閲覧中のページ:トップ > 文化通信バラエティ > インタビュー >

インタビュー:野田助嗣松竹(株)専務取締役(映像本部長)

インタビュー

最新記事

インタビュー:野田助嗣松竹(株)専務取締役(映像本部長)

2006年05月01日
■プレミアム席90席作る

――当初、スクリーン数は12という案を聞いていましたが。

野田 スクリーン数については、フレキシブルに考えていて何を優先したのかと言うと、全体のビル収支とシネコンの稼働率です。たしかに12スクリーンという案もありました。テナントを一斉入れずに完全なシネコンビルにするという。ただ、その時には新宿全体のマーケット│東映(ティ・ジョイ)さんと東宝さんが共同経営するシネコンが07年2月オープンするのは分っていましたが、三和興行さんが経営する映画館はどうなるのだろうということがありました。我々の予想は今回はずれたのですが、スクラップ&ビルドとして新宿スカラ座3館は閉館される様ですが、新宿文化シネマの4館は他の会社が借りることでいま話が進んでいるようです。そうすると新宿3丁目地区は、松竹が12スクリーンであれば、3サイトで25スクリーンというのはちょっと多いのではないか。どのスクリーン数が一番効率が良く、稼働率が上がるのかを全社的に検討した結果、出て来た数が10スクリーンです。

――新宿、銀座、渋谷というターミナルの中で、初の10スクリーンを越えるシネコンとなりますが、なにか特長となる設計はなさっていますか。

他のシネコンとの差別化を図る構造にする狙いから、一番大きな劇場の1番スクリーンにはプレミアム席を作ろうと考えています。座席数90席ぐらいのバルコニー席で、動線もまったく1階のお客さんとは顔を合わせないという非常にグレードの高いプレミアムシートを作る計画をたてています。

――そのプレミアム席はどのくらいの入場料金を考えているんですか。

野田 いま料金は検討中です。ただ新宿という土地柄でも必ず、プレミアム席を希望するお客様はいらっしゃると思います。一番大きな劇場は、その時々に一番稼動している作品を上映するわけですからカップルなり、シニアの方なりグレードの高い席で鑑賞したいというお客様は必ずいらっしゃると思います。我々が考えている稼働率が上がれば有楽町マリオンにも導入できます。丸の内ピカデリー1・2には2階のバルコニー席がありますからね。まず、「新宿」でどのくらい料金を取ればリーズナブルなのか、どのようなサービスが出来るのかを見ながら、他の劇場へも採用していくマーケティングになります。

――プレミアム・シートは一番大きな劇場ということですが、何席ですか。

野田 これはあくまで予定ですが、635席でそのうち90席がプレミアムです。

――他の劇場はどのくらいですか。

野田 まず、ビルの地下1階から地上2階までがテナントが入り、3階が映画館のロビー・コンセッション、4階フロアから12階フロアまで映画館が入ります。1番シアターは先程申し上げた635、2番が287、3番が301、4番が227、5番が127、6番が157、7番が115、8番が127、同じく9番が 127、10番が157でトータル2260席というのが、現在の予定席数です。

■代替館は歌舞伎町5館

――現在の新宿松竹会館は5月14日(日曜)の営業を最後に閉館するわけですが、ピカデリー1~3の代替館は決められたんですか。

野田 一応、東急レクリエーションさんのシネスクエアとうきゅうを除いた3館とヒューマックスさんが経営されている2館が代替館になります。ピカ1系、ピカ2系、プラゼール系、サロンパスルーブル系の5系統の作品は歌舞伎町でとりあえずブッキングはできます。

――「新宿」のシネコンを作るに当って、何か他にも転用できるような設計にすると聞いたのですが。

野田 そうなんです。新宿はこれからいろいろなマーケットの変化というものが当然考えられますね。東レクさん、東宝さん、ヒューマックスさん、東亜興行さんの4 社によるシネコンを入れた歌舞伎町の一体開発計画があり、同じゾーンに伊勢丹さんをはさんで松竹のシネコンと東映(T・ジョイ)さんと東宝さんのシネコンがあるわけですから、はたしてあのマーケットで3サイトものシネコンがあった時に、どうなるか予測がつかない部分があります。そしてこれ以外にも、例えば新宿の駅ビルや南口の開発で新たなシネコンができないとも限りません。そういった周りのマーケットの変化、状況に対応して、ほかに転用できるような構造にしておこうということなんです。

