洋画が、少しずつではあるが、活気を取り戻してきた感がある。「メン・イン・ブラック3」が先週、今年の洋画の公開作品で初めて興収20億円を突破。6月15日公開の「スノーホワイト」も、15~17日の3日間で、全国動員29万6160人・興収3億7482万6400円を記録して、週末の興行ランキングでトップに立った(572スクリーン)。
ただ「ダーク・シャドウ」のように、スタート成績からすると、30億円は優に超えてくると思われた作品が、その成績には程遠いというようなことも生まれている。こうしたことは、かつてなかったように思う。それだけ、洋画の観客層の幅が狭くなっているということだろう。話題性、宣伝量などで、スタート時に少しは関心をもつが、それが長続きしない。作品の中身含め、問題の根は、かなり深いと言わねばならない。
ところで、前回の「サニー~」に続き、今回もまた目を単館系に移してみると、2本の作品で「サニー~」状態となっていることがわかった。「サニー~」のように、公開が進むにつれ、動員が尻上りになっているのである。それは、スバル座公開の2本の作品で、1本はすでに上映が終わった大林宣彦監督の「この空の花 長岡花火物語」。もう1本は、現在公開中の高橋伴明監督の「道~白磁の人~」である。
「この空の花~」は、4週間で1000万円ほどの興収だったが、2週目以降、数字が伸びていった。「道~白磁の人~」は、1週目が175万円。現在2週目に入っており、今週は200万円ほどまで伸びるという。公開後の口コミ、宣伝の広がりなどによって、数字が上がっているのだろう。
かつての単館系、とくに都内1館で公開されているようなとき、尻上がりの動員が続くことがあった。宣伝費が少ないわけだから、作品の浸透度も弱い。だが、作品の評価が高い場合は、公開後にメディア露出が増えることもある。これに、口コミの広がりが加わることで、動員が上がってくることがあったわけだ。稀なことではあったのだが。
前記2作品(「サニー~」を入れれば、3作品)は、現在でも、そうした稀な例があるということを示した点で、とても重要な興行であると言える。ただ、かつてと違うのは、そうした作品を生かすことが、今はなかなか難しくなっていることだ。
じっくりと作品の興行を見つつ、尻上りになれば、上映期間を長くしていくことが、今の編成ではなかなか難しくなっている。最初から公開の終了日が決まっていることも多く、上映期間に融通がきかせられないのだ。私は、単館系興行における上映の融通性を、関係者に一度じっくりと考えてもらいたいと思う。むろんこれは、単館系だけのことではなく、シネコンも含めた映画館全般に当てはまることである。
(大高宏雄)