PC「宮本武蔵~」、テアトル新宿で押井守節が炸裂!
2009年06月13日
ポニーキャニオン配給「宮本武蔵-双剣に馳せる夢-」の初日舞台挨拶が6月13日、テアトル新宿で行われ、原案・脚本の押井守、主題歌の泉谷しげる、監督の西久保瑞穂の3氏が登壇した。
本作は、「GOHST IN THE SHELL/攻殻機動隊」、「イノセンス」「スカイ・クロラ The Sky Crowlers」の押井守(写真下)が新しい解釈、斬新な展開で宮本武蔵を描いた、プロダクションI.G制作の“歴史アニメドキュメンタリー”作品。
あまりの斬新な(!?)作品に、初日一回目の上映を鑑賞し終えた満席の観客の反応は複雑で、予想を裏切られた者も少なくなかった様子だった。押井は、「ダマされたと思った方もいるかもしれませんが、こういうものなんです。ボクは原案・脚本を担当しただけなので、映画の中身については西久保に全責任があります(笑)」と、なんとも無責任(!?)な挨拶。それを受け西久保監督は、「私風に料理をしたので、押井のマニアックな脚本を薄めてしまった事に関しては申し訳ないと思っています」と謙虚に反応した。
すると泉谷が、「また、とんでもねえ映画を作りやがったと思った。ワケのわかんないオヤジが出てきて、アニメ界にケンカを売ってんのかと!(笑) ラストに流れる自分の曲が虚しく感じたね。でも、この作品の良さが上手く伝わるといい。こんな作品を作ってご苦労さん、この作品を観た人もご苦労さんといった感じ」と得意の毒舌で観客を沸かした。
しかし、押井はいたってマイペースで、「この手の作りは『立喰師列伝』(06年)でやっているので、またイケルと思っていた。ボクが監督したらもっと“動き”のない映画になったと思うので、西久保が監督して正解だったのではないか。アニメのドキュメンタリーはボクの中では珍しくなく、ドキュメンタリーでもある種の演出が入るということはフィクションであると思っているから」とし、さらに「武蔵は実在した武蔵が一番面白い。今まで知られていない武蔵が語られる面白さが、この作品にはある。10年くらい前から武蔵について調べ始め、『五輪書』を読んで共感するところが多く、こんな人間が日本にいたのかと興味を持った。でも、劇場用映画にしようとは当初思ってもいなかった。脚本を渡したのは『人狼』(00年)以来なので、他人事で語れるし、楽しい(笑)。今回も意外性があった。後は売れてくれるともっと嬉しい」と押井節を炸裂させた。
先ほど毒舌を披露した泉谷(写真下、右)は「押井さんのやるのは読めない。色々推測してもしょうがない、そこはさすがだと思うね。カテゴリーに収まらない人。だからこっちも下手なものは作れないと思い努力した」と真面目に答えると、西久保監督(写真下、中央)は「最初にもらった脚本に“決定稿”と書いてあった(笑)。読み物としては面白いが、武蔵を近代的・合理的な方で押していたところを、ボクは情緒的な方に振ってしまった」と明かした。
最後に押井は、「吉川英治や漫画『バガボンド』の宮本武蔵がいかにボクの武蔵と違うかわかると思う。史実と違う、確信的正論としてボクは書き、うんちくが70分間語られるのもいいかなと思ったけど、ロマンチックな作品に変わっていたのは良かったかもしれない。日本人は捨てたものではないということを改めて感じてもらい、ブームとなっている歴史好きの女性にも興味を持って欲しい」と語り、場内押井ワールドにのまれてしまったようだった。
客席からは「頑張れ!」との声援が飛び、泉谷が「こんなに好意的なお客さんばかりじゃないよ(笑)」とツッコミを入れたが、常にアニメーションに挑戦し続ける押井組の心意気を感じさせる舞台挨拶となった。