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インタビュー:宮田昌紀ユナイテッド・シネマ(株)代表取締役社長

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インタビュー:宮田昌紀ユナイテッド・シネマ(株)代表取締役社長

2007年08月15日
新社長がUCを評価分析

――外部の目から見て、UCの現状はいかがですか。塚田前社長が築き上げた経営体制、スタッフの陣容などをどのように評価、分析していますか。

宮田 住商は99年のUC設立当初から40%を出資して株主の立場ではありましたが、本格的にUCに関与することになったのは04年にUCIから株式を買い取って全部で80%の株式を取得してからと言えます。UCはUCIジャパン時代のシネコン黎明期から存続し、10年を超える歴史があります。赴任してから3ヶ月強で分かったことは、会社運営、或いはシネコン運営に必要なベースとなる部分は、10年という歴史を積み重ねる過程できちんと作り上げられているということです。

――具体的にUCの持つ強さはどのような点にありますか。

宮田 90サイト近くを実際に見てきて、手前味噌かもしれませんが、UCは真摯にサイト運営を行っていると思いました。塚田イズムとでも言いましょうか、原理原則に則ってきちんと運営をするんだという思いは、どのサイトからも感じました。これは流通事業、特に食品スーパーにも通じることですが、お店が清潔か、接客態度がどうか、少しでも早く接客できるか、トイレがきれいになっているか、バックヤードでは衛生管理や品質管理が徹底しているか、こういった要素は全部お客様に伝わって、再度来店するかの重要な判断基準になります。これがまさに地域密着ということになるんですが、競争がある中でこういう要素が不十分だと勝ち残っていくことができません。
 それから、UCには業界のプロが集まっています。住商のような総合商社は色んな分野の仕事を手掛けていますが、役割分担という鉄則があると思います。住商がそれぞれの分野で一生懸命仕事に励むことは当然のことですが、事業を成功させるには、やはりその道のプロの人たちと情報をいかにシェアしていけるかということに尽きると思うんです。映画の仕事がしたいならば総合商社ではなく映画会社を目指せばいいわけで、総合商社が手掛ける流通事業、総合商社が手掛けるインターネット事業、総合商社が手掛ける映画事業がどういうものかをきちんと理解していないといけません。つまり、住商の立場で考えるシネコン事業と、実際にシネコン運営を行うプロの人たちの考えるシネコン事業との違いを認識した上で、現場を任される人たちにとってやりがいのある仕事、会社にしていかなければなりません。常務取締役オペレーション統括本部長の関本(信)さん以下、経験と実績をお持ちの方がたくさんいます。これから新たな事業を始めようという時にスタッフを補充することはあるでしょうが、現時点のシネコン運営において陣容は確立されていると思います。
 もう一つ、予想以上に嬉しかったのが、本社のマネージャークラスのポストにいる人たちにサイトの経験者が非常に多いということです。彼らの多くは、映画が大好きで映画の仕事に携わりたいと思ってUCのサイトで働いていた人たちで、本社に来ることになって現在は重要なポジションで働いています。量販店の事業を行っている時に思ったんですが、やっぱり現場を経験してお客様と肌身を接して感じるということは非常に重要なことです。本社にいて、或いは株主としての立場では、頭では分かっていても、次にどんな手を打ったらいいか分からないということがよくあります。私は現場主義者で、現場での経験が全体的な判断に役立つ、物事を考える参考になる、答えは現場に転がっていると思っていますから、本社にサイト経験者が多いというのは強みになりますね。


悪くても利益出せる体制

――逆にUCが抱えている課題、改善すべき点はありますか。

宮田 二つあると考えます。一つが、興行不振の理由を、天候や暦などに押し付けてしまうことです。これは流通業界でも同じことが言えますが、天気が悪かったから売上が上がらないとか、休みが一日少ないから売上が達成できないとか、今年は暖冬で冬物が売れないとか。これは確かに事実です。しかし、事業を始めたのは昨日や今日ではないわけで、条件が良い時もあれば悪い時もあり、では悪い時にどうしていくのかが経験値ですよね。先ほどデジタル化の話をしましたが、やはりデジタルの視点で物事を考えて、悪い時でも利益が出せる体制を作っていかないといけません。“映画は水物の商売だから”という一言で片付けてしまうのではなくて、施策と結果をきちんと分析した上で、悪いなりにも最低限の部分は確保できるようなデジタル的な経営をしなければと思っています。映画が好きだ、接客が好きだというのも重要ですが、最終的に利益が出ないようでは元も子もないわけです。会社である以上、利益追求という部分と対顧客という部分を両立させなければなりません。
 もう一つ気になる点が、会社に危うさとでも言いましょうか、先ほど従業員が現場をよく知っていてベースがしっかり作り上げられているという話をしましたが、裏を返しますと、新しいことを始めようという時に〝お前、そんなことやっても大丈夫なのか〟と言わせてしまうようなエネルギーが果たしてUCにあるのかということです。やるべき仕事をきちんとやる、しかも、かなり高いレベルで仕事ができているのは間違いありません。一方で、自ら考えて何か新しいことをやっていきましょうという時に、爆発するような、溢れ出るようなエネルギーが果たして出るのだろうかという心配があるんですね。
 日々のオペレーションを変える気は全くありませんが、その上に何かを積み上げていこうという時に、従業員自らが積極的に取り組んでくれないと新しいことは始められません。新しいことにはリスクが付き物ですが、楽しくやりがいもあって、そこにエネルギーを集中させることは会社運営において非常に重要なことだと思います。トップ自らが、“私はこの方向に行きたいんだ、そのためにこういう力が必要なんだ”と言葉で説明をして、従業員にきちんと分かってもらうプロセスを経ないといけないと思っています。


従業員のエネルギー結集

――そういった従業員に対する語りかけ、方針の説明はすでにしているんですか。

宮田 2月にUCに来てサイト回りをする一方で、本社の従業員全員と個人面談をしました。契約社員も含めて、今は本社で約40名が勤務していて、各1時間から1時間半くらい、直接話をしました。単純計算で40時間か50時間かはかかるわけで、一方でサイト回りもしていましたから、個人面談を終えるまでは結局1ヶ月半ほどかかりました。従業員の思いを聞かせていただいて、逆に私自身の考え方、私のキャリア、それを踏まえたUCの方向性などを伝えて、具体的なものは今後詰めていくからね、という話をしました。
 トップが自分の言葉で伝えて、立場の違いは関係なく皆で情報を共有して、エネルギーをどのように結集させていくかということは、経営者としてきちんとやらなければいけない。UCの従業員は素直で真面目なメンバーが揃っているので、私の考えている将来像を一旦理解していただければ、エネルギーを結集させるのは意外と簡単なのではないかと思っています。


宮田 昌紀(みやた まさのり)
生年月日1954年11月14日生まれ
学  歴1978年3月 早稲田大学政治経済学部卒業
職  歴
 1978年4月住友商事 入社 人事第二部
 1981年7月大阪重化工機部
 1988年4月大阪機械プラント部長付
 2000年2月消費流通事業部長付
 2004年10月ライフスタイル事業開発部長
 2005年4月ネットワーク事業本部長付
 2005年6月ネットワーク事業本部長付兼ジー・プラン代表取締役社長
 2006年7月ネットビジネス事業部長付
 2007年2月メディア事業本部参事兼ユナイテッド・シネマ社長付
 2007年3月メディア事業本部参事兼ユナイテッド・シネマ代表取締役社長

(全文は、「月刊文化通信ジャーナル」07年6月号に掲載)

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