トップインタビュー:久松猛朗(株)衛星劇場社長・(株)デジタルマガジン社長
2006年09月05日
――3Gというのはどういうことですか。久松 Gはジェネレーションのことです。以前の携帯がセカンド・ジェネレーションで2Gと言われ、現在のFOMAは3Gであり、3・5Gは4Gとの間にあるわけです。3・5GでHSDPAにより高速の通信が可能になります。
――HSDPAというのは何んですか。久松 ハイ・スピード・ダウンリンク・パケット・アクセスです。従来の約10倍の通信速度を実現するということです。インターネットの世界が電話回線からADSLになり光ファイバーになりました。携帯で言うと、3・5GはADSLであり4Gは光ファイバーということでしょうかね。
――急速に伸びている業界ですから、現在の産業規模をひと言で言うのは難しいかもしれませんが、昨年の携帯コンテンツ産業というのはどのくらいの売上があったのですか。久松 総務省の発表では、2005年のモバイル市場は、7224億円で前年比39%増。そのうちコンテンツ市場が3150億円で前年比21%増となっています。
――業界のリーディング・カンパニーはあるわけですか。久松 携帯に於ける動画の配信ビジネスでは、まだ大きなプレイヤーはいないですね。インターネットでは、yahoo!やGyaOがありますが、携帯では巨大な企業はまだないです。ただ、大手の出版社やテレビ局などが新大陸を目指しており、我々も手をこまねいているわけにはいかないので船出しようということなんです。現在、国内の携帯契約台数は9000万台と言われており、何年か先にはほとんどの携帯で動画が楽しめることになります。これは間違いなく花咲くビジネスになります。
衛星劇場は長期的経営 ――衛星劇場は、前期65億円の売上をあげ松竹の子会社としてはナンバーワンの利益を計上したわけですが、今後どのような方針で経営されていくわけですか。久松 順調に来ている会社であり、早急に何かしなければならないということは考えていません。ただ、ブロードバンドやVOD(ビデオ・オン・デマンド)が伸びて来ている今、厳しい競合に直面する可能性のあるメディアだと認識しており、長期的な視点に立った準備はしておく必要があると考えています。それにもう一つ、最近の業績が良い主たる要因に韓流がありますが、韓流がいつまで続くのか、いずれピークを迎え沈静化してくる時に、代替えとして何があるのか今から考え準備をしておかなければならないのかなと思っています。だから短期的なことよりも、長期的な戦略をどうするかだと考えています。
――社長を兼務して製作担当になられたわけですが、衛星劇場が幹事会社になり映画製作をするという事は考えていませんか。久松 製作をどうするかは今後の大きな課題の一つだと思います。本来はCS放送業ですから、その放送用に何かオリジナル作品を作っていく方向性はあるかなと思います。ただ本篇を衛星劇場が幹事になって製作するというのは、本来の業務と違っているので、むしろ出資をしていろいろな方とお付き合いをしていく方がいいと思います。本篇の製作は本社の映像企画部が今後いろいろと体制を変えて製作に取り組んでいくと思いますので映像企画部と連動・協力する形で位置づけられればいいのではないかと思います。むしろ、先程のデジタルマガジンもそうですけれども、本篇以外のCS放送用のコンテンツ製作を強化していこうと考えています。
――衛星劇場では、これまでホラー物などオリジナルドラマを製作していますね。久松 近々、リサーチを実施しようと考えています。いま契約している方々が衛星劇場の番組をどのように思われているのか、あるいは解約をされていく方々がどのような考えで解約をされたのかということを。
――一般視聴者に対するリサーチですか。久松 ええ、早急にリサーチを行って今の編成に対してどのようなご意見をお持ちなのかを伺って、番組編成に取り入れていきたいと考えています。現在の番組は、映像企画部が製作する年間5~6本の新作と衛星劇場が出資した作品、それに韓流作品や台湾製の華流作品に旧作の日本映画を放送しているという状況です。例えば「男はつらいよシリーズ」や「釣りバカ日誌シリーズ」はウィークエンド・シアターという形で好評を博していますが、延々と続けると飽きられます。これまでは映画やテレビドラマ合わせて数千タイトルを保有する松竹のライブラリーを使って編成担当者が苦労してやり繰りして来たという状況だと思いますが、やり繰りもいずれは早晩限界が来ます。プロダクションなど外部からの作品調達には限りがありますし、オリジナルドラマの製作ということは有意義だろうと思います。衛星劇場というクローズドの会員の方々に満足していただけるコンテンツが作れたらそれはたぶん2次的利用、例えばDVD発売だったり、もしかしたら地上波の深夜帯で放送できるかもしれません。
(株)デジタルマガジン会社概要
社 名 (株)デジタルマガジン
資 本 金 3,000万円
(出資比率松竹60%、三井物産40%)
代表取締役 久松猛朗(松竹)
取 締 役 伊東森人(松竹)
森内 譲(三井物産)
監 査 役 岩崎敏久、松山信義(松竹)
冨木 誠(三井物産)
本 社 東京都千代田区神田錦町3-26
八ツ橋SIビル10F
電 話 03-5217-4852
(全文は月刊誌「文化通信ジャーナル」2006年8月号に掲載)