――具体的にはどういうことですか。

野田 各フロアに床さえ作れば、ほかの業種に賃貸できる建物に変えられるという設計構造になっています。例えば、一番シアターの所も3層になっているわけですから、プレミアム・シートの所から反対側まで床をつけるという具合になります。

――スタジアムもすぐ取りはずせるわけですか。

野田 それはどこのサイトもすぐに取りはずせるようになっています。たしかにコンクリートは打っていますが、中はがらんどうですからたやすく取り外せる構造になっています。

――08年9月竣工予定ですが、具体的な番組編成では、丸の内との既存のチェーン作品だけでなく、純粋に新宿がメイン館になることもありますか。

野田 と思います。六本木のヴァージンTOHOシネマズさんのように、作品によってはこの新宿のシネコンをフラッグシップにして全国展開していく作品もあると思います。新宿がメインの客層の作品であれば、新宿をフラッグシップにすることは当然、配給会社でも視野に入れているであろうし、充分考えられることです。

■年間興収22億円目指す

――10スクリーン・2260席ということですが、年間売上はどのくらいを見込んでいるわけですか。

野田 シュミレーション上では、稼働率を35%と見ていまして、年間興行収入で22億円、コンセッション収入を含めて27億円を目標にしています。

――直営館の場合、1スクリーン2億円ということですか。

野田 そうです。これはあくまで死守したいと思っています。ここまでの売上が見込めなかったらもちろんGOはしません。1スクリーン2億円を上げられる自信もあるし、それを元にシュミレーションしています。

――館名はMOVIXにするのか、ピカデリーにするのか、決めかねているそうですね。

野田 これは一つにMOVIXブランド―要するに松竹グループが今後作るシネコンは全てMOVIXに統一するという考え方です。ただ、これは業界だけで通用するブランドで、一般の方がMOVIXイコール松竹というふうに思っていただけるのかがあるのです。やはり松竹らしい館名としては、丸の内ピカデリー、渋谷ピカデリーがあるように、新宿にも当然ピカデリーだろうという意見もあるわけです。幸いにして時間はありますから、これはキチッと議論をして、合意を得て決めたいと考えています。

――いずれにしても、この2つのうちのどちらかということですね。

野田 そうなると思います。

――京都はMOVIXで成功したわけですね。

野田 MOVIXという館名にすれば、顧客のデータやいろいろなシステムが一本化できるというメリットがあるわけです。MOVIXにするのか、ピカデリーという名称を残していくのか二者択一の議論になるのかなと思っています。

(全文は月刊誌「AVジャーナル」2006年4月号に掲載)



 <<  | <  | 1 | 2 

過去のタイトル一覧

2024年

2月│ 3月

2023年

3月│ 5月│ 7月│ 9月│ 10月│ 12月

2022年

3月│ 4月│ 7月│ 8月│ 10月│ 12月

2021年

1月│ 2月│ 3月│ 4月│ 6月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月

2020年

2月│ 4月│ 5月│ 10月│ 11月│ 12月

2019年

2月│ 7月│ 12月

2018年

1月│ 3月│ 4月│ 5月│ 6月│ 9月│ 11月

2017年

2月│ 4月│ 10月

2016年

2月│ 3月│ 5月│ 9月│ 11月

2015年

1月│ 2月│ 6月│ 7月│ 9月│ 10月│ 12月

2014年

1月│ 2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 6月│ 7月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月

2013年

2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 6月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月

2012年

1月│ 2月│ 3月│ 4月│ 6月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月

2011年

1月│ 2月│ 4月│ 6月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月

2010年

1月│ 2月│ 3月│ 5月│ 6月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月│ 12月

2009年

1月│ 2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 6月│ 7月│ 9月│ 10月│ 12月

2008年

1月│ 3月│ 4月│ 5月│ 6月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月

2007年

2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 7月│ 8月│ 10月│ 11月│ 12月

2006年

4月│ 5月│ 6月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月