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インタビュー:信国一朗(株)TBSテレビ取締役 事業本部・コンテンツ事業局長

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インタビュー:信国一朗(株)TBSテレビ取締役 事業本部・コンテンツ事業局長

2007年09月12日
―そういった意味では「どろろ」はTBSとしても異色な作品だったんじゃないですか。

信国 全然TBSらしくないですね(笑)。正直、これは決めるのに相当勇気がいったんですよ。これはどちらかというと「蒼き狼」に近いわけです。映画屋さんが作る映画。私も見た時にこれは計算できないと思ったけど、こういう映画もTBSが作ることが大事だと思っているんです。これは一人の異才のプロデューサーがやったもので、彼の相当個人的な思いで作っているわけです。だけど会社としてそういうものも許容したいんですね。TV屋が映画をやらせてもらう以上ですね、やはり効率とマーケティングだけでは作りたくない。先ほども言った映画会社が作る大作主義、独立系の作品、そしてTV屋が作るTVと連動したものと、3つ大きくあるとして、我々はまん中に近いんですが、7割はTVをベースに作らなければいけないけど、2~3割は1年に1回はこういうものを作りたいと、それはやはり利益だけではないと思っているんですね。我々が作る映画はなるべく興収を上げて、沢山動員していかなければいけないんだけども、その中でいい作品を作ることも大事。これはなぜかというと“ブランド”なんですよ。
 行き着くところは。我々がやる映画ビジネスは、放送収入が頭打ちの中で、違う場でコンテンツを作り、そこで稼ぐということが非常に大事になってきました。その先にあるのがブランドなんです。やはり劇場へ行って、「TBSはいい映画を作っているじゃないか」というのが大事なので、我々は映画をビジネスだけで考えていきません。但し、あまりマイナーな所に入ってもいけないので、メジャーなものを作りたい。そういう形でいくのが健全なのではないでしょうか。フジテレビさんに学ぶけれど、元々それぞれの会社の特色があるわけだから、そういう意味で我々は放送局らしいことへのこだわりがあります。もしかしたら非効率的なところもあるかもしれないけど、そこは残していかなければいけません。それがまあ、映画の方々と付き合っていく上で大事なことだと思っています。



「花より男子」の凄さ


―07年度のラインナップも期待作が揃っていますが、やはり原作ものが多いですね。

信国 まず安心してビジネスを進められるという意味ではどうしてもしょうがないですね。ただ、「涙そうそう」はオリジナルですし、いま制作局との連動も始まっていて、結構オリジナル企画が上がってきているんです。やはりオリジナルにこだわっているプロデューサーはいます。TVドラマを作ってきた人たちが映画に挑戦して、オリジナルなものを作ろうという動きがありますので、それは大事にしたい。
 06年度はあまりに大作が多かったので、今年は地味目ではあるんですが、下期にもそれなりのものが出てくる予定です。まだ、製作委員会とか原作者との間で詰めているところですが、一つ一つをきっちり出していこうと思っています。そういう意味では、昨年の結果で映画を盛り上げる、どういう風にすればお客さんが喜ぶのかなどある程度ノウハウは固まってきていますので。


―現在の出資比率はどれくらいなのでしょうか。

信国 7~8割りのTV的な作りの映画の出資比率をもう少し上げたいと思っています。今の25%~30%出資では、あれだけの宣伝をかけるにしては、出資額が低すぎるかなと。ただ、全部とはいいません。年間に何本かは少し出資比率を上げたものをやっていきたい。基本的には今までのお付き合いの延長線でやっていきますが、TBSオリジナルなものに関しては出資比率を少し上げていきたいですね。「涙そうそう」でさえ38%。本当だったら50%くらいあっても良かったかなと。


―先ほど言われた、TBS映画のブランドとは、一言で言うとどういうブランドでしょうか。

信国 年10本やるとして、そのうちの半分は幹事会社としてやるわけでしょう。ですから映画によってTBSのブランドが上がるものですよ。それがビジネスとして大儲けしてくれるものが一番いいわけですが、“TBSブランドを高める映画”ですね。「涙そうそう」も「木更津」も「どろろ」もTBSらしいと思っています。側面は違うけども、つまりこういうものに挑戦しようというのもTBSらしいじゃないですか。


―DVDの売上も好調だそうですね。

信国 06年度の売上で言うと最高ではないんですよ。売上そのものは45億円くらいで、実際04年、05年くらいは46億円なんですね。ただ、06年の特筆すべきは利益が一番高いんですよ。史上最高の利益。なぜかというと、今年度一番利益を上げているのはドラマ「花より男子」なんです。「花男」第一弾のDVDは、05年度に稼いでいるのに、06年度にまた稼いでいるんです。これは凄いことで、つまり「花男」は一作目のドラマシリーズがあって、そのDVDを出して売れて、2作目を放映したら一作目のDVDがまたバカ売れしているんです。これはコストがかからないでしょう。通常のヒットドラマ以上に「旧作」が売れている。また、第5位くらいにドラマ「木更津キャッツアイ」が入っている。これも映画の力なんですよ。だからこれがまさにTVと映画の連動なんですね。TVを持っている強み。これで映画、TV、DVDが動くことで雪達磨式に利益が出てきているということ。これは非常に面白い現象で、行き着くところは番組コンテンツなんです。放送外収入といいますが、実は放送収入なんです。地上波が生んだものがやはり一番売れるわけですよ。


―海外への番販はどうですか。

信国 海外番組販売は多分うちが一番古いのではないですか。トータルに一番実績があると思います。最近では「どろろ」が24カ国で、「日本沈没」も大体同じくらい売れています。また、映画とTV番組だけでなく、フォーマット販売も強いんですよ。これは例えば、「風雲!たけし城」「SASUKE」などで、やはりオリジナルなコンテンツがいかに強いかということですよね。


―インターネット、モバイル、ワンセグ、またブロードバンド系の動画配信などの来るべきデジタル時代に、TBSはどう対応していこうとしているのでしょうか。

信国 ネットはバナー広告くらいしか収入の道がありません。宣伝としてのホームページ作りも我々の仕事で、間接的には番組の視聴率を上げる為とか映画を売るとかに貢献はするんですが、収入でなくコストなんですよ。ただ、いま「花男」のホームページが凄いヒット数になっていて、1200万ページ。お陰さまでモバイルも課金が増えていて、「花男」が始まるまでは14万人でしたが、20万人になってしまいました。「花男」で一気に6万人ですよ。やはりああいう若者向けのドラマって流行ると凄いことになりますね。
 動画ブロードバンド配信は一番注目しているのですが、まだライツクリアができていません。今のところは慎重に遅れない程度に取り組んでいますが、最終的にはコンテンツを持っているという自信がありますので、地上波というメディアの力が落ちたとしても、その為の準備はしていきます。
信国一朗(のぶくに・いちろう)
1954年福岡県生まれ。78年3月東京大学経済学部卒、同年4月(株)東京放送(TBS)入社、報道局社会部に配属。取材記者、番組ディレクター、プロデューサーとして活躍。93年ニュース番組編集長、94年ニューヨーク支局長、97年編集部副部長、99年編集部長、02年ニュース番組部長、03年編集センター長、05年事業本部事業局長を歴任し、06年TBSテレビ取締役・事業本部コンテンツ事業局長に就任。現在に至る。


(全文は月刊誌「文化通信ジャーナル」07年4月号に掲載)

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