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インタビュー:杉山知之 デジタルハリウッド大学学長 工学博士

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インタビュー:杉山知之 デジタルハリウッド大学学長 工学博士

2009年12月16日
アニメとCGアニメ

――ただ、日本のアニメマーケットは独特ですよね。宮崎駿監督作品は別格として、なかなかオリジナルものは結果が出せていない。

杉山 その辺は作品を重ねていくしかないですよ。だんだん効率的な方法とか、経験値をやっと現場が積み始めているところだと思うんです。今までフルに90分のCGアニメのためにお金出す人ってなかなかいなかったけど、やっとギリギリのラインの中で公開できるものが出てきたという状態ですよね。宮崎さんを継ぐかどうかはわからないけど、新しい才能ってどんどん出てきていると思う。細田守監督の「サマーウォーズ」も凄く良かったですよね。あんなストーリーと設定って日本人以外絶対出来ないと思う。結果も出ましたし、凄い反響で、圧倒的に面白いわけですよ。そういう素晴らしい監督も出てきている。

――海外による日本アニメ、漫画の映画化が増えています。

杉山 いわゆるハリウッドメジャーの人たちが取っている戦略というのは、これまでだったらいい映画作れば必ず世界でヒットする傾向だったんだけど、それぞれの文化度も上がっているので、なかなか一方的に勝つことが出来ないという流れの中で、地域ごとの配給もやるようになったんですよね。「サマーウォーズ」はワーナーさんで、もしよかったら世界に配給しちゃうぞという方向で戦略を打っているじゃないですか。日本の映画会社にとっては脅威だと思うんだけど、製作者側から見たら、もしよかったら世界配給もあるというのはワクワクするじゃないですか。それは日本のエリアだけで強い配給会社と組むのと、世界配給出来るところと組むのとで、ビジネス的には大変な戦いになっているとは思いますけどね。

 例えば映画「ATOM」は、なんで日本で作れないのか。手塚治虫さん生誕80周年ということで、みんなでお金出して世界に向けて出来なかったのか。香港が拠点の制作会社ですが、ロサンゼルスでコントロールしているから、いろいろプロデューサーの意見も入り、世界中の子供たちに見てもらえるような、テイストになっていくわけですよ。多くの人に見てもらえるという意味では、「アトム」も幸せなのかなと思えますが、難しいところですよね。だから、もうちょっと世界の人に見てもらう部分を、日本のプロデューサーたちが意識したらいいんじゃないかと思うんです。映画監督にそれを意識させるのではなく、プロデューサーというのは、日本も大分昔と違って権限が強くなってきたと思うんですけど、世界マーケットに出しやすくなる表現の仕方や、ストーリーなどもあると思うんです。その部分は公開中の「ATOM」で学びたいなと思うんですよ。というのは手塚プロダクションとしても、手塚先生の世界観やモノの考え方とか、まったく壊していないと、そこだけは意見が十分に言えたし、それに沿って作ってくれたと言っているわけですよね。それはちょっと表現が変わっていたり、デザインが違っているけど、その伝えたかったテイストが残っているということであれば、それはそれで勉強になるじゃないですか。それによって、世界の人にわかってもらえるようになっているのなら、その辺を少し勉強してもいいかもしれない。プロデューサーたちが最初から世界へと考えつつ、監督以下、企画側とパートナーをとれるくらいの勉強は必要なんじゃないですかね。

(全文は、文化通信ジャーナル11月号に掲載)

杉山知之 デジタルハリウッド大学学長 工学博士
 1954年東京都生まれ。87年よりMITメディア・ラボ客員研究員として3年間活動。90年国際メディア研究財団・主任研究員、93年 日本大学短期大学部専任講師を経て、94年10月 デジタルハリウッド設立。04年日本初の株式会社立「デジタルハリウッド大学院」を開学。翌年、「デジタルハリウッド大学」を開学し、現在、同大学の学長そして、デジタルハリウッド学校長を務めている。
 マルチメディア放送ビジネスフォーラム代表、福岡コンテンツ産業拠点推進会議会長を務め、また「新日本様式」協議会、CG-ARTS協会、デジタルコンテンツ協会など多くの委員を歴任。99年度デジタルメディア協会AMDアワード・功労賞受賞。
 著書は「クール・ジャパン 世界が買いたがる日本


会社概要
社   名:デジタルハリウッド株式会社
本社所在地:東京都千代田区神田駿河台2-3 DH2001Bldg.
      代表電話 03-5281-9222(大代表)
設   立:1994年10月3日
資 本 金:3億4千万円
役   員:
 取締役会長 柴田励司
 代表取締役社長兼CEO 古賀鉄也
 取締役 学校長兼学長 杉山知之
 取締役COO 廻健二郎
 監査役(社外) 味村隆司
従 業 員 数:163名(2009年3月期)
事 業 内 容:
 <スクール事業>
  CG、WEBなどのクリエイター養成スクール運営
  オンラインスクール(eラーニング)運営
 <大学・大学院事業>
  デジタルハリウッド大学(四年制)運営
  デジタルハリウッド大学院(専門職大学院)運営
 <研究開発事業>
 <法人ならびに自治体向け教育サービス事業>
 <中国語語学研修事業>
 <就転職支援サービス>
主 要 株 主:カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社、その他


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