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話題のホラー映画『犬鳴村』東映・紀伊宗之プロデューサーに聞く

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話題のホラー映画『犬鳴村』東映・紀伊宗之プロデューサーに聞く

2020年02月10日
 東映配給のホラー映画『犬鳴村』が2月7日に公開された。日本最凶の心霊スポット“犬鳴村”を、『呪怨』の清水崇監督が映画化。ただ怖いだけでなく、血筋や地域にまつわるストーリー性も掘り下げ、人間が抗えない運命の恐怖も描き、身体の芯から震える物語となった。紀伊宗之プロデューサー(東映 企画調整部 兼 映画興行部 次長=下写真)に企画した経緯を聞いた――。


『犬鳴村』東映・紀伊宗之P.jpg
紀伊プロデューサー



オリジナルにこだわる

――企画された経緯を伺えますか。

紀伊 清水さんとは何回かお食事に行ってお話をさせてもらっていましたが、当初は「いや、もうホラーは…」という感じだったのです。でも僕は「いや、ホラーをやりましょう」と。すると監督から「そうですよね。ではやりましょうか」と前向きなお返事を頂き、企画することにしました。ただ、原作小説をとりにいくのではなく、オリジナルにこだわりました。僕は、ホラーは絶対にオリジナルであるべきだと思っています。東映ビデオは、権利を持っている『呪怨』というコンテンツを永遠に使えます。そういう意味では、ホラーはアニメに近いと思っています。ホラーはみんなが知っているキャラクターがいますし、展開しやすいんです。そこで監督とお互いにネタ探しを始めました。

――その中で“犬鳴村”という題材に行き当たったと。犬鳴村という存在は都市伝説ですが、福岡県には実際に犬鳴峠があり、旧犬鳴トンネルという心霊スポットがあります。

紀伊 僕にとってのホラーは、横溝正史の「金田一耕助」シリーズなんです。近年の日本のホラーはポップになり過ぎているような気がします。でも、年齢が上になればなるほど、ホラーって怖くなくなるんです。子どもの時は何でもかんでも怖かったですが、年齢がいくと、自分の死の方がリアルに感じて怖い。そういう意味では、もっと日本の土着的な因習や、血にまつわる話の方が僕は怖いなと思っていて、色々探したところ見つけたのが〝犬鳴村〟でした。まず名前が物々しい。監督に「これ知ってる?」と聞いたところ、「知ってる」ということで、これがモチーフにならないかと考え、すぐに脚本家の保坂(大輔)さんらと一緒にシナハン(シナリオハンティング)に行きました。現地に足を運ぶと「これはお話が作れるかも」とみんながピンと来たんです。

――どんなところにピンと来たんですか。

紀伊 ネットにも上がっていますが、実際にかつて存在した「犬鳴谷村」がダムの底に沈んでいるんです。(今は封鎖されている)旧犬鳴トンネルがあって、その先で(犬鳴谷)村がダムの底に沈んでいるということは事実です。「ロケーションと設定はこれで行けるのでは?」となりました。そのあと(宮若)市役所に行くと、グーグルマップで見るとそのあたりに建物があるのに、役場の人は「そこに建物や戸籍はない」と言うのです。その食い違いの理由は最近ちゃんとわかったのですが、そんな不思議な要素からもヒントを得てストーリー作りを始めました。やっぱりオリジナルのストーリー作りは面白いですね。


地元の人が“あそこはヤバい”

――旧犬鳴トンネルは、地元の人にとってはどんな存在なのでしょう。

紀伊 地元の人に話を聞きましたが、みなさん「あそこはヤバいから行くな」と口を揃えて言います。地元ではものすごい知名度の心霊スポットですよ。旧犬鳴トンネルは、今はブロックが積まれて閉鎖されていますが、昔はそのブロックが無かったそうで、中に入って肝試しなどが行われていたんだと思います。中は真っ暗で、かなり気持ち悪いです。シナハンの際、夜にもう一度来ようと話をしていましたが、あまりに不気味なので「もうやめよう」となりました(笑)。余談ですが、実際に撮影したのは青梅市の旧吹上トンネルで、そこも関東最凶の心霊スポットとして知られています(笑)。

――どのように物語を作っていったのですか。

紀伊 雑談の中でアイデアを出し合い、それを保坂さんがまとめてくるという流れでしたね。人間が創り出したものが1番怖いと思うのですが、それを深掘りすると、人間が創り出したある種のタブーに行きつく。そのタブーを人間が暴いていくという話です。

――映像的な表現はいかがですか。登場する亡霊は、顔や体がぼやけていて非常に不気味でした。

紀伊 ギミックとしてのホラー描写は5分に1回は入れてほしいと注文しました。顔がぼやけているのは、しっかり見えてしまうとゾンビ映画のようで、コメディになってしまうんです。演じたエキストラの人は、清水組の常連のような方もいて、監督は顔を出してあげたいという気持ちもあったようですが、「人が(しっかり)出てきたら安心してしまう」という理由