トップ緊急インタビュー:平沼久典東宝東和社長
2007年05月07日
本誌 製作出資みたいな話はなかったのですか。平沼 そのときは、なかったですね。だから、その時点では、条件が合わなかった。うちと前後して、ユニバーサルは、配給会社数社と話し合いをもったと聞いています。とにかく、相当回ったみたいですね。
本誌 そのあたり、どういう会社を回ったかというのは、だいたい聞いています。平沼 そうでしょうね。それで、いったいどうするんだろうかと、見守っていた。だけど僕らが思っていたのは、配給組織のない会社がユニバーサルと契約しても、配給はうちにくる可能性はゼロではないと思っていたわけです。ですから、そのときの話はそのままになっていました。
本誌 どなたが、そんなにたくさんの会社を回っていたんですか。平沼 NBCユニバーサル・インターナショナルの福田太一日本代表が、ユニバーサルの人たちを連れて回っていましたね。NBCユニバーサルは、GE(ゼネラル・エレクトロニクス)の子会社です。
本誌 確か、ユニバーサル・ピクチャーズは、NBCとビベンディ・ユニバーサルが合併してできたNBCユニバーサルの一事業部門です。その上に親会社のGEがいるわけですね。平沼 GEって、資金が豊富にあるじゃないですか。だから交渉の段階で、配給会社を買ってしまうという話になるのかなと、そういうことも考えていましたね。つまり、僕らが考えているような次元ではないのではないかという気もしたんです。でも、日本みたいな特殊な地域は、これから配給会社を買うといってもなかなか難しいこともある。
本誌 つまり、一度両者の話し合いは滞っていたわけですね。 ■一度話は滞っていた平沼 そうです。確かに、滞っていました。だけど、配給会社はどうするんだろうとは思っていたわけです。だからもう一度、配給の件を聞いてみようとは、松岡(宏泰)君とは話していたんですね。そうしたら、その時点でも配給は決まっていないことがわかった。配給が決まらない以上、何もまとまっていなかったということですね。そうこうするうちに、やはりうちでやってくれないかということになったわけです。最終的には、完全な委託ということではないんだけど、うちがやることで決まりました。
本誌 完全な委託ではないというと。平沼 契約の詳しいところまでは、言えないですね。
本誌 ユニバーサル・ピクチャーズ・インターナショナルという、ユニバーサルの海外配給統括部門があるのですが、東宝東和はそことの契約となるわけですか。平沼 そんなような格好ですね。
本誌 すでに、配給作品が決まっていますね。平沼 秋公開の「ボーンアルティメイタム(仮)」が決まっています。これは、「ボーン・アイデンティティ」「ボーン・スプレマシー」に続くシリーズ第3弾です。日劇1系で予定されています。うちが扱うのは、米国公開が2007年夏から、08年の終りまでの作品が対象になっています。現在ユニバーサルが提示している作品は、全米でこの年末までに公開されるものが6本あります。日本での公開規模は、Aロードが「ボーン~」入れて4本、Bロードが2本ありますね。
本誌 契約期間があるんですね。平沼 1年半の間に米国で公開されるものを全部扱ってくれということです。ただうちがやれば、2年かかるかもしれませんね。実際的には。
本誌 それ以降は、どうなりますか。平沼 結果次第でしょうね。うちの社員に言ったんだけど、今回の契約によって会社の規模を大きくすることだけはしないと。1年後、2年後、どうなるかわからないわけだから。買い付けも従来どおりやっていきますしね。その方向性は変わりません。
本誌 ユニバーサル専門の会社ではないということですね。平沼 そうなったら、ちょっと困りますよ。ただ、社内にどういう対応をするかは、これから考えます。人を急に増やしたりするとかはしないつもりです。
本誌 宣伝の人員は、増やさないといけないんではないですか。平沼 いろいろな会社にお願いすることになるかもしれませんね。これだけ本数があるとね。ただ、それもこれからですよ。
本誌 UIPがブッキングをしていた作品で、すでに宣伝会社が決まっているものもあるんですけど。■UIPとは同じことをしない平沼 そうですね。そのあたりをどうするかも含めて、これからですね。ただ宣伝費も含め、これまでのUIPとは同じことはしません。これは、はっきりと相手側に言ってあります。うちは日本として、独自の配給を行っていく方針です。
本誌 宣伝費は、向う持ちになるわけですか。平沼 完全にリクープできない場合は、そうなりますね。ただ宣伝費は、うちがコントロールしていかないといけないと考えています。
本誌 今のUIPのスタッフを、東宝東和が引き取るということはないわけですね。平沼 それは、ありません。ただ、当社の組織を少し動かすことは考えています。作品が増えれば、字幕関係のスタッフも増やすことがありますし、一番大きいのは宣伝ですね。宣伝は、どことどう組んでいくかが、ポイントになります。
(全文は月刊誌「AVジャーナル」07年4月号に掲載)