トップインタビュー:黒井和男・角川ヘラルド映画社長
2006年04月10日
■江川専務は国際部担当
――角川ヘラルド・ピクチャーズは、以前に買付けた海外作品の償却のため17年3月期で48億円の純損失、17年9月中間期でも5億円の赤字を計上したわけですか、今回の合併前にヘラルドを増資して、赤字を帳消しにすると聞いたのですが。
黒井 2月1日付で7億円、角川ホールディングスが増資しました。それで合併して、ヘラルドは解散するというドラスティックな方式を採用したんです。
――合併後の新会社は、黒井社長ほか新役員は発表されましたが、どのような体制・組織で運営されていくわけですか、社内カンパニー制を導入すると聞いたのですが。
黒井 社内カンパニー制とは、どういう組織を指すのかが分かってなくて言ってると思うんですけどね。要するに事業部制を導入しようと考えています。ヘラルド事業部と角川映画事業部という…。
――大枠として、現在の角川映画とヘラルドを残すということですか。
黒井 違う。ヘラルドにあり、角川映画にないセクションである―映画営業と国際部はヘラルド主導でやると。その他の、例えばビデオやテレビ、映像製作部門は角川映画主導でやるという考え方なんだ。海外事業開発と国際部に関しては江川専務に担当してもらおうと考えています。
――基本的な体制は2月中に決めるわけですか。
黒井 3月1日からスタートするわけだからね。
――今回の合併で人員削減をするのではないかと業界関係者は見ていますが。
黒井 リストラを先にやることはしませんよ。配置転換をすることにしていますけどね。だから1プラス1を2にはしませんよ。1プラス1は1・3なのか1・ 4なのか1・5なのか確定していませんが、どの人数がリーズナブルなのか両社で掌握しながら決めていこうということなんだ。だから余剰人員が出た時には、例えば角川メディアハウス(小林桂一社長)や角川エンタテインメント(椎名保社長)というグループ各社へ配置転換しようと考えていますけどね。
■人員削減は配置転換で
――いま、角川映画は撮影所を含めて社員は何人ぐらいいますか。
黒井 嘱託や契約、出向社員を含めると134人。うち正社員は120人。
――ヘラルドは60人ぐらいですか。
黒井 ヘラルド・ピクチャーズの従事者は94人。うち社員は74人。
――94人というのは子会社のヘラルド・エンタープライズの社員も含めてですか。
黒井 ヘラルド・エンタープライズへの出向社員は3人だな。残りはエンタープライズのプロパー社員になる。ヘラルド、角川映画を合わせると228人にもなる、角川ヘラルド映画はこんな大きな会社ではありませんよ。ビデオなど両社で同じ仕事をするんだったら1プラス1は2にするのではなく、1・4とか1・5 にするのが一番リーズナブルなんじゃないかと言っているんです。
――このビルも2フロアを借りているわけですが、1フロアにするわけですか。
黒井 いや、そこまではまだ何も考えていないんだよ。具体的に動き出したのが、1月26日に両社の取締役会で合併が決議され、翌27日に東京証券取引所に公告して、そこから始まったわけだから。
――事業部門の他に、総務・管理部門はどうされるわけですか。
黒井 管理部門は角川映画マターだが、経理はそう簡単に行かないんじゃないかと思っています。両社の経理システムが違うわけですからね。
――経理システムということでは、ヘラルドは給料体系は年俸制を採用していましたね。
黒井 人事制度を一本化しなければいけないんだが、とりあえず給与形態はこのままでいくしかないんじゃないか。3月1日からいきなりは変えられませんね。いずれにしろ、ヘラルドはこんな94人もの大勢で運営する会社じゃないんだ。洋画の配給自体が構造不況じゃないかと思っている。ロイヤリティが高くなり、いずれどこかで破綻が来るんじゃないかと思っていたらヘラルドがこんな状況になっちゃった…。
――洋画のインデペンデントは松竹富士の倒産('99)以来、ギャガのUSENへの売却('04)など厳しい状況になっていますね。
黒井 ヘラルドも一昨年までは高い作品を買付けて配給してましたから、どこかで破綻が来るとは見てましたけどね。日本のマーケットでは、メジャーがアメリカ本国の命令により、宣伝費を10億、20億かけるとインデペンデント系配給会社も対抗上かけないわけにはいかない。そうするとインデペンデントは、収支が合わないわけで構造不況になると。だから東宝東和が一番いい例じゃないか。ギュッと絞ってやっている。社員は大枠として約50人ぐらいか、そのうち10 数人が不動産にかかわっており、映画の配給は実際35人ぐらいで運営しているんじゃないかな。
――合併後、ヘラルドの子会社であるヘラルド・エンタープライズはどうなるのですか。さらに吸収合併して、角川ヘラルド映画の興行部門のような形態にするのですか。
黒井 とりあえず、しないけどね。まだ誰にも言っていないことだけど「ヘラルド」という名前をいずれ取っちゃおうかなと思っています。私は「大映」という名前もなくしちゃったんだからね。合併後の社名を「角川ヘラルド映画」にした一番の理由は、?ヘラルド?に愛着があるからではないんだ。国際的にヘラルドの名前が知られていて、映画の輸入の時に便利だからであって、“ヘラルド”の名前がなくてもいいということがわかったら取っちゃおうかと考えているんだ。また“角川映画”に戻せばいいんだからね。「角川」というのは、人の名前ではなく、ブランドの名前だからね。たまたま角川歴彦という会長がいるから人の名前だと思われているけれども、シャネルとかルイ・ヴィトンとあまり変わらないブランド名称なんですよ。だからそのブランド力を高めるためにどうしようかという事を、皆で考えればいい話でね。あまり難しく考えてないんだよ。
――では新しい会社のロゴマークはどうするのですか。
黒井 今やっている。角川映画のフェニックスのマークを含めて両社の社員にアンケートを取っている。
(全文は月刊誌「AVジャーナル」2006年3月号に掲載)