録音の他、試聴会・ライブ・番組収録等にも活用 「3スタ」は、50人規模の大編成やストリングスのレコーディングも可能な広いスペースと4・5mもの高い天井、分厚い“ムク”材を使用したフローリング、更には音の反響を考慮しあえて壁面にレンガを使用するなど、響きの良さと居心地の良い環境に注力。これにより、レコーディングはもちろん、試聴会、スタジオ・ライブ、テレビ番組収録、イベント開催、最近では宇多田ヒカルの「Flavor Of Life‐Ballad Version‐」のプロモーション・ビデオ撮影など幅広い用途で使われてきた。
=写真=レコーディング・スペース また、「3スタ」は、現在では貴重となった機材が現役で活躍していることでも知られている。なかでも、オープン当初に設置された音作りの要ともいえる英NEVE社製のコンソール「8078 CUSTOM」(通称オールド・ニーブ)は、現在日本で原型のまま稼動している最後の1台で、国内外のアーティストたちを魅了してきた。入念なメンテナンスを施され、厚みと艶のある音を紡ぎだすこのコンソール目当てに「3スタ」を指名するアーティスト、ディレクター、エンジニアも多数いた。
同社は、この貴重な「NEVE 8078 CUSTOM」を原型のまま移設することを検討したが、経年変化から不可能と判断。しかし、多くの音楽関係者に愛された「3スタ」のテイストを何とか残せないかと検討した結果、ヘッドアンプやイコライザといった音作りの要となるモジュールを品川の「Studio TERRA」へ移設し、伝統ある音創りを受け継いでいくと決めた。
他にも、現在は製造中止となってしまったアナログ・コンプレッサーなどのエフェクターや、いわゆる「ビンテージ・マイク(特に真空管方式)」などや、鳴りのよさで定評のある「フルコンサートタイプ」のピアノ「HANBURG STEINWAY & SONS社製D‐274」も「Studio TERRA」に移設し、アナログ熟成期の貴重な機材を今後も使用できるようにする。移設作業は、3月には完了し、全ての機材が使用可能になる予定。同社は移設状況を「Studio TERRA」のHPで報告していく。
【EMIミュージック・ジャパン スタジオの歴史】1960年 東芝音楽工業株式会社設立 編集室設置(有楽町)
1966年 赤坂にスタジオ(「第1スタジオ」「第2スタジオ」)完成 (現在の永田町ビル敷地)
1982年 本社ビル建て替えに伴い、ビル内に「第3スタジオ」完成
1987年 品川・天王洲に「スタジオTERRA」完成。永田町ビル建設のためスタジオ部門を移設
1990年 本社ビルに「第2スタジオ」完成
2002年 スタジオ事業部を分社化し、 東芝イーエムアイ・スタジオ株式会社を設立
2007年 社名を株式会社EMI ミュージック・ジャパン・スタジオに変更
2008年 「第2スタジオ」、「第3スタジオ」営業終了
【「3スタ」に関する近年のトピックス】〔ローリング・ストーンズ〕
・1995年 ツアーで来日した時に、後に「TOKYO SESSION」と名付けられたレコーディングを実施。「アコースティック・アルバム」というコンセプトのアルバム『STRIPPED』にこの時レコーディングした楽曲から5曲が収録された。
〔ホワイトスネイク〕
・1997年 プロモーション来日時にデイヴィッド・カヴァデール(vo)とエイドリアン・ヴァンデンバーグ(g)がアンプラグド・ライヴを行い、『スターカーズ・イン・トーキョー~アコースティック・ライヴ・イン・ジャパン』としてCD、映像作品を発売。
〔レニー・クラヴィッツ〕
・1998年 「5」発売記念ファンイベント、ライブ実施
〔ナンバーガール〕
・2001年 ファンを前にしたスタジオ・ライブ、『騒やかな演奏』を映像作品として発売
〔宇多田ヒカル〕
・2003年 宇多田ヒカルの20歳の誕生日に行われたネットイベント「UH LIVE STREAMING 20 代はイケイケ!」、「3スタ」から生中継し、延べ100万アクセスを記録。2007年 「Flavor Of Life-Ballad Version-」のPVを収録。2008年 営業最終日に5枚目のオリジナル・アルバム(3/19発売)社内試聴会を実施。
〔フジファブリック〕
・2004年 アルバム購入者スペシャルライブ「TAMEIKE MIDNIGHT」実施
〔COLDPLAY〕
・2005年 ファンイベントとして「アコースティック・ライブ」実施
〔9mm Parabellum Bullet〕
・2008年 ファン招待ライブ実施
〔東京佼成ウィンドオーケストラ〕
・吹奏楽「ニュー・サウンズ・イン・ブラス」シリーズ全30作を収録