【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.80】
「MIB3」、アジア席巻に日本も参加
2012年05月29日
先週は、5月26日に開催された第21回日本映画プロフェッショナル大賞の授賞式が差し迫っていたこともあり、このコラムをお休みさせてもらった。授賞式に関しては、中身そのものに即した報告を、いずれどこかでお伝えすることもあろうと思う。
さて、映画興行であるが、久しぶりに洋画が2週連続トップに躍り出たのが注目される。5月19日公開の「ダーク・シャドウ」と、5月25日公開の「メン・イン・ブラック3」で、洋画では、「ダーク~」が今年最高のスタートとなり、さらにその成績を「MIB3」が上回った。
ここでは、公開したばかりの「MIB3」に触れるが、25~27日までの3日間で、全国動員46万1651人・興収7億188万5000円を記録した。これは、予想を上回る成績だろう。土日では5億7千万円前後であったから、当然大ヒットの出足と言っていい。ただ、公開劇場が979スクリーンということを考慮すれば、もっと上がってもいいとの声があってもおかしくはない。
979スクリーンにまで拡大したのは、3D版の字幕版と日本語吹替え版、2D版の字幕版と日本語吹替え版の4バージョンの上映があったからである。とともにこの時期、新作で大作が少なく、配給側が十分に劇場数を確保できたこともあったろう。その劇場数の是非はともかく、数だけ増やしても、関心が希薄な作品はいい結果を及ぼさないわけだから、(スクリーンの)数の論理が、興収増に結び付いただろうことは否定できない。
3D版は吹替え版のシェアが高く、2D版は字幕版のほうがシェアは高くなっているという。子どもたちを中心とした若い層は3D版の吹替え、大人は2D版の字幕に流れたようだ。本作の客層は、子どもから年配者まで幅広く、それが3D版、2D版双方に分散されたとみえる。
このシリーズの成績は、1作目が35億円(配収、97年)、2作目が40億円(興収、2002年)だった。前作から10年が経つことが、興行のネックになるのではとの見方もあったが、エイリアンを介したこのシリーズの軽くて楽しそうなハリウッド・テイストは、今回もある程度のインパクトをもったということだろう。
本作は、中国、ロシアで大ヒットしているほか、アジア地域でも欧州の各国を凌ぐような好成績となっている。韓国では、初めてハリウッド作品のワールド・プレミアが行われ、大きな話題を提供したそうだ。重くないハリウッドの大作テイストは、アジア向きだったか。複雑な心境ではあるのだが。
(大高宏雄)