コンテンツ東京のセミナー「コンテンツビッグバンが起こる!」にブシロード木谷会長ら登壇
2020年11月05日
コンテンツ東京(主催:リード エグジビション ジャパン)が東京ビッグサイトで開催され、10月22日には「コンテンツビッグバンが起こる!」と題したセミナーが行われた。当日は、ブシロードの木谷高明代表取締役会長、芸人で絵本作家の西野亮廣、経済ニュースメディア「NewsPicks」の佐々木紀彦取締役の各氏が登壇。木谷氏と西野氏は自身の作品を軸にコンテンツが持つ可能性について話し、佐々木氏はコンテンツの現在について説明した。
(左より木谷、西野、佐々木の各氏) ■ブシロード 木谷高明代表取締役会長の話
ライブ事業に力を入れているブシロードは、このコロナ禍で大きな影響を受けたものの、有料ライブ配信の市場が急速に立ち上がったことの恩恵を受け、いくつかのイベントは黒字化を達成。木谷氏はその一例として、「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」の無観客ライブを紹介した。当初は7月に観客を入れて5日間開催予定だったが、無観客に切り替え、7月12日にライブ生配信したところ、4500円のチケットで約6千人が視聴し、「有料配信でも見て頂けるんだと確信した」という。同社の看板作品「BanG Dream!(バンドリ!)」でも、8月21~23日に富士急ハイランドで開催した(有観客)ライブの模様を、約1か月後にアーカイブ配信したところ、3800円の料金で国内外から2万3千を超える視聴数があった。これらの結果を踏まえ、木谷氏は「これまでは劇場とライビューイングしかなかったが、(コロナ禍により)リアルタイム配信、アーカイブ配信と、コンテンツの届け方が広がった」と説明した。
また、同社は女性4人のDJの活躍を描く新作メディアミックスプロジェクト「D4DJ」の展開を開始しており、木谷氏は企画を立ち上げた経緯について説明。F1のシンガポールGPのあとに行われた4~5万人が集まるイベントの中で、DJがクイーンの「伝説のチャンピオン」を流したところ、大盛り上がりとなった光景を目の当たりにし、「次に来るのはDJ」と着目したという。カバーする楽曲は、「徹子の部屋」や「仁義なき戦い」のテーマ曲も含まれ、あらゆる世代に響くコンテンツとして展開していく考えを述べた。
■芸人・絵本作家 西野亮廣氏(「えんとつ町のプペル」作者)の話
西野氏は、自身が運営するオンラインサロン(7万人)の会員から聞いた話をもとに、コロナで影響を受けた実店舗の明暗を分けたものとして、「顧客で回しているところが死んで、ファンで回しているところが助かった」と分析。普段から営業終了後にイベントスペースの場として店舗を開放していた知人の美容室は、ファンから多くの支援を受けてコロナ禍を乗り切ったという例を挙げ、「人と繋がっていなければサービスとして成り立たなくなってきた」と独自の考えを述べた。ただ、誰もがコミュニケーションが得意なわけではなく、そんな時に人と人との橋渡し役を担うのが「コンテンツ」になると強調。数あるオンラインサロンも、「ダメなものはコンテンツが無い。共通言語が無いとコミュニケーションが加速しない」とし、コンテンツの重要性を説いた。
また、絵本「えんとつ町のプペル」が成功している要因について、ほかの絵本とは異なる要素として、西野氏は「ギフト」「メイキング」の2つを挙げた。まずはギフトについて「意味変」(意味を変更する)と表現し、「90年代にCDが売れたのは、(音楽を聴くメディアとしてだけでなく)CDラックにささっているのがオシャレで、ラックを埋めていくために買っていた」と振り返り、絵本のプペルについては「1人で楽しむだけなら1冊しか売れないが、ギフトとして売ったら、1人で10冊も100冊も買ってくれて、めちゃくちゃ売れた」と“意味変”効果をアピールした。
もうひとつの要因「メイキング」については、マクドナルドの戦略を例にとり、「100円のハンバーガーでは利益はなく、サイドメニューで儲けている。フロントエンドで集客し、バックエンドで頂く」とし、無料で絵本を配信中のプペルについても「メインコンテンツは無料として、それが作られる過程をオンラインサロンで売っている」と戦略を語った。
また、西野氏は映画版『えんとつ町のプペル』についても言及。製作委員会方式で製作し、委員会メンバーに宣伝してもらうことに感謝の意を示しつつ、オンラインサロンの収益を元手に、今後は自身でも映画を製作し、完成した作品を無料で配信する構想も練っていることを明かした。
■NewsPicks 佐々木紀彦取締役の話
佐々木氏は、今回のセミナーの題名にした「コンテンツビッグバン」というワードについて、「色々な人がコンテンツ業界に入ってきた。あらゆる人に開かれていく」と、コンテンツの自由化が起きていると指摘。特に、政治・行政、メディア、教育の3つの分野が、コンテンツが入ってくることで変化を見せていると語った。世界ではコンテンツに(年間)70兆円ものお金が投入されているという調査結果も示し、いずれその流れは日本にもやってくると見通しを述べた。また、ビッグバンに向けて複数のポイントを挙げ、特に「経営」が1番重要になるのではとコメント。一例として、韓国の人気グループ「BTS」が所属するビッグヒットエンターテイメントの手法を取り上げ、アプリでファンと繋がり、オンラインコンサートを実施したり、メンバーを疲弊させずにコンテンツを発信するためにメンバーのアニメキャラクターを稼働させ、教育分野にも進出するなど、様々な展開でビジネスを拡大させていることを紹介した。
取材・文 平池由典