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注目のコマ撮りアニメ映画『JUNK HEAD』、堀貴秀監督に制作の舞台裏聞く

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注目のコマ撮りアニメ映画『JUNK HEAD』、堀貴秀監督に制作の舞台裏聞く

2021年03月29日
 驚異のコマ撮りアニメーション映画『JUNK HEAD』(配給:ギャガ)が3月26日に公開された。人類滅亡を止めるために、主人公が地下迷宮へと潜入するアドベンチャーだ。地底世界に生息する個性的な生命体や、その独創性あふれる世界観、ユーモアに富んだ内容で、誰にも真似することのできない唯一無二の映画が作り上げられた。

 2013年に披露された同作の短編版は世界的に評価され、各国の映画祭で受賞。ギレルモ・デル・トロ監督がコメントを寄せるなど、カルト映画好きの間で大きな注目を集めた。この狂気の世界を創造した堀貴秀監督に、製作の舞台裏を聞いた――。
(この記事は、文化通信速報【映画版】2021年3月26日付で掲載したものです)


堀貴秀監督.jpg
堀貴秀監督


短編版でハリウッドから監督オファー

 普段は内装業に従事する堀監督だが、もともとは芸術家を目指して、絵や彫刻などの制作に没頭していたバックグラウンドを持つ。その腕はいまの仕事に生かされているものの、「(仕事では)依頼者の希望通りに作るので、自由にすることはできません。でも、表現活動はしたいと考えていました」という。様々な芸術のフィールドの中で、映画は「ずっと見ていましたし、クリエイティブの中でも大きな世界」と憧れは抱いていたものの、一人で制作できる代物ではないと考えていた。ところが、「新海誠監督が(初期作品を)ほぼ1人でパソコンを作って制作したことを知り、私は人形を作っていたので、コマ撮りなら作ることができるかもしれないと思ったのです」と制作を決断したという。

 仕事場にある作業スペースをスタジオに改装し、たった1人で企画、監督、キャラクターデザイン、編集、撮影、照明、音楽を手掛ける映画作りがスタート。仕事の合間や休日をフル活用して制作に臨み、4年の歳月をかけて30分版を完成させた。

 この短編は、2013年11月にアップリンク渋谷で1度だけ上映。また、海外の映画祭に出品し、ユーチューブで無料配信も行った。そうすると、堀監督にハリウッドから監督オファーが舞い込んだほか、駐日米国大使館から「あなたを探しているスタジオがある」と連絡が入るなど、海外から大きな反響が寄せられた。「でも、英語がわからないので、対応できなかったのです(苦笑)。あと、ハリウッドは分業制でしょうから、自分が好きなものは作られないのではと思い、お断りしました」という。


『不思議惑星キン・ザ・ザ』などに影響受ける

 短編版は、堀監督が構想する壮大な『JUNK HEAD』ストーリーの一部であり、シリーズ化の企画を温めていた。これに京楽産業.の映像事業部である「MAGNET」が出資を決めたことで、2014年、ついに長編プロジェクトが始動した。堀監督は自営業のため、比較的仕事量をコントロールしやすく、長編制作に臨むにあたり本業は月のうち1週間から10日ほどにセーブ。残りは全てを『JUNK HEAD』のために費やし、毎日朝7時頃から夜11時頃まで作業。スタジオ横で寝泊まりし、文字通り「全身全霊」でこの作品の撮影に打ち込んだ。


JUNK HEADの主人公.jpg
©️2021 MAGNET/YAMIKEN


 堀監督が創り上げた地底世界は、さびれた廃工場のようなフロアや通路が何層にも重なり、各階層で不気味かつキュートな生命体が独自のコミュニティを築いている。このイマジネーションは、映画『不思議惑星キン・ザ・ザ』から強く影響を受けたという。「高校生の頃に見て、それ以来、まるで初恋の人のように思い続けました」。ソ連の伝説のカルト映画は若き日の堀監督をジャンル映画の世界に引き込み、『エイリアン』や『ヘル・レイザー』といった作品にも感化。『JUNK HEAD』は、その影響が大いに窺える作品となった。一方、全編にわたりコメディが軸であり、クライマックスには熱いバトルも繰り広げられるなど、エンターテイメントとして多くの人が楽しめる作品としても仕上げられている。

 登場するキャラクターの多くは目が無く、不気味な造型の大きな要因になっている。この理由について堀監督は「コマ撮りの場合、目の表現が難しいのです」と事情を明かす。目があると、どうしても “人形らしさ” が拭えないため、「それなら目が無くても良い設定を考え出しました」という。また、全キャラクターが謎の言語を操るが、これは「ほとんどのキャラの声を私が担当するので、普通にしゃべるのでは全ての声色を変えるのは難しかったのです」との理由があった。いずれも、コマ撮り映画を自主制作するという制限の多い状況下で編み出したアイデアだが、結果的には作品の個性をさらに増幅させる役割を果たしている。

 上映分数は101分。1秒につき24コマを要し、総ショット数は約14万コマにのぼる。2014年の長編制作開始から紆余曲折を経て、いよいよ公開を迎えた。スタート時の劇場は、アップリンク渋谷など全国10館が決定。堀監督は「心臓バクバクです。短編版をイベント上映させてもらったアップリンク渋谷で、今度は本公開できるのは感慨深いです」と公開を目前に控えた思いを語る(取材は3月15日)。

 また、この作品は3部作を想定しており、「すでに続編も絵コンテまで出来ています」という。まずは今回の第1弾をヒットさせ、壮大な『JUNK HEAD』の世界をさらに広げていきたい考えだ。(終)


取材・文 平池由典

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