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日中の映画の橋渡し役に、オリックスグループ「Open Culture Entertainment」陳

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日中の映画の橋渡し役に、オリックスグループ「Open Culture Entertainment」陳金歓CEOに聞く

2021年09月22日
 妻夫木聡や長澤まさみ、三浦友和など日本から豪華キャストが出演し話題となった中国映画『唐人街探偵 東京MISSION』(配給:アスミック・エース)が7月に劇場公開された。

 同作の提供元としてクレジットされているのが、香港に本社を置く「Open Culture Entertainment HK Limited」(以下、オープン・カルチャー・エンターテイメント)だ。一般的な知名度は高くないが、中国との映画ビジネスに従事している人の間ではすでに名が通っており、東京にオフィスを構える準備も進めていることから、今後はより存在感が高まってくると見られる。

 オープン・カルチャー・エンターテイメントを設立したのは日本のオリックス。金融を主業とするオリックスだが、実は投資、不動産、環境エネルギーなど、その事業内容は多岐にわたる。映画関連では、『STAND BY ME ドラえもん』の、日本映画としては4年ぶりとなる中国公開(2015年)を実現させて以来、日中の映画会社の橋渡し役を担ってきた。この事業をさらに促進させるために、『ドラえもん』の現地配給を担当した中国の映画会社フェニックス・エンターテイメント・グループと合弁で、2020年1月にオープン・カルチャー・エンターテイメントを設立した。

 代表を務める陳金歓氏(=下写真)は、オリックス在籍時から映画事業立ち上げに携わり、ビジネス拡大をリードしてきた。実績を積み重ねたことで、日本の権利元からも信頼を置かれる。同社のこれまでの歩みや今後の展望について聞いた――。


OCE陳金歓氏.jpg
陳金歓氏



チャレンジングな社風


――まず、オリックスが中国で映画事業を始めた理由を伺えますか。

 2014年に、オリックス社員が、中国の投資先の一社である中国最大のオーシャンパーク「海昌海洋公園」でのドラえもんタイアップイベントを機にドラえもんの版元と知り合ったことがきっかけで、初の3DCGアニメ映画『STAND BY ME ドラえもん』の日本の試写会に誘っていただきました。実際に鑑賞をしたところ、大変感動したようです。その頃は日中関係が冷え込み、中国と日本では4年ほど映画の交流が無かったのですが、この映画で何とか文化交流の再開をさせたいという思いがありました。オリックスはそれまでも日本企業と中国企業のビジネスマッチングを手掛けていましたが、オリックスが持つ中華圏のネットワークを活かし、何とかこの映画を中国で配給できないかと考えたのがきっかけです。

 私は2014年の年末に(オリックスに)入社しました。前職でメディアに関わっていたこともあり、この案件を任されまして、中国で各映画配給会社や関係会社に試行錯誤して打診し、配給してもらえるパートナーを探すことに専念していました。運よく、現在の合弁会社のパートナーであるフェニックス・エンターテイメントと、色々な困難を乗り越えて公開を実現できました。中国での公開初日は2015年5月28日です。ちょうど、日本と中国の関係の雪解け的な動きだったのかなと思います。当時の為替レートで換算すると、103億円ぐらいの興行収入を叩き出したので、中国の人は日本のコンテンツが大好きなんだということを初めて身近に感じました。ただ、調べれば90年代には日本のコンテンツは中国で積極的にテレビ放送されていましたし、若者も日本のコンテンツを使った商品を愛用していたり、需要が高いことがわかったので、中国でこの事業に打ち込むことをオリックスの中で決意しました。それからはずっと映画を中心にこういった斡旋、上映サポートを行ってきています。

