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トップインタビュー:佐藤直樹日活社長

2007年05月30日
若手女優作品を揃える

 ――タイトル本数としては中規模作品が中心でしょうか。

佐藤 老舗日活、95周年を迎えた日活ですが、これまでとは違うカラーを打ち出したいと考え、いま業界で若手スターと言われている女優さんの主演作品を揃えてみました。上野樹里さん主演「奈緒子(仮)」(監督古厩智之/08公開)、堀北真希さん主演「ARCANA~アルカナ~(仮)」(08年公開)、夏帆さん主演「あたしが産卵する日(仮)」(監督田中誠/08年春公開)、ハイティーン、20代の方もいらっしゃいますが、新鮮なラインナップになったと思っています。


 ――中規模作品というのは、原則的に自社配給でしょうか、それとも大作と同じように他社の配給になるのでしょうか。

佐藤 中規模作品に関しては、考え方を2つ持っています。いま、大きいマーケットを持っている東宝さん、松竹さん、東映さんはどうしても大きいサイズのタイトルを求めています。大作に関しては、自社のマーケットではなく、外部の強いマーケットを持っている方々と組み、中規模タイトルは、自社で手掛けるもの、他社と組むものの二通りの考え方で進めていきます。先程も述べた様に、日活は川上の機能を強化すると明言し、着々とその作業を進めて来て、次はディストリビュートという機能を強化していきたいと考えています。と申しますのも、私が来るまでの日活は、洋画の買い付け、配給を映像事業の大きな柱としていました。しかし、残念ながらヒット作と言えるのは「ブエナビスタ・ソシアル・クラブ」(’03)ぐらいでしょうか。この配給の部分を強化していくと、映画会社らしい、自社で企画し、自社の撮影所で作り、自社でディストリビュートするということができるのかなと思っています。これを日活として、一日でも早くできるようになることが、一つ大きなテーマです。いま、映画業界は、テレビ局さんもそうですし、同じ配給会社さんとうまくコラボレートすることで商品価値を上げていく、ヒットの打率を上げていくということが一番オーソドックスなやり方になっています。日活単独で、すべてのタイトルを回していくことは考えていません。さまざまな方々と提携関係、より強固なパートナーシップを作っていくことによって、日活自身のスキルアップをはかり、業界に貢献していきたいと考えています。


 ――今回発表したラインナップのタイトルは自社企画ですか、それとも外部からの持ち込みですか。

佐藤 ほとんどが自社企画になります。もちろんかつての仲間たち、プロデューサー連中からもいくつかの企画の持ち込みはありましたし、今回発表しきれていない開発中のストックもあります。ただ、日活は若手のプロデューサー・チームが育ってきていましてこういう連中から上がって来たタイトルも今回発表したラインナップには入っています。持ち込み企画としては、私が在籍していた角川グループの角川出版映像事業振興基金信託が実施している日本映画エンジェル大賞受賞作を映画化する「ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ」(08年公開/日活配給)が、市原隼人クンが主演してすでにクランクインしています。デジタル・フロンティアというプロダクションからの持ち込み企画だったのですが、角川原作、角川キャンペーンタイトルが期せずしてクランクインしたというのは、何かのご縁かなと感じています。


 ――これは角川との提携を結んでいこうというタイトルなんですか。

佐藤 いえ、提携というのではないのです。もちろん角川歴彦会長には大変お世話になり、いまもお時間のある時にお話をさせていただいたりという機会は設けていただいています。ご一緒させていただける企画があれば、こちらからもどんどん提案させていただきたいと思っています。私が日活の社長に就くに当って業界の皆さんおっしゃっていたじゃないですか。「角川から送り込まれた」と。「違います!」ということを日活の社員にアナウンスするだけで2~3ヵ月かかりましたからね(笑い)。提携ではないのです。ただ、非常に強い力を持つメディア・グループであることは間違いありませんから、ご一緒させていただく機会はもちろん東宝さん、松竹さん、東映さんテレビ局さんに働きかけるように角川グループさんに対しても働きかけていこうと考えています。


 ――若手監督作品というのは?

佐藤 先程の「ネガティブハッピー~」は北村拓司氏という新人監督の初監督作品です。2005年にACCゴールド賞を取ったCMディレクターで、元松竹大船の鎌倉映画塾出身なのです。先日現場を見に行ったのですが、とても仕切りがよくスタッフを引っぱって行く力もある新人監督です。また、4月28日公開の市川準監督作品「あしたの私のつくり方」(成海璃子主演)の原作・脚本も新人の真戸香さんなのです。市川作品は興行的になかなか難しいというのが定説になっていました。今回は非常にみずみずしい、中学生から高校生へ移りゆく女の子の心理がとてもうまく描かれています。試写でご覧いただいた方からは高い評価をいただいています。そういった意味で、決して大きいタイトルではありませんが、若くてチャンスを求めている才能たちと一緒に映画を作る作業はすでにスタートを切っています。














































佐藤直樹社長 略歴
1963年3月21日生まれ、北海道函館出身。日本大学文理学部卒。86年JAVN(ジャパン・オーディオ ヴィジュアルネットワーク)入社。88年東京ケーブルネットワークプロダクション入社、90年大映入社。02年角川大映映画転籍(大映営業権譲渡に伴い)。04年角川映画企画製作本部企画製作グループ部長、05年角川映画取締役企画製作担当、05年11月1日 日活社長就任。

(全文は月刊文化通信ジャーナル07年5月号に掲載)

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