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トップインタビュー:角川春樹 (株)角川春樹事務所 特別顧問

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トップインタビュー:角川春樹 (株)角川春樹事務所 特別顧問

2007年12月27日
東宝好調の要因がわかった


―東宝とのコラボレーションはいかがでしたか。

角川 今まで東宝とやってきたけど、今回が一番良かった。それは東宝のスタンスもそうだし、伊勢プロデューサーは極めて優秀だね。今まで会った宣伝部員の中で一番優秀だったな。忌憚なく口を利くのでいいんですよ。みんな私に対しては一歩引いてしまうんだけども、伊勢くんは引かないものね。はっきりとものを言い、苦言も平気で呈するしね(笑)。
 宣伝としてはもの凄くスタートが遅かったのですが、彼らの意見で感心したのは、「猛暑の夏にスタートしてもお正月の匂いがしないので、9月からやりましょう」と。織田くんにも世界陸上終了直後からスポットをやってもらいましょうというので、そういう意味では、長く宣伝をやると見たような気になってしまうということもあるんですよね。これは自分の中でも「蒼き狼~」の反省がある。今回は伊勢くんから学んだ部分があったよね。そういう意味で極めて優秀だった。細かいことまで必ず了解を取りに来る。それはもう恐ろしいほど細かい。宣伝費のことからなにから予算の組み方から。今回も膨大な宣伝費を出しているわけではないんです。当初7億円かけようと言ったのですが、6億円で充分ですと、そうするとアドバンスが2千万円強ありますと、全部データを出し、とっておきましょうとか。もちろん当たり方によってはさらに追加するというのはあるんだけども、一応それもフォローする予算も組まれていてこれはいいなと思ったね。ここ最近の東宝好調の要因がわかった気がした。非常に神経が細かい。あそこまで細かいのは凄いなあと思ったね。つまり当たるべくして当たっている。もちろん全部当たっているわけではない。昨年の「犬神家の一族」しかりね。結局、作品の力があって宣伝とのバランスが上手く取れているんじゃないかな。作品がまあまあでも当ててしまう。60点でもヒットさせてしまう。つまり80点でなくてもいいというのは凄い。それはマーケットもそうだね。それから非常に宣伝と営業とが上手くいっているよ。

―ターゲットはやはり黒澤作品を見ている世代になるのでしょうか。

角川 自分自身が黒澤作品を見たのは小学校4年生くらいだったんだよね。その時の印象は時代劇でも全く異質だった。三船さんが演じる侍のリアリティを持った凄まじさ、パワーを感じて、それは小学生でも十分理解して感動したんだよね。だから今回も小学生に見せたら95%が面白いと答えた。やはりそう来たかと。公開日までは、従来の黒澤作品ファンであった40代以上を来させる戦略と、そうではない若い層をどう来させるか。間違いなく時代劇なんだけども、むしろバラエティ色を強めて、特に若い女性たちをどう引っ張って来るかという宣伝方法と2パターンに分けてやり、3つ目が要するに小中学生に見せる戦略。佐々木蔵之介が演じた〝押入れ侍〟だとか、そういう笑いを強調したTVスポットを冬休みに入る直前くらいから打って、拡げてみようと思っている。
 TVスポットは、椿と室戸の対決だけで音楽も入れずに、風の音と動悸だけで対決するシーン、刀を抜く瞬間で終わるだけの15秒間はインパクトが一番強いよね。しかもそれをカウントダウンで使おうと。公開まであと1週間、5日間、3日間と。ただそれだけでは危ないからバラエティ色の強いヤツも用意している。特に深夜の時間帯には、それを強めにやる。そういう点では伊勢プロデューサーとのコンビはいい形になったと思うね。どういう結果を生むかはわからないけども。

―手応えは充分感じていると。

角川 正月に子供と一緒に見られるファミリー映画としても成立するのではないか。お母さんたちは血が出ないことにホッとしている。安心して子供と見られるし、子供が見たいと思わせなければ来ない。興収目標の一つの目安としては、松竹の功績なんだけど、「武士の一分」(06年)が40億円の興収をあげた。つまり時代劇でも40億円は行くんだと、だったらそれを最低ラインにして、どこまで積み上げるかを戦略的に考えようじゃないかというところから始めた。ゼロ号試写の時には有楽座チェーンで250館以上のブッキングを東宝と交わしていたんだけども、映画を見て千田専務が日劇3に変えて300館以上でやりますと、その日に豹変した。これは無理矢理私が言ったわけではない。「THE 有頂天ホテル」のファーストランが6週間だったから、今度は7週間で行きますと。しかも12月1日から行きましょうと言い出した。
 伊勢くんが心配したのは、正月作品に対抗馬がいないこと。つまり大作がなく、映画界全体が盛り上がらないのではないかと。でも、織田裕二主演ということもあってのことだけども、かなり浸透していると思う。40代以上は黒澤作品のリメイクということで比較して見たいというのがあるわけだから、まずこの層の足をいかに劇場に運ばせるかだね。

