第3回新潟国際アニメーション映画祭の初日(15日)に、押井守監督の『イノセンス』が新潟市民プラザでオープニング上映された。当日は同作の製作・プロデューサーでプロダクション・アイジー代表取締役会長の石川光久氏が登壇し、トークショーを行った。聞き手はフェスティバルディレクターの井上伸一郎氏が務めた。また、押井監督が10分近い長尺でビデオメッセージを寄せた。
『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』の続編として2004年に公開された同作。押井監督は「『攻殻機動隊』もそうだが、10年、20年経っても残っていく作品にしようという意識を持って作った作品」と話し、「当代のアニメーターの技、技術を含めて、可能な限りの表現を目指した。あらゆるパートでその時できる限界までできた珍しい作品」と、制作に携わった各クリエイターたちの全力が込められた映画であることを明かした。また、「はっきり言って、こういった作品は二度と出てこないと思う」とも話し、その理由について「技術ではなく“技”の世界。これが継承されていかない。アニメは人間、手が創り出す仕事。正直、僕自身もこれと同じものをもう1回やれと言われてもたぶん不可能」と、2004年当時だからこそ可能だった、再現のできない貴重な作品との考えを語った。
その後行われた石川氏によるトークショーでは、共同でプロデューサーを務めた鈴木敏夫氏の話におよび、「鈴木さんは『石川のやろうとしていることは、零戦で言えば半分の燃料しか持たずに飛び立っている』と。『自分は、帰りの燃料を持って行かせることが仕事だ』と言っていた。そういう面では思い切ってやれた」と振り返り、タイトルの『イノセンス』と、伊藤君子による主題歌「Follow Me」は鈴木氏が決めたというエピソードも語った。
また、押井監督は3月2日に都内で行われたイベントの中で、シリーズの第3弾の構想があることを明かしており、石川氏は新潟国際アニメーション映画祭の2日前に本人に会ってその内容を確認したという。インサイダーになるためその詳細は明かせないとしつつ、「『イノセンス』で散りばめたヒントを全部回収できるぐらい、話を聞く限りとんでもない面白いものになる」と興奮気味に語った。その一方で、P&Aを含め20億円近いプロジェクトだったという『イノセンス』については「(当時)製作委員会の人たちへの説明で、短期では回収できないかもしれないが、10年かかって必ず戻しますと言った。でも20年経ってもまだリクープしていない(笑)」と会場を笑わせ、「『3』は僕も見てみたい。でも(『イノセンス』で)リクープを達成しないと世に出ない。皆さんのこれからのお力添えが必要」と、まずは『イノセンス』でのさらなる収益増を願った。