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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.82】
「サニー~」、熱い語りが口コミ呼ぶ

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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.82】
「サニー~」、熱い語りが口コミ呼ぶ

2012年06月12日

 東宝の快進撃が続く映画興行だが、単館系に目を移すと、地味ながらもいくつかの興味深い動きが見えている。「ファウスト」「ジェーン・エア」「11・25 自決の日 三島由紀夫と若者たち」といった作品が、突出した興行ではないが、まずまずの成績を続けているのが注目される。

 なかで、独自な興行展開になっているのが、韓国映画の「サニー 永遠の仲間たち」だ。1人の女性の病気をきっかけに、彼女を加えたかつての仲間の女性たちが集まり始める。80年代に高校生時代を送った彼女たちの過去と、今の時間を交差させ、女性たちの様々な人生を描き出す。

 当初、興行は厳しかった。広く中身が伝わらなかったことが、大きかったのだろう。5月19日から公開されたBunkamura ル・シネマで見ると、1週目はたかだか100万円前後の興収に過ぎなかったものが、2週目は150万円前後に跳ね上がった。1週目の低調な成績から、3週目は上映回数が4回から3回になったのだが、何と3週目も150万円前後を記録した。

 もちろん、週成績が150万円というのは、ヒットと呼べるものではないのだが、先の興行の推移が重要である。単館系では現在、尻上りの成績になることは、非常に稀だと言っていい。単館系興行は、かつてのような都内1館原則の公開が少なくなったから、1館で凝縮した興行が展開されることが減っているのである。だから、「今回のようなケースは前代未聞」だと、劇場側が驚いた。

 口コミ効果であろう。それも公開後、ネットを始めとするメディアで、多くの人たちが中身の良さを語っているから、その効果が出たのだと思う。そこで重要なのが、語る人たちの言葉だ。単に面白いというようなありきたりなものではなく、語る人たちの言葉に一様に確信的な熱さがある。その熱さが、広範囲に伝わる大きな要素となったのではないか。

 「サニー~」。韓国発の見事な “大衆映画” である。笑わせ、ホロッとさせ、ハラハラさせる。愛を感じさせ、 “青春” と今に人生があり、観終わって力強いメッセージを受け取ることができる。観終わった後、あそこが良かった、あれはどうだと、いろいろ語り合うことができる。要するに、何とも心が満たされ、楽しくなるのだ。

 韓国映画に限らず、日本人にも確実にビビっとくるこのような大衆映画は、多くないにしても、世界中にあるのではないか。「サニー~」の興行は、多くのことを教えていると思う。

(大高宏雄)

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