
今年上半期、東宝の配給作品が興収上位を独占したことがわかった。邦画と洋画を合わせた作品別興収上位10本のうち、何と8本を占める見通しだ。ちなみに、昨年の上半期は、10本中5本だった。
トップは「テルマエ・ロマエ」で、すでに55億円を超え、60億円近くまで数字を伸ばすとみられる。2位が「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」で、53億7千万円。以下、「映画ドラえもん のび太と奇跡の島~アニマル・アドベンチャー~」「ALWAYS 三丁目の夕日'64」「映画 怪物くん」「名探偵コナン 11人目のストライカー」と続く。
「映画ドラえもん~」以下の数字が入っていないのは、東宝が現時点では正確な見込み数字を明らかにしていないため。ただ、いずれも32億円~35億円あたりで推移していると判断してもらいたい。
ちなみに昨年の上半期は、トップが「パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉」(88億7千万円)、2位が「ハリー・ポッターと死の秘宝PART1」(68億6千万円)だった。すでに懐かしい感じが漂うのは、いかんともし難い。
今年上半期の洋画は、邦画と洋画を合わせた全体では「名探偵コナン~」と争うだろう「メン・イン・ブラック3」がトップ。31億円~32億円あたりとみられるが、これは健闘したと見ていい。そのあとでは、「僕等がいた 前篇」「劇場版 SPEC~天~」「ライアーゲーム~再生」と続く。これが上位10本である。
洋画の厳しさが続いている。洋画2位は、「ダーク・シャドウ」。すでに20億円を超えたばかりだが、今後に少しだけ伸びがあれば、「ライアーゲーム~」と伍して、全体の10位内に食い込んでくる可能性もある。
この上半期の映画興行は、東宝の独壇場と、洋画の低迷に象徴されると言っていい。もちろん、それはここ数年の顕著な傾向であったが、その傾向が両者において、ますます強くなったのが上半期であった。
いつも言うことだが、洋画の奮起が映画界緊急の課題である。先週、先行上映が行われた「アメイジング・スパイダーマン」は、配給本社の方針により、先行上映成績の発表はなかった。目標数字に届かなかったと聞くが、本作の興行の行方が今後の洋画の動向を握るとまで言われているだけに、6月30日からの本興行は大注目だと言えよう。
(大高宏雄)