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トップインタビュー:椎名保・アスミック・エース エンタテインメント社長/(株)角川エンタテインメント

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トップインタビュー:椎名保・アスミック・エース エンタテインメント社長/(株)角川エンタテインメント社長

2006年06月30日

――豊島さんを後継者に選ばれた理由を教えて下さい。何を求められているのでしょうか。

まず彼はアスミックAEの一期生で、彼と一緒にこの会社をスタートさせたわけです。そういう意味では20年近く付き合っていて、少なくとも僕の考えていることは全部わかっているはずだし、僕も彼のことよくわかっているつもりです。それが一番大きい。それから彼は常にクリエイティブな面を持ちながら、新しいものを探求しつつ、ビジネスの数字もきちんとできる人。そのバランスと若さがうちのようなソフト会社にはこれから必要だと思いました。

――でも、昨年からドリームワークス(DW)作品を配給するなど、次へのステップを踏み出しただけに、まだまだやりたいことはあるのではないですか。アスミックAEで何かやり残したという思いは。

僕はクリエイティブなところには限界を感じていますし、正直、外国映画の買い付けとか、邦画を作っていくとか、宣伝するとかはもういいかなあと思っています。もっと違う部分でやることがあるのではないかと。例えば、他社とのパートナーシップを構築していくとか、海外との交渉は僕がやった方がいいと思っています。

――そうなると、今後はより角川Eの方に注力されていくということですか。

角川Eの仕事はいま面白いですね。これまでも自分はビデオの仕事もやってきましたが、ここ2、3年、新たにセルの市場というのが成長しつつあって、ビデオのパッケージ・ビジネスは変わってきています。そこに面白味がある。結局、僕が今までやりたくても出来なかったことがあるのは、作品が弱かったから。やはりメジャー作品というのが何百タイトルもあって、ハリウッドのメジャーによって市場が牽引されていましたが、その中で角川Eではハリウッドメジャーが持っていない日本映画とか、アニメとかいろんな作品を持ってきています。それでまた、ハリウッドの方が逆にローカルプロダクションに力を入れ始めている現状がありますね。そういう意味で対等に勝負できるようになってきたということです。

■ユーザーの目線に立つ

――角川Eの2年目は、目標の売上150億円を達成したということですが、最終的な売上、経常利益はどれくらいですか。また3年目の目標は。

売上は152億円で、経常利益は6億円です。3年目の売上目標は正直、現状維持ですね。3年目は売上を伸ばすというよりも、もっと中身をよくしたい。質的なものを。もちろんそれは収益率を上げていくということです。もっとマーケティングの方に力を入れたいですね。

例えばセルだったら返品率を下げる。出荷を抑えながら、追加の注文を受け、売上を伸ばしていく。それをするためには、お店で宣伝をやるとか、中身を充実させ、作品の力とマーケティング力と分析をきっちりとやっていって収益の拡大を目指します。それをやれれば、たぶん来年には作品ももっとマーケットにあったものを出していけるのではないでしょうか。今は角川Eというのは、グループの中での販売拠点ということになっていますが、それは受身なんですよね。こっちから発売元の方へ仕掛けていって、知恵を出せていないところがまだまだある。営業マーケティングのスタッフを増やしていき、50人体制くらいにしたい。

――具体的にはどういった展開をされようとしているのでしょうか。

今まだどこに行けばDVDが買えるのかというのがはっきりしていないと思んです。もちろんネット通販、アマゾンみたいなものがあって、これには当然コアな層がいるわけですが、そういう人ではなく、街を歩いていてどこで買うかとなった時にはっきりしない。ファミリー映画なんかはコンビニなんかで買えば良いし、そういうのは段々定着してきていますが、もっと日本映画の旧作などがどこに置いてあるのかが、ユーザーの方もはっきり見えてない。そこをわかりやすくすることが大事なのではないでしょうか。例えば角川コーナーを作ったりしていますが、お客さんの目線に立った、きめ細かな販売を目指したい。

――そういった展開に対してお店、卸し業者の反応はどうですか。

やはりね、4月12日に角川大映撮影所で行ったコンベンション、「06~07ラインナップ発表会」が大きかったですね。これだけの新しいタイトルがある、リリースしていく、それからかこんな作品も持っているということが伝わり、この会社を重要な相手だなと認識してもらえたようです。いろいろとこれからは角川Eのコーナーも作りましょうとか、そういう風に一目置いてもらえました。撮影所でやったのが大正解でしたね。1月末に角川大映の新しいスタジオが出来て、その時にここで出来ないかと黒井さんに相談したら、それは面白いということで、彼の腕力で強引に開けてもらいました。

――やはり昨年からDW作品がラインナップに加わったことも大きいのではないですか。

それは大きい。マーケティング力が変わり、見えないものが見えてきました。つまりある限られた本数しか売れなかったものが、それを超えて市場に出した時に、その市場が見えてきたんです。DW作品の契約はとりあえず継続なので、ビデオ・DVDの方も今のところ出していけます。

■グループの美しい姿

――しかし一方で、6月に椎名さんは角川ヘラルド映画の常勤取締役に就任するという噂も伝わってきています。本誌が発行されている頃には明らかになっているかもしれませんが、仮にそうだとすれば、将来的に角川グループの映像事業を一手に率いていくのではないかと推測してしまいます。

それはまだわかりません。そういう風にいう人もいますが、それはわからない。1年後、2年後はわかりませんよ。ただ何で、グループ内に3つも映像会社があるのかというのが分かりにくい。たぶんもうちょっとすれば見えてくるんですけど、要はまだ角川の映像部隊の再編が現在進行形なんですよね。あなたが言うように角川E、アスミックAEをどうするのかという話になってきてしまいますから難しいんですよ、今のままだったら。だからこれが、もっとわかりやすい形になってくれなければはっきりしたことはわからないですね。

(全文は月刊誌「文化通信ジャーナル」2006年6月号に掲載)

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