シネマライズ頼光裕社長・パルコ堤静夫氏に聞く!
2011年02月24日
渋谷で映画を観る流れを一緒に作っていく―渋東シネタワーが4スクリーンから6スクリーンに増館されることについては。
頼 他社さんがどうだからってあまり考えたことはないんですが、要は作品というか番組編成なんだと思うんですよ。
堤 今の映画ファンや若い人たちが、映画を新宿で見るという流れになってしまっているのを考えると、もう一回渋谷で見てもらうという流れになるんであればもの凄いいいことだと思うので、その流れを一緒に作らないと駄目だと思うんですよ。他の劇場さんに頼るんじゃなくて、シネマライズ、シネクイントでもこんなのやっているよとアピールできる作品をやらなくちゃいけない。当然TOHOシネマズ渋谷さんも6スクリーンになれば、TOHOシネマズシャンテでやっている作品もかけるでしょうし、その流れの中で張り合っていかなければいけない。そうやって張り合うことが渋谷の活性化につながっていけばいいと思っています。
頼 元々、銀座と新宿と商圏が違って、今までがちょっと渋谷はヨイショされ過ぎてしまって、梯子を外されてしまったから、余計に厳しい印象をもたれてしまうのではないでしょうか。新宿も新宿ピカデリー、新宿バルト9の勢いで、歌舞伎町が厳しくなってしまっているわけじゃないですか。
堤 渋谷自体商圏が小さいのに“渋谷系”という言い方がされて、いいように文化の先端のように言われていましたが、新宿に2つも最新のシネコンが出来たらみんなそっちへ行ってしまうというところもある。恐らく他のエリアも食われているんですよね。そこをもう一度、新宿の全部を引き剥がすことはできませんが、呼び戻したい。来年、渋谷駅前の再開発もあります。
―今後、一緒にやっているということが一般の人へも伝わるようなアピール展開は考えていますか。
堤 していきたいですね。例えば、両館である作品の前編・後編を上映するとか、そういった仕掛け、やるからには他とは違うことをしたいと思っています。もしくは映画祭みたいなものをやってもいいかもしれません。まだ難しいところもありますが、時間かけて考えていきたいです。
頼 共通のイベントがあったりすれば、一番伝わると思いますね。
堤 相互サービスみたいなものもできればいいですね。お互いの半券をもってくると割引になるのから始まって、なんか両館でやっているんだなというところからはじめていきたいです。
―TOHOシネマズが新料金のテスト導入を発表しました。
堤 今の段階ではどうなるのか見たいと思っている興行者が多いのではないでしょうか。ただ、あの同じエリアの興行者は静観している場合じゃないですよね、現実問題として。渋谷でそういうことになれば、我々も当然考えていかなければいけません。
今までの既成概念を壊さないと駄目
―これからのミニシアターの在り方、役割をどのように考えられていますか。
頼 そもそもミニシアター映画って興行の隙間だったんですよ。でも、その隙間というか、のりしろというか、それがなくなったらどういう風に今度はメインストリームはなっていくのかと。「午前十時の映画祭(何度見てもすごい50本)」が、その隙間を埋めているのかなあ? このままミニシアターで上映するような映画が減り続けて10年後の「午前十時の映画祭」でかける作品がなくなってしまってそれでいいわけ?っていうことです。まあ、多少なりとも10年後、20年後にまた観たい映画をかけていきたいですよね。
堤 “ミニシアターという文化”って東京で凄く伸びましたよね。世界でも珍しい文化。それが時代の流れとして厳しくなってきて、これからが知恵の出しどころだと思っています。マーケットも小さくなるとかいろんなことが考えられるとは思うんですが、ミニシアターと呼ばれているところが生き残りをかけて、それこそ隙間、それから今までの既成概念を壊さないと駄目かなと思っています。それって凄く勇気もいるし、今まで自分たちがやってきたことを否定しなければいけないので辛い、難しいことだと思いますがそうやっていかないと駄目なのではないでしょうか。私が言っていることは全部否定されることもあるかもしれない、そんなの古いですよと。ミニシアターというのは常に新しいものを発信してきたのでね。
頼 それと当たればいいのかと、そうじゃない作品を世に出す使命みたいなものもあったわけですよ、ミニシアターには。それが当たるものがイコールいいもの、全部そうだから売れるものはいい商品。以前はそういうところで配給会社さんも一緒に頑張ってくれたけど、配給会社さん自身に余裕がなくなってしまったのもありますね。
そういう意味で改めてミニシアターというものを提言していければと思っています。でも、映画業界に関わっている人はみんな気づいていると思いますよ。なんでも当たっていればいいのかというジレンマはあると思います。そこをやはりどういう風に、きちんと評価していけるかじゃないでしょうか。
堤 「あの映画で人生が変わった!」と言う私たちが昔見た名作映画は、やはり今も残っていますよね。そういう映画を上映していかなければいけない。それを我々だけではなくて、映画業界全体で考えていかなければいけないなと。コツコツやっていくしかないですよ。
頼 そこは誰かが言っていかないと、続いていかないといけないと思います。
―ありがとうございました。(了)
それぞれのミニシアターが、それぞれの個性を生かし、競合しながらの興行というスタイルの変革が迫られているのかもしれない。シネコン全盛時代の今、これからのミニシアターは、その個性を生かしつつも互いに協調し力を合わせていくことで、新しいミニシアターの在り方を提示しようとしている。それぞれの上映作品が相乗効果を生み、渋谷のスペイン坂上から新たなミニシアター時代の到来を告げることが出来るか注目される―。(インタビュー/文・構成:和田隆)
※シネマライズのオフィシャルサイトは
こちら。
※シネクントのオフィシャルサイトは
こちら。