―因みに、東宝が「隠し砦の三悪人」をリメイクすると聞いた感想は。
角川 「えっ!?」といった感じ。こちらも狙っていた一本だったからね。第三弾くらいでやりたいと思っていた。しかしリメイク権料が高いからみんなやらないだろうと思っていたら、東宝がさっと手をつけたからね。さすが東宝だなと思ったよ。油断も隙もない(笑)。自分としてやりたかったリメイクは4本あって、「七人の侍」「椿」「用心棒」、そして「隠し砦」。だからちゃんと「隠し砦」は当てて欲しい。まあ全てはこの「椿」の結果次第なんだよね。東宝は明快だから。


「椿三十郎」作品概要
製作総指揮:角川春樹   監   督:森田芳光
脚   本:菊島隆三・小国英雄・黒澤明
原   作:山本周五郎「日日平安」(ハルキ文庫刊)
出   演:織田裕二、豊川悦司、松山ケンイチ、鈴木杏、村川絵梨、佐々木蔵之介、風間杜夫、西岡徳馬、小林稔侍、中村玉緒、藤田まこと 他
製   作:角川春樹事務所、東宝、エイベックス・エンタテインメント、テレビ朝日、
       朝日放送、メ~テレ、アイ・エヌ・ピー、フィールズ、TOKYO FM、ビッグショット
       12月1日(土)より全国ロードショー。東宝配給

ストーリー
ある藩で、九人の若侍たちは、上級役人の汚職・不正を暴くために立ち上がったが、逆に悪人の手によって、絶体絶命の危機にさらされた。その時、一人の浪人が現れ、九人の生命を救った。彼の名は、椿三十郎。正義を貫こうとする若侍たちの純粋さに、心打たれた三十郎は、若侍たちと共に巨悪に挑むことにするが、彼らの前には幾多の困難が待ち受けていた…。


会社概要
社  名:株式会社 角川春樹事務所
住  所:〒101-0051 東京都千代田区神田神保町3-27 二葉第1ビル
役  員:代表取締役社長 大杉 明彦
       代表取締役常務 海老原 実 
       取 締 役 丸山 尚人 広告宣伝部担当
       取 締 役 繁松 徹也(社外取締役・フィールズ株式会社)
       取 締 役 伊藤 英雄(社外取締役・フィールズ株式会社)
       常勤監査役 大谷 栄二
       監 査 役 松原  治
       監 査 役 鈴木 章夫
       執 行 役 員 原  知子 書籍編集部長
       執 行 役 員 和田知佐子 雑誌編集部長・「美人百花」編集長
       執 行 役 員 大川 伸明 M&L事業部担当
       執 行 役 員 加治かおる 「BLENDA」編集長
       執 行 役 員 馬場 麻子 「Popteen」編集長
       執 行 役 員 松井 一浩 映像事業担当
       執 行 役 員 相沢 美帆 営業部担当
設  立:平成7年9月12日(平成8年10月1日付にて合併・新会社に変更)資 本 金:7億5,730万円
年間売上:46億円
従業員数:54名
業務内容:1. 出版事業(単行本、文庫本、雑誌)
       2. マルチメディア事業全般
       3. 映画、ビデオの企画制作


角川春樹 (かどかわ・はるき)
 昭和17年(1942年)1月8日、富山県生まれ。俳人・国文学者である父・角川源義が、終戦後創業した角川書店に、國學院大学文学部卒業後入社。昭和50年、源義没後、最年少で出版社社長に就任。「読んでから見るか、見てから読むか」というキャッチフレーズを流行させ、映像と活字のメディアミックス戦略を考案。文庫の大量販売を実現し、社を大きく発展させた。同時に、今日の俳句界に多くのものをもたらす。平成5年、向精神薬取締法と関税法違反の容疑で逮捕、角川書店の経営一切から離れる。平成7年、新生出版社・角川春樹事務所を創業。実刑判決による服役を終え、平成16年4月8日仮釈放となる。平成18年、「男たちの大和/YAMATO」で映画界に復活した。

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