映像産業振興機構(VIPO)が企画・実施する文化庁委託事業「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」では、今年もいよいよ“製作実地研修”が始まった。未来を担う映像作家5名が、35ミリフィルムを使った短編映画製作に挑戦する。
製作実地研修への参加が決まったのは、高橋康進(たかはし・やすのぶ)、藤村享平(ふじむら・きょうへい)、松永大司(まつなが・だいし)、三宅伸行(みやけ・のぶゆき)、森英人(もり・ひでと)の5氏。多数の若手映画作家の中から、模擬撮影を中心としたワークショップ等を経て選ばれた。
既に9月より脚本指導が進んでおり、11月より順次クランクインする。来年1月中の作品完成を予定。2月に東京ほかで実施される合評上映会で公開される。
制作は、商業映画を手がけるプロダクションが請け負う。今年は、松竹(株)と(株)東宝映画も名を列ねた。松竹は松永作品、東宝映画は森作品をそれぞれ担当する。他のプロダクションは、(株)シネムーブ(高橋作品)、(株)オフィス・シロウズ(藤村作品)、協同組合日本映画撮影監督協会(三宅作品)。
「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」は、国をあげて未来の映画作家を発掘・育成する取り組み。06年から毎年実施されており、全国の映画・映像スクールや自主映画コンテスト、制作現場などから有望な若手映画作家が推薦され参加する。今年は30団体から53名の応募があった。
▼製作実地研修に参加する5人のプロフィールとコメントは以下のとおり。カッコ内は推薦団体。
高橋康進(協同組合日本映画製作者協会)
1974年生まれ。1995年、渡米。1996年からカリフォルニア州DE ANZA COLLEGEで映画製作の基礎を学ぶ。自主製作映画『ロックアウト』は、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2009など国内の映画祭のほか、欧州7カ国・米国3都市を含む16の海外映画祭で上映され、2009ニューヨーク国際インディペンデント映画祭(外国語部門)では最優秀長編映画賞・最優秀監督賞・最優秀スリラー賞と三冠を達成。2010年2月、シネマート六本木で劇場公開された。
「初の35ミリで本格的な短編作品を撮れる、貴重なチャンスを、最大限に生かすため、まず、入念な台本の構築に力を注ぎます。そして、よりクオリティを上げるため、台本ができたらなるべく早く、スタッフ、俳優部と密に接していきたいと思います。そこで過ごす時間が、作品を作る上で、非常に大切だと思っているからです。そして、どこの国の人でも広く多くの人々に見て頂けるような、楽しい映画を目指したいと思っています」
藤村享平(日本映画学校)
1983年生まれ。日本映画学校にて加藤正人、池端俊策に師事。脚本作『引きこもる女たち』が2007年函館港イルミナシオン映画祭第11回シナリオ大賞でグランプリを受賞。2008年『どん底の二歩くらい手前』と2009年『アフロにした、暁には』で、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭短編コンペティション部門に2年連続ノミネートされる。2010年には「世界の短編映画 メイドインジャパン編」の一作品として『アフロにした、暁には』が渋谷アップリンクで上映されるなど、自主映画作家として活動中。
「これだけ恵まれた環境で映画創りが出来ることを幸せに思います。嫌でも気合いが入ってしまうこの状況で、いかに自然体を貫けるかが僕のテーマです。今回はスタッフ・キャスト共に本当に素晴らしい人たちが揃ってますので、周りに頼りつつ、尚且つ自分の感性を信じていけたらと思います。頑固に柔軟に、その場しのぎを積み重ねていきます」
松永大司(川喜多記念映画文化財団)
1974年生まれ。大学卒業後、『ウォーターボーイズ』(監督:矢口史靖)、『手錠』(監督:サトウトシキ)などに出演。その後、『ハッピーフライト』(監督:矢口史靖)、『蛇にピアス』(監督:蜷川幸雄)のメイキング監督や、『レスキューファイアー』(テレビ東京系)の監督を務める。性同一性障害の現代アーティスト“ピュ~ぴる”を8年間追い続けたドキュメンタリー映画『ピュ~ぴる』が第40回ロッテルダム国際映画祭、第11回全州国際映画祭など数々の映画祭から招待され、日本では2011年3月に公開される。
「35ミリのフィルムで短編映画を撮れるという事は、とても幸せなことです。精一杯頑張って素敵な作品を作ろうと思います」
三宅伸行(協同組合日本映画撮影監督協会)
1973年生まれ。大学を卒業後、広告代理店に約4年間勤務。その後、映画監督を志し渡米。ニューヨーク市立大学院にて映画制作を学ぶ。短編作品で数多くの映画祭で受賞した後、長編作品『Lost&Found』を監督し、2008オースティン映画祭にてグランプリに輝いた。また、オムニバス企画で川端康成原作の映画化プロジェクト「掌の小説」に参加し、第2話『有難う』を監督。「掌の小説」は、第22回東京国際映画祭「日本映画・ある視点」部門で上映され、のちに劇場公開を果たした。
「僕はもう若手という年齢ではないかもしれません。しかし、サラリーマンを経て30才から映画を志した自分としては、まだ何も始まってもいない気持ちです。今回制作する短編は、海にこぎ出すイカダを巡るストーリーです。大きな海を目の前に深呼吸をする主人公。まさしく今の僕の心境と重なります。とにかく真っ直ぐ前に向かって進みたいと思っています」
森英人(さぬき映画祭実行委員会)
1983年生まれ。ENBUゼミナールにて篠原哲雄に師事し映画製作を学ぶ。卒業後は様々な職を転々としながら自主映画の製作を続ける。GyaO!配信ドラマ『恋の三乗2 ワンダーフォーゲル』監督。第一回小江戸川越ビデオ大賞最終選考に残った監督作品『the pursuer and the pursued』が川越スカラ座にて上映される。初の長編自主映画『Give and Go』がさぬき映画祭2009にてグランプリ受賞。
「今まで自主映画等で活動してきたので勝手気ままにというか好き勝手に作品作りをしていたのですが、きちんと制作会社がついてプロのスタッフに囲まれて制作する事の厳しさをひしひしと感じております。色々と大変な部分もありますが、というよりも全部大変で大変な事しかないくらいの状況ですが、これを乗り越えれば間違い無く自分の実力が何段も引き上げられるであろう事も実感しております。自分が未だ未だ未熟者なので関係者の皆様には色々とご迷惑をおかけしますが暖かい目で見守って頂ければと思っております。目指せカンヌ、ベルリンといった感じで精一杯頑張ります!」
※記事は取材時の情報に基づいて執筆したもので、現在では異なる場合があります。