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「若い人にインディの魅力を届ける」 Web宣伝大手のフラッグ、映画配給宣伝事業スタート

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「若い人にインディの魅力を届ける」 Web宣伝大手のフラッグ、映画配給宣伝事業スタート

2020年11月19日
 株式会社フラッグが、映画配給宣伝事業に着手した。配給・提供作品第1弾の『100日間のシンプルライフ』(共同配給:トランスフォーマー)を12月4日(金)公開する。ディズニーの大作映画や現在メガヒット中の『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』をはじめ、話題作のデジタル領域における宣伝を担ってきた同社が配給事業を始める意図について、久保浩章代表取締役に聞いた。


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フラッグ 久保代表


 同社が作品の買い付けを決めたのは2018年秋頃。久保氏は「配給の経験者が入社し、事業として始めたのが2年前です。洋画のマーケットを見た時に、インディペンデント系の作品やプロモーションは、シニア向けが多い印象を持っていました。インディペンデントの作品は映画業界を底支えするために大事なマーケットであり、ハリウッド映画以外にも、良作な洋画があることを若い人たちにも届けていく宣伝をやりたいと思いました。配給会社からお声掛け頂くのを待つのもアリですが、自分たちで海外からそういう映画を見つけてきて、自ら宣伝するのも良いのでは?という発想から、まず買い付けを始めました」と経緯を説明する。2019年(2月)のベルリン国際映画祭から本格的に買い付けをスタートさせ、昨年はカンヌ、トロント、AFMと主要な映画祭・マーケットに久保氏自らも足を運んだ。今年はコロナの影響で多くの映画祭がオンライン開催になったが、継続して積極的に参加している。

 配給事業を始めた理由のもう1つの側面として、久保氏は洋画のビジネス構造の変化も挙げる。「私たちが(宣伝を)手掛けている規模感の作品が、映画館で上映されずに、例えばネットフリックスやアマゾンといった会社がグローバルで購入するケースが増え、作品が大きくなればなるほどそういった動きは顕著になっていると思います。今後どうなっていくのか流動的な状況なので、色々やれることの可能性を探っています」という。大手の動画配信サービスが映画祭で多くの作品を購入する動きは数年前から活発になっている。さらに、新型コロナの影響により、劇場公開を予定していた作品を動画配信でのリリースに切り替えるパターンも増えており、フラッグが担当している『ムーラン』もディズニープラスで9月から配信開始された。


すでに7本買い付け、100館以上で公開の大作も

 そんな業界変化著しい中、すでに同社では7本を買い付け済みだという。『100日間のシンプルライフ』を皮切りに、5月公開を延期した提供作品『ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから』(配給:シンカ)と、同じく7月公開を延期していた配給・提供作品『シャイニー・シュリンプス! 愉快で愛しい仲間たち』(共同配給・提供:ポニーキャニオン)を、いずれも2021年に公開する運びだ。久保氏は、「配給会社ではないので、年に何本公開するというノルマは設定していませんが、3か月に1本ぐらいのペースで公開できるといいかな、と思っています」と大まかな事業イメージを話す。また、「少しずつ手掛ける作品の規模感を大きくしていきたい」という構想もあり、7本のうち、最も大きな規模の作品は50館程度のスタートを想定。さらに、現在交渉中の作品では100館以上の大きな規模でチャレンジしようとしているという。

 前述の通り、配給営業や国際担当の経験者も入社しており、規模の小さな一部の作品は単独で配給を行うが、基本的に当面の間は他社と共同で提供・配給していく方針。「こちらからお声掛けすることもあれば、お声を掛けて頂くこともあります。作品ごとに、お話ししながら自然と決まっていっています」。第1弾の『100日間のシンプルライフ』は、宣伝をフラッグ、劇場営業をトランスフォーマーが担う。「すごくコンセプチュアルな映画なので、こういった作品に実績があり、内容を面白いと思って頂ける会社とお話をしていたところ、トランスフォーマーさんにご興味持って頂きました」という。


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12月4日公開『100日間のシンプルライフ』


自社作品をやることで大仕掛けができるメリット


 『100日間のシンプルライフ』は、久保氏が「これを我々がやらずしてどの作品をやるのか」と熱を入れる作品。全ての所持品を倉庫に預け、1日1つずつ必要なモノを取り戻していく、2人の男の仰天勝負を描く内容だ。「ドイツ映画で、キャストは無名ですが、デジタルで人とすぐ繋がれるソーシャルメディア全盛のこの時代において、本当に大事なものは何かを見つけるという、非常に現代的なテーマの映画。すぐ手を挙げてやらせてほしいと言いました」。

 図らずも新型コロナの自粛期間中には、自宅で大掃除や断捨離をする人が急増し、まさにタイムリーなタイミングでの公開となる。インディペンデント映画の魅力を若い世代に広めたいという同社の狙いに沿うように、客層のターゲットは20~40代のデジタル世代を中心に据えている。自社配給ならではの宣伝展開の一例として、「100人のインフルエンサーの方に、『人生でこれだけは欠かせないモノ』ということをお聞きし、映画公式サイト、各種ソーシャルアカウントで公開日の100日前から毎日更新しています。他社から宣伝を受託する場合、100人の方を選んでこういった企画を行うのはなかなか大変なのですが、自社配給なので(自由に)選ばせてもらい、インフルエンサーの方とはツイッターを中心にコミュニケーションをとっています。自社でやれば、この作品クラスのP&Aで通常できる規模感よりも、かなり大仕掛けなことができるのがメリットです」と説明する。


配給宣伝事業に関わる人員10人以上、予告編も自社で

 ここ5年ほどで映画宣伝におけるデジタルの存在感は急速に拡大しており、フラッグへの宣伝委託の数も増え続けている。その中で、同社で映画の宣伝に携わるスタッフは、3年前は20数人だったが、現在は東京本社だけで40人以上。各支社のデジタル広告担当者なども含めると、総勢50人以上の規模にまで成長している。そのうち、配給宣伝事業に関わるスタッフは兼務を含めて10人以上になるという。また、社内の映像制作スタッフから映画の予告編制作チームも編成し、『100日間のシンプルライフ』で初となる自社製のトレーラーを制作。8月後半に解禁すると、36万回以上の再生回数を記録し好評を博している。


LA子会社を起点に海外との映画共同製作も視野

 さらに、配給事業のさらに先の展開として、海外との共同映画製作も視野に入れている。同社は2019年3月、米国のロサンゼルスに映像制作を中心とした100%子会社(Flag Pictures,Inc.)を設立した。久保氏は、「向こうでは、日本の企業や自治体の海外向けのプロモーション映像制作などをやっています。東京で作ると、どうしても出演者が日本人中心となり、アジアの絵になってしまいがちですが、グローバル向けに作るのであれば、LAで撮る方が色々な人種の方に出演してもらいやすいですし、景色に自分を同化してもらいやすい絵ができるのです」と海外進出の理由を話す。そして、次なるプランとして「海外と、映画の制作段階で、製作出資をするとか、共同製作をやるといった構想もあります。拠点があればそういう動きもとりやすいので」と、LA子会社を起点とした合作映画にも取り組んでいく考えを示した。


取材・文 平池由典

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