株式会社東映太秦映画村は、京都市右京区のテーマパーク「太秦映画村」の施設全体のフルリニューアルを進めており、3月28日(土)に第1期リニューアルオープンを迎える。
※この記事は3月27日付【日刊文化通信速報】に掲載したものです。
太秦映画村は1975年11月1日にオープン。映画の撮影現場を見学できる施設として人気を博し、アトラクションやイベントなどもファミリー層から支持を得てきた。2025年には50周年を迎えたが、施設が老朽化していたこともあり、総事業費150億円を投じ2024年から段階的なリニューアル工事に入っている。施設の名称は、第1期リニューアルを機に東映太秦映画村から「太秦映画村」に改称。第1期オープンのあとは、2027年春に第2期、2028年春に第3期オープンを予定。2028年以降に温浴施設も計画している。
新たな映画村は、「観る」場所ではなく、日本の文化を誰でも気軽に「体験」できる場所へと刷新。コンセプトを「江戸時代の京へ、迷い込む。」とし、大人の没入体験パークへと生まれ変わった。3月19日にはメディア向けに内覧会を行い、東映太秦映画村の鎌田裕也代表取締役社長は「10年以上前から、お客さまにとってもっと居心地の良い施設に変えたいという計画があった。機が熟し、やっとオープンに漕ぎつけた」と挨拶した。
今回のリニューアルの目玉の一つは「360°リアルタイムドラマ」と銘打ったライブショーだ。村全体を舞台に、東映京都撮影所に所属する俳優陣がドラマを展開。客はその物語を目の前で楽しむことができる。鎌田社長は「東映の役者が一番の売り。彼らに活躍して頂き、皆さまに楽しんで頂きたい」と語った。さらに、通常の昼営業に加え、夜の営業(17~21時)にも取り組むのが従来からの大きな変化。「(近年は)夏の期間が長くなり、(猛暑の時期は)日中に出歩くのが厳しい。お客様がだんだん夕方から動くという生活習慣になっている。行政からも『ナイトタイムの過ごし方はないだろうか』と要請があった。(リニューアル前に実施した)江戸酒場というイベントで夜の映画村をお見せすると、非常に喜んでもらえることも実証的に確認できたので、夜の営業時間を長くし、昼と夜の“二毛作”で映画村を見せていきたい」との狙いだ。
ターゲットの客層は、従来のファミリー層に加え、特に夜の営業時には20~30代の女性の集客を見込む。また、インバウンドの比率も従来の20%から、今後は25~30%まで引き上げることを目指す。村内では翻訳機の貸し出しも行う。第1期リニューアルオープン時の年間入館者数は70万人を目標とし、2029年には90万人~100万人を目指す。鎌田社長は「撮影所が持つ資産を、インバウンドの方はもちろん、改めて国内の方にもちゃんと見せたい。うちの得意な殺陣も見てもらいたいし、京都にはたくさんの職人、アーティストがおり、そういう方たちが世界に発信する舞台をここにセットしたという気でいる。彼らと一緒に盛り上げていきたい」と意気込みを語った。
第1期リニュ「太秦映画村」内覧会、記者体験レポート
オープン直前に行われた内覧会には160人を超えるマスコミが駆けつけ、京都の一大観光名所である太秦映画村のリニューアルへの関心の高さがうかがえた。実際に体験した記者がレポートする――。(文章下に写真掲載)
白を基調とする洗練された入場口を進むと、奥に見えるのは東映の三角マークと“荒波”を描いた巨大な壁画。そのインパクトに圧倒されたまま、視線をさらに先に向けると、目に飛び込んできたのは“江戸時代の町並み”そのものの光景だ。時代劇の映像でしか見たことのない世界に今から足を踏み入れようとする高揚感に、マスコミからも「おぉっ」という声が挙がった。瓦版を配布する男性に人が群がる様子も時代劇で見た光景であり、記者も感動しながら江戸時代の町を探索した。建築物は、瓦、柱、壁、引き戸、のれんにいたる隅々までこだわりが見られ、鎌田社長が「歴史的な検証も行い、京都撮影所の美術部の得意技をここで全部発揮できた」と胸を張るのも納得の完成度。「江戸時代の京へ、迷い込む。」のキャッチコピーに相応しい堂々たるリニューアルとなった。
