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インタビュー:木下直哉キノシタ・マネージメント代表取締役

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インタビュー:木下直哉キノシタ・マネージメント代表取締役

2008年11月19日

前野さんは人生の師匠

 ――木下さんは、2006年公開の「I AM 日本人」を第1弾に映画投資を始められたんですが、その時に、製作総指揮を手掛けた森田健作さんが、元東急エージェンシー社長の前野徹さんから「平成の木下藤吉郎がいる」といわれて木下さんを紹介されたと語っていました。前野さんとはどういうご関係だったのですか。

木下 師匠ですね。人間としての生き方を教えていただく、人生の師匠です。

 ――木下さんは、現在43歳とお若いのですが、前野さんとはいつ頃出会われたのですか。

木下 平成8年頃、「経済界」の佐藤正忠先生から、前野先生をご紹介いただいたんです。

 ――生き方のご指南役ということですが、経営のアドバイスも受けているんですか。

木下 経営については「こういうことをした方がいい」という様な相談は受けていません。ただ、経営するにあたっての基礎作りの考え方を伝授されています。ですから、経営について指南されたかというと具体的にはNOですが総合的にはYESです。やはり考え方の基礎を教えていただいていますからね。

 ――前野さんから森田さんを紹介され、どういう経緯で「I AM 日本人」に出資されたんですか。

木下 森田さんといろいろ話し合ったのですが、「今の日本に欠けていることは、こんなことではないか。それを映画にして伝えたい」という思いが森田さんにあり、それに賛同し共感して出資を決めたんですね。それに映画が好きだということが根本的にあるんです。これまでに映画館で6000本から7000本は見ていると思います。あと、テレビやビデオ、DVDの作品まで入れれば1万本近くは見ています。最近はちょっと見るのは減っていますが、それでも年間100本から200本は劇場で見ていますね。

 ――おそらく、これまで日本で公開された本数からすると、最も日本で映画を見ている一人に入るんじゃないですかね。

木下 見る方のランクですよ。東映と松竹の方と話す機会があるのですが、私より多く見ている人は大体1人か2人ぐらいですね。

 ――仕事上であって、映画が好きで見ている人は、案外少ないかも知れませんね。

木下 「疲れた時にどこへ行きますか」という時に、例えば仕事が終わってから飲みに行くということがありますね。私はふらっと一人で映画を見に行くのが好きなんです。それが子供の頃からの習慣としてあるんです。だから、仕事が終った時、今はレイトショーをやっていますから、すごく便利です。かつ、シネコンですから、はしごが出来るんです。

 ――キノシタ・グループのある新宿には2つのシネコンがありますからね。

木下 新宿バルトもピカデリーも遅くまで営業してますから、ありがたいです。それに、新宿、渋谷は単館でレイトショーもやっていますからね。シネコンだけだったら、年間100本はいかないんじゃないですか。大作しか上映していないんですから…。


松竹は友人に紹介され

 ――昨年10月公開の松竹配給「未来予想図~ア・イ・シ・テ・ルのサイン~」(松下奈緒主演)が映画出資第2弾になりますか。

木下 公開時期の違いであって、それ以前に決まっていた作品がありますが、なかなか進まなかったりして前後しています。松竹配給では、「築地魚河岸三代目」「パンダフルライフ」「櫻の園」「鴨川ホルモー」「カムイ外伝」「GOEMON」に出資しましたし、まだ発表されていない作品にも出します。

 ――松竹で言いますと、どういう出会いから出資をすることになったのですか。

木下 迫本さん(淳一社長)も、野田さん(助嗣専務)、松本さん(輝起取締役)も友人から紹介してもらったんですね。

 ――東映とは、どういう関係なんですか。

木下 2000年に開催したうちの創立10周年パーティーに、岡田裕介社長が来ていただいています。当時はまだ取締役だったと思います。ですから、98年ぐらいから岡田社長とは知り合いなんです。

