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トップインタビュー:佐野哲章(株)ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント映画部門日本代表

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トップインタビュー:佐野哲章(株)ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント映画部門日本代表

2009年03月31日
洋画は手を抜いていない

佐野 一回整理しますと、海外でハリウッド映画は大ヒットしています。アメリカ以上の大ヒットです。じゃあ、日本はどうかというと、僕は〝邦画が洋画より上がってる〟と言いたいんです。洋画が衰退したっていうのは、絶対、誰がなんと言おうと、僕は認めない。じゃあ、なんで邦画の方が頑張ってるかっていう論議だったら、喜んでやりますよ。我々メジャー、6社あるでしょう、東和さんを入れて。誰も手なんか抜いてませんよ。みんな必死にやってます。目の色変えてやっていますよ。じゃあ、企画なのか――そういうことじゃない。じゃあ、ビデオが4ヵ月で出るのが早すぎる? それは少しあるかもしれない。でも、誰も手を抜いていないわけです。やっぱり僕は、メディアの力だと思いますね。例えば、すごく乱暴な言い方なので、これ言っていいのかどうかわからないけれども、例えばメジャー6社が、民放を運営できたらなと。――もちろん、できないんですけれどね。

本誌 できませんね。

佐野 例えば米ドラマの「ロスト」や「24」、あるいは「セックス・アンド・ザ・シティ」――あれをゴールデンタイムで流したら、すごい視聴率を取れると思います。そこにハリウッド映画の特番を作って放映できたら理想ですね。

本誌 そうすると、近年の邦画の優位は、メディアにおける邦画と洋画の扱いの違いというようなものになりますか。

佐野 戦略の選択肢です。例えば売りに出てるのであれば、放送局のステーションIDに、邦画のキャラクターを使うみたいに、スパイダーマンを使ってほしい。売ってたら買いたいですね。もちろんそれは戦略的で、作品の放映権はお預けするということでキャラクターを提供する。でもマーケティングにそういう余地がない。メディアミックスの形が狭められてるのは確かだと思います。日本以外は、まずテレビ局が映画を作るということをやっていませんから。必然的にテレビ局が作った映画を、自局で宣伝できるということもないんで、日本以外の海外とだんだん差がついてしまうわけです。

本誌 確かに、邦画の情報をあれだけメディアが流すというのは、本当に日本独自なんですよね。

佐野 そう、素晴らしい戦略ですね。

本誌 まあ、テレビ局がこれだけ製作にからんじゃう国って、ほかにおそらくないでしょうし。いつの間にかこうなってましたね。

佐野 だから、MPAでテレビ局を運営できたらいいよな、と(笑)。

本誌 この1~2年、また各局が映画を作るというのが加速してきましたよね。

佐野 洋画陣営としては――敢えて“陣営”と言うけど、ああいう戦略ができるのはいいなっていう気はします。

本誌 ただ、洋画の場合ってどうしてもテレビ・スポットで、お金をそこに投入して、スポットを買って流すっていうのが、まず基本でありますよね。ほかにいろんなイベントをやる、パブリシティをやるっていうのはあるんですけど、最終的に僕らが目にするのはテレビ・スポット、あるは予告編っていうのが今すごく大きな存在になっていますよね。

佐野 予告編は、もちろん重要ですよ。

本誌 テレビ局のアプローチを見ていると、今までの情報発信――いわゆる番宣というやつです。そこでやるものに、さらにプラスしていくい戦略ですね。公開日の前日にスペシャルをやる、連動させるという方向に、もう加速化してきているわけですよね。これに対して、どう洋画は対抗していくのか――。今まで以上に邦画の情報量は出ている状況ですよね。今後、さらに増えてくるんじゃないですか。番宣なんてものじゃなくて、映画のほうがテレビの番宣化してきている。

佐野 あとは、人気ドラマの映画化というのがあるでしょう。既に相当な知名度があるものが映画になる。アニメも、同じことですね。洋画の場合は、0から100に持っていかなきゃいけないから、やっぱりスポットは必要。その決定的な違いですね。ただ、確かに日本のいい観客が洋画離れしているということは、厳粛に受け止めてはいますよ。たとえば、それが元旦の全国紙に記事になって載る時代になったりしている。

※全文は「文化通信ジャーナル09年3月号」に掲載

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