トップインタビュー:岡田裕介東映(株)代表取締役社長
2007年02月28日
■ノーマルな会社に移行――今回の株の売却に伴いテレビ朝日が筆頭株主になったわけですが、今後東映はどういう会社になっていくのでしょうか。岡田 ノーマルな会社に移行していきます。何が一番変わるのかと言うと、これまでは東映興業不動産をはじめ子会社が東映の株を33%持っていたため、僕は事実上オーナー社長だったわけですが、これがサラリーマン社長になったということです。株主さんが私を首にすることも可能になりました。
――テレビ朝日から東映に役員が来るということもあるのでしょうか。岡田 まだ、全然考えていません。株の処理が全て終わってから考えていこうと思っています。
――テレビ朝日との関係強化のため、さらに株を買い増してもらうということはお考えなんでしょうか。岡田 東映はテレビ朝日の株を16%保有しているわけですが、テレビ朝日に東映の株をこれ以上(11・3%)持ってもらってもね…。
――この自社株の処理に関連して、東映をホールディングス会社にしようということは考えなかったのですか。岡田 ホールディングスというのは、今の流行というだけで僕は後々破綻すると思っています。アメリカが、TOBとかM&Aとかでホールディングスがいいということで取り入れたわけですが、どの会社もモチベーションは落ちていますね。僕は、当面様子を見させてもらおうということだね。やはりホールディングスが良い事だということになっても一番後でいいと思っています。今からあせってやる必要はないし、逆に崩壊してくると思っています。むしろ今は、上場を廃止したいと考えている会社が増えているんじゃないのかな…。
――東映はここ数年、決算発表のたびに映画部門さえ良かったらもっといい会社になっているとお話になっています。06年の年間興行収入は「男たちの大和/YAMATO」(興収50億9千万円)「明日の記憶」(22億円)が好稼動し、133億2192万6950円を記録。興収発表移行以来、最高の成績をあげたわけですが、これをどう発展させ、伸ばしていこうということなんでしょうか。岡田 基本的に僕が社内で言っていることは、ちゃんとした映画を製作していくということであり、きちっとしたお客様に喜ばれる映画を製作して一本一本勝負していく配給・宣伝体制を構築していくということです。
――それに関連することでしょうか、昨年別系統への配給形態として“TOEI α(アルファ)”を立ち上げ、邦画系番組に加えて配給本数を増やしていこうということですか。岡田 邦画系のワンチェーンだけだと、大きい映画しかやっていけなくなります。企画は面白いが、邦画系の規模ではないという映画もあります。いまプロデューサーや監督を育てるフィールドを作っていないとダメなんじゃないか、フリーブッキングで公開していく小さい映画を製作できる幅を東映が持っていないとダメだと考えています。先程の様に、前から“映画さえ良くなればこの会社はやっていける”と言っているわけですが、一本ぐらいコケてもやっていける体制なんです。後は映画を一本一本丹念に売っていく、繰り返しによって新たな信用を付けていくことが大事だと思っています。
――“TOEI α ”では、3年前に芸術職研修制度をスタートさせ、助監督や脚本家、プロデューサーの若手を今後積極的に登用していこうということですか。岡田 そう、どんどん作っていけと言っているんです。キャリアとフィールドを与えてあげないと伸びてこないよね。そして駄目な者はどんどん辞めてもらうしかない。6年契約で採用したわけで、彼らに早く発表の場と機会を与えてやらないと…。
――これまで助監督は何人採用していますか。岡田 前後2回に分けて採用し、合計4人の助監督がいます。
――TVドラマを含めてまだ監督になってはいないですね。岡田 そんなに早くなれるわけがない…。
――脚本家はどうですか。岡田 6名採用していますが、プロデューサーに助けられながら、TVドラマ(「相棒」「はぐれ刑事 純情派」)を全員が書いています。シナリオライターの方がわりと早くものになりますね。
――具体的に“芸術職研修制度”採用者の監督をデビューさせる企画は動いているわけですか。岡田 ない。どんどんやれよと言っているんだけれどもね。企画が上がってこない。その辺の風通しがうまく行っていないのかも知れないが、若者なのに覇気が無い…。
――言われないと動かないということですか。岡田 映画の企画なんて言われなくてもどんどんあふれてこないと…。俺を突き上げなきゃいけないのに、俺が引き上げてたんじゃ仕方ない。
(全文は月刊誌「文化通信ジャーナル」2007年2月号に掲載)