村内を舞台に、東映京都撮影所の俳優陣が熱演する「360°リアルタイムドラマ」も秀逸だった。ひとたびドラマが始まれば、それまで思い思いの場で取材を進めていたマスコミの関心も一気に劇の現場に集中。白無垢の衣裳に身を包んだ花嫁らの行列が町を練り歩く場面では、一行の進む先に合わせてマスコミも大移動しながら熱心に写真や映像に収めていた。この光景は、一般オープン後も多くの客が移動しながらリアルタイムドラマの展開を楽しむ様子を予感させた。村人から行列への参加に誘われることもあり、時代劇のキャラクターに変装できる「時代衣装扮装屋」で好みの衣裳に身を包んでから参加すれば、より没入感が増すに違いない。リアルタイムドラマのクライマックスには大広場の舞台で迫力の殺陣が繰り広げられ、終演後には俳優陣に大きな拍手が送られた。
映画村には様々な体験施設や物販・飲食店が立ち並ぶが、記者の目に最も魅力的に映ったのが、18歳未満入場NGの「丁半博打」が行われる博打場だ。時代劇では「丁!」「半!」と博打打ちたちの活気に満ちた声が飛び交うイメージのある賭場だが、シャイな人が多い日本の客が、果たして同じように“ノる”ことができるのか――。実際、最初こそ博打に参加したマスコミの間には緊張感が漂っていたが、つぼ振りを行う役者たちの親しみやすい演技と「さぁ張った張った!」という威勢のいい声に、参加者たちもあっという間に引き込まれ、その場はたちまち笑いと熱気が渦巻く博打場に様変わり。多くの参加者が自然と博打打ちに成りきり、俳優陣と和気あいあいとしたひと時を楽しんだ。ルールは誰でもすぐに理解できるシンプルなもので、映画村屈指の人気体験コーナーになることが見込まれる。
博打場の向かいに位置する「大人しか入れない拷問屋敷」もユニークな体験コーナーだ。入口前で並んでいると、俳優演じる罪人の悲鳴が中から聞こえ、障子紙の窓からはこん棒で痛めつけられている影も浮かび、いやがうえにも期待は高まる。実際には痛みはないが、参加者は罪人に成りきり、俳優演じる役人との掛け合いを楽しみながら、角材の上に座り、太ももの上に抱石を乗せる拷問を疑似体験できる。
内覧会は16~19時に行われ、後半は日が暮れてナイトタイムに。昼営業時の賑やかな町の様子はガラりと変わり、江戸時代の建物から漏れる灯りが情緒あふれる雰囲気を醸す。現代の街では絶対に見られないこの幻想的なライトアップは必見だ。先述の博打場や拷問屋敷も夜帯営業のイベントのため、大人の客にはナイトタイムまで滞在することを強くすすめたい。
なお、夜に丁半博打、拷問体験が行われる会場では、昼は京花占い、侍修練場が行われる。侍修練場では、参加者は入門生として刀を手に取り、刀の構えや所作、侍の心得を学ぶことができる。
体験コンテンツはほかに、華道、茶道、能、狂言、お囃子、京舞、三味線も用意されている。内覧会では華道の体験会が行われ、指導するスタッフから「世界観」や「余白」を大切にするといった解説を聞きながら、花材を使って実際に挑戦。参加者からは「初めて体験した。良い経験になった」といった声も聞かれた。
大人向けの体験コンテンツが中心の一方で、アトラクション「NINJA BATTLE 太秦鬼決戦」では、モニターに映る鬼に向かって刀のデバイスで対峙したり、小型のフリスビーを投げて鬼を撃退するなど、小さな子供も含めてどの世代も楽しむことができる。混雑緩和のシステムも導入されており、ファミリー層から支持されそうな施設だ。
そのほか、太秦映画村の歴史を学べる「太秦撮影所創設記念『太秦時代劇100年』~撮影バックストーリー~」や、京のまちをテーマにしたフード10店舗、物販3店舗がオープンする。内覧会は3時間が設けられていたが、それぞれの体験をじっくり堪能していると全く時間が足りず、最後は駆け足で各所を回ることになった。ここに第2期、第3期のリニューアル区画が加われば、1日で全てを回りきるのはさらに大変と見られ、リピート需要も高そうだ。
江戸時代の町に囲まれ、撮影所の俳優がそこに息づく人々を再現する太秦映画村。まさに“没入体験パーク”であり、世界に誇れる唯一無二の観光地が誕生した。体験後の余韻も深く、取材を抜きに改めてプライベートで訪れたいと感じる名所だった。 (取材 平池由典)
刷新された入口"本陣"
東映の三角マークと荒波が描かれた壁画
町娘が出迎える入口を抜けると…
目の前に広がる江戸時代の京の町
様々な店が立ち並ぶ
衣裳に着替えられる「時代衣装扮装屋」
時代衣装扮装屋の店内、衣裳をレンタルしている
町全体を使い「360°リアルタイムドラマ」が展開
迫力の殺陣も披露される
大盛り上がりの丁半博打
拷問も体験も可(痛くない)
この日は華道体験も行われた
いつ間にか日も暮れ、情緒あふれる光景に