第74回ベネチア国際映画祭のコンペ部門に出品されている『三度目の殺人』(東宝=ギャガ配給)の記者会見が現地時間5日に行われ、是枝裕和監督、出演の福山雅治、役所広司、広瀬すず、音楽のルドヴィコ・エイナウディが出席した。
取材陣からは「近年の是枝作品とは全く違う作風。どうしてスリラーを撮ったのか」と質問が挙がり、是枝監督は「観た人が感じたほど新しいことをやった意識はないが、この10年ぐらいはホームドラマを続けて、人間のデッサンを鉛筆で書いていたような意識。今回はやや『家』から『社会』へ視野を広げて油絵で描くようなタッチ」と、観た人が感じ取った変化を自身で分析。 “スリラー” と受け止められた点は、「スリラーをやろうと思ったわけではないが、社会に目を向けた時に人が人を裁くことについて考えてみたいと思ったことがスタート。お付き合いのある弁護士と話をする中で、『法廷が真実を追求するところではない、利害の追及をするところだ』という一言が今回のモチーフ、きっかけになった。脚本作りも実際に弁護士たちに入ってもらって一緒に作ったので、(これまでのように)自分の記憶、家族をベースにして書いたストーリーとは違う作り方をした」とコメントした。
会見後には、レッドカーペットと公式上映が行われ、約1030席が満席の大盛況。上映終了後には6分にもおよぶスタンディングオベーションが行われ、監督・キャストが手を振って応えた。9月9日公開。