――オリックスはもともとリース事業からビジネスを拡大していますが、今までとは全く異なる領域の映画にも着手されました。そのあたりの判断は柔軟な社風なのですか。

 オリックスはかなりチャレンジ精神がある社風です。祖業であるリースの持つ「金融機能」と「モノの価値を見定める専門性」をもとに隣接分野へ事業拡大を図り、今では法人金融、産業/ICT機器、環境エネルギー、自動車関連、不動産関連、事業投資・コンセッション、銀行、生命保険など、様々な領域で事業展開をしています。事業拠点は世界30か国以上に上ります。オリックスで、私が入ったのは新規事業開発部で、まさしく新しい事業創出を担う部署でした。

 2014年当時、中国では消費のアップグレードという風潮があり、よりハイクオリティなもの、そしてモノだけでなく、精神世界の向上にも関心が高まっていました。エンターテイメントの中国での発展や変化は、このタイミングから爆発しそうな予感があったのです。近年(コロナ前)、日本の映画の興行収入は2200~2600億円ぐらいで推移していますが、中国は2010年に約100億元(約1600億円)だったものが、2014年では約294億元(約5000億円)ぐらいの市場になりました。そして、コロナ前の2019年には643億元(約1兆円)を超えています。この成長率を考えると、とても面白い事業だと思いました。

――『STAND BY ME ドラえもん』はフェニックスが中国で配給したのですよね。

 そうです。外資系企業は中国で配給することはできません。製作も、外資が入ると「外国作品」という位置づけか、もしくは「合作」というカテゴリーになります。配給に関しては、(中国本土は)中国資本の配給会社に任せます。ただし、宣伝や配給にかかる諸々製作業務にディレクションや戦略立案などは弊社もしっかり入らせて頂き、合同チームで行っています。もちろん、版元にとって大事なロイヤリティ回収や海外送金などの精算業務もしっかりサポートさせていただいております。

――フェニックスをパートナーに選んだのはなぜですか。

 実際に中国でこういったコンテンツ事業を行っていく中で、政府法令・規制に対する理解はとても重要なポイントです。特に外国作品を中国で公開するにあたって、様々なセンサーシップ(検閲)を経なければなりません。1か所ではなく、3~4か所の政府機関の審査を受ける必要があるのです。このプロセスを熟知していて、かつ海外作品の中国での配給実績のある会社という点で、当時色々な会社とお付き合いがありましたが、最終的にはフェニックスにお願いすることになりました。

――『STAND BY ME ドラえもん』以降ではどんな作品を手掛けられましたか

 おかげさまで日本の様々な版元から信頼を受けまして、ドラえもん以降では、(合弁会社設立以前も含めて)「クレヨンしんちゃん」や、2018年からは「名探偵コナン」の映画もやらせていただいています。これらはシリーズものですが、単品では映画『ビリギャル』や『DESTINY 鎌倉ものがたり』などの実写も含めて、合計18作品の劇場配給を実現しています。また、全ての作品を劇場公開することはとても難しく、かつコロナ時期も重なったため、劇場でどうしても公開できない一部の作品は、配信という形で展開させていただいたりもしています。

――劇場公開以外に、商品化なども手掛けられていますよね。

 商品化展開するにあたり、営業などマンパワーが必要となりますが、正直なところオリックスで手掛けていた時は人手が足りていませんでした。ただ、オープン・カルチャー・エンターテイメント設立以降は映画の商品化も展開しており、例えば『映画ドラえもん』に関する(中国での)商品化は弊社が扱わせてもらっています。

――日本でお付き合いのある主な会社はどこですか。

 (主要な映画・映像関連会社は)ほとんどですね。おかげさまで、邦画の中国上映では、公開本数も、興行収入ベースの実績も1位ですので、皆さんからの信頼も頂いており、アニメ製作会社、映画会社、ゲーム会社、テレビ局、主要なところはほとんどお付き合いがあります。


