深田晃司監督『LOVE LIFE』が現地時間5日、開催中の第79回ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門で正式出品作品としてワールドプレミア上映された。
メ~テレ60周年記念作品に位置付けられている同作は、矢野顕子の同名楽曲をモチーフに “愛” と “人生” を描いたヒューマンドラマ。愛する夫と愛する息子、幸せな人生を手にしたはずの主人公・妙子に、ある日突然降りかかる悲しい出来事、そこから明らかになる本当の気持ち、彼女が選ぶ人生が描かれている。ヴェネチア上映には、主演の木村文乃、共演の砂田アトム、深田監督、服部保彦(プロデューサー)、澤田正道(プロデューサー)の各氏が参加し、上映後には満席となった会場から大きな拍手が起こるなどヴェネチアを大いに沸かした。同日行われた記者会見では、「深田監督の作品は『家族』をメインモチーフにしていることが多いが、今作でもそのような部分が見られました」と込めた想いについて聞かれた深田監督は、「よく “家族を描いている” と指摘を受けるが、私にとって “家族” がメインのモチーフではない。自分にとって普遍的だと思うことを描きたいと思っている。毎回変わるものではなく、言葉に出すと陳腐に聞こえるかもしれないが、それは “人はいつか必ず死ぬ” ということであり、 “人は誰しも孤独を抱えながら生きている” ということ。ただ、 “孤独” を描こうとしたときに、一人でぽつんといる人を描けば “孤独” を描けるかと言われれば、そうではない。やはり、わたし達は親しい家族や友人、恋人といても、ふと自分は一人であると思い出してしまう瞬間がある。そういう瞬間を撮りたいと思っているからこそ、その前提である家族や夫婦といったコミュニティを描いている」とコメントした。また、コロナによって、「人と人が簡単に会えない時代になってしまった。そんななかで矢野さんの楽曲の “離れていても愛することができる” という歌詞がまた新たな意味を持った。そして、この映画は、気がつけば、今作られるべき映画になり、皆様に届けるべき映画になったと思っている」と力を込めた。深田監督は、この楽曲に出会ってから、構想期間18年の時を経て完成させている。
数々の海外映画祭に自作が出品されてきた深田監督にとって、ヴェネチア国際映画祭は初めての映画祭。コンペティション部門には、金獅子賞(最優秀作品賞)、銀獅子賞(最優秀監督賞/審査員大賞)、審査員特別賞、最優秀男優賞&女優賞、マルチェロ・マストロヤンニ賞(最優秀新人俳優賞)、最優秀脚本賞などがあり、受賞結果は10日午後7時~(日本時間11日午前2時~)発表。最高賞の金獅子賞の受賞となれば、1997年の北野武監督『HANA‐BI』以来25年ぶりとなる。日本では、エレファントハウス配給のもと9日より全国公開。同日19時~TOHOシネマズ日比谷で舞台挨拶を行う。木村、永山絢斗、砂田、山崎紘菜が登壇予定。深田監督はヴェネチアから帰国しておらず、登壇はないものの動画コメントを上映する。