 ――で、吉永小百合主演の「まぼろしの邪馬台国」(08・11)はどんな経緯で出資することにしたんですか。

木下 岡田さんから「今度、こんなのやるんだ」と、〝製作総指揮・岡田裕介〟とクレジットされた脚本をいただき、読んでみたら、なかなか夫婦の映画でいいですね。「母べえ」(08・2)の様な何かを訴える感動作とも違うかもしれないが、ものすごくみんなが忘れている、夫婦で支え合っていく、信頼し合っていくという思いが伝わる映画なんです。これはキノシタグループの一つのテーマとも合っており、もう一つは岡田社長が製作するということで、ぜひともやりたいということで入ったわけです。だから、うちは東映の次に大きな製作費を出資しています。

 ――この映画の原作者であり、竹中直人さん演じる盲目の文学者の宮崎康平という人は九州の生まれなんですが、映画とは関係なくご存知でしたか。

木下 いや、映画の脚本を読むまでは知りませんでした。夫人の宮崎和子さんには、撮影前にお会いさせていただいたんです。逆に、この作品は9月中旬に完成したんですが、業界の評判はどうなんですか。

 ――この原作は昭和40年代に出版され、日本国中に邪馬台国ブームを巻き起こしたわけですが、岡田社長としても今回の映画化で、新たなブームをもう1回作ろうとしていると思いますが。

木下 多少は邪馬台国のブームということはあると思いますが、ただ、映画は基本的に邪馬台国の卑弥呼の話ではありませんからね。邪馬台国を追い求めた夫婦の物語なのです。

 ――夫婦愛がほとんどで、邪馬台国のシーンというのはほんの数分程度なんですね。

木下 この作品を見て注意しなければならないのは、卑弥呼の映画と思われるのはいやなんです。吉永小百合さんが卑弥呼を演じている卑弥呼の映画になってはダメなんです。

 ――際物のように見られる可能がありますからね。ですから、本当の夫婦愛というものを堂々と宣伝していった方がいいと思うのですが、劇場の予告編を見ると、ややコメディチックになっていますね。

木下 9月からスタートしたCMからは、なかなかいい夫婦愛を描いたものになっています。

 ――最初は、綾小路きみまろや柳原可南子といったタレントを使いながら、だんだん本題に入っていくということですか。

木下 最初は、「なんだろう」と思わせて、やがて本題に入っていますので、悪くないと思います。新しい予告編からは本当に夫婦愛をアピールしていきます。今年は「母べえ」の吉永小百合さんに始まって、「まぼろしの邪馬台国」の吉永小百合さんで終りですかね。これまでも「千年の恋 ひかる源氏物語」(04・12)とか、吉永小百合さん主演作は出資とは別にいろいろ応援してきているんです。

 ――「母べえ」にもかかわっていたんですか。

木下 うちは檀れいさんを起用したCMを使っているし、山田洋次監督は大好きですから出資したかったんですが、うちが松竹と出資の話を始めた時は、「母べえ」のスキームはもう決まっていたんです。ですから山田洋次監督の次回作には、ぜひ出資させて欲しいと松竹には話しているんです。


年1本は自社作品製作

 ――木下工務店では、映画への出資の他、支援を行うということですが、「まぼろしの邪馬台国」では「木下工務店はこの映画を支援します」というポスターを作られていますが、ほかにどういう取り組みをされているのですか。

木下 キノシタグループでは、音楽イベントを毎年年間200公演ぐらいやっているんです。今年は〝木下工務店ブレゼンツ〟という名称で、8月から10月までの3ヵ月間、オフブロードミュージカル「ブルーマングループ イン東京」を六本木のインボイス劇場で60から70公演を行い、約5万人を動員する見込みなんです。この他、コンサートや夏のフェスティバルで7~8万人を集めたんですが、その会場で映画のポスター掲示やチラシを配布したりして告知を図ったり、待ち時間にスクリーンで「まぼろしの邪馬台国」のスポットCMを流しています。この他、キノシタグループでは、都内で不動産関連の看板を持っており、「木下工務店はこの映画を支援しています」というポスターをはっています。

(全文は月刊誌「文化通信ジャーナル」08年10月号に掲載)

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