香港をハブにいずれアジア展開

――オープン・カルチャー・エンターテイメントを香港に設立した理由を教えてください。

 香港はこういった外資系のコンテンツ企業が、中国の国内と取り引きする時や、中国大陸以外の海外のコンテンツホルダーと取り引きする時によく使うハブ的な場所です。ひとつは、税務上の色々な意味での便宜性があること。あと、中国国内では外貨送金の規制などが厳しいので、対日本の版元に対しより迅速かつ確実なビジネスを行う上でも、ハブの香港を使うことが便宜性が高いと考えました。また、我々は日中間だけでなく、今後アジアの方にもビジネスを展開していくことを想定しています。日本も含めたアジアのパートナーとのプロジェクト単位の出資や、事業を他国に展開する時には香港が便利です。

――社員は何人いますか。

 香港や中国を合わせて、いま総勢25人です。間もなく「Open Culture Entertainment Japan」も設立する予定です。

――ジャパンのオフィスの場所も決まっていますか。

 東京で、もうほぼ決定しています。

――25人の社員は、オリックス側の方がメインですか。

 色々な形でオリックスからも人が行っていますが、主に、この事業展開に相応しいオリジナルメンバーです。

――陳さんは日本語が非常にお上手ですが、どちらで学ばれたのですか。

 4年間日本に留学しましたし、仕事も含めて合計10年以上日本にいましたので、語学環境には恵まれています(笑)


香港の情勢変化は現状影響なし

――香港は、昨年7月に国家安全維持法が施行されました。この1年で情勢が変化したのかなと想像しています。先ほど香港に会社を設立するメリットを伺いましたが、そのあたりの今後の見通しを伺えますか。

 ビジネスのフィールドに関しては、さほど影響を受けた印象はなかったです。むしろ、より中華圏では連携がとれている印象を持っています。香港、台湾、マカオは市場としては小さいので、香港や台湾の優秀なクリエイターは、中国大陸でのプロジェクトに加わり、色々な役割を果たしています。弊社も複数の香港の脚本家や監督とお付き合いがありますが、数多くの中国大陸のプロジェクトに参加されておられます。

――香港に会社を設立されたことで、中国本土や日本だけでなく、香港でも映画の配給事業を行っていきますか。

 はい、まさしく今準備しています。中国大陸は当然ながら重要な市場ですが、周辺の市場も含めて、ひとつの作品を複数のエリアで同時認知させることで、より作品の価値も上がると思います。

――先ほど、アジアでもビジネス展開していく考えだと伺いましたが、中華圏以外ではどこに関心がありますか。

 まずは中華圏での土台固めが大事ですし、コロナの回復の度合いで市場の戦略も変わってくるかもしれませんが、次のチャレンジとして、日本のアニメやIPが人気のエリア、例えばタイやベトナムなどの領域が非常に魅力的だと考えています。すでに先行している業者もありますので、そういった業者とのコミュニケーションも含めて、より日本コンテンツを海外で盛り上げられるように、我々も微力ながら貢献していきたいです。


日本で様々なジャンルに挑戦

――日本での事業展開も伺いたいと思います。『ペガサス 飛馳人生』(19年5月公開)や、今年7月公開の『唐人街探偵 東京MISSION』と、中国映画を日本で公開する事業も始められています。この中国映画の日本への輸出を本格的に進めていく考えですか

 やる以上はもっとしっかりやりたいと思っています。ただ、現状は中国の映画を日本で流行らせて、興収をドンドンとるのは簡単ではないと思っています。かつては香港映画が日本で流行ったり、チェン・カイコー監督など一部の有名監督による“ザ・チャイニーズ・ビューティー”の映画がヒットしましたが、最近の中国映画は雰囲気が変わってきました。『ペガサス 飛馳人生』も『唐人街探偵 東京MISSION』もコメディアクションで、テンポも速いです。少しずつこういった作品も日本で公開されるようになりましたが、まずは「(現在の)中国の作品はこうなんだ」という相対的なイメージを伝えるための、土台作りが必要なのかなと思います。ですから、日本への輸出については、様々なジャンルを今後チャレンジしていきたいなと思います。


続きは、「文化通信ジャーナル2021年9月号」に掲載。

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取材・文 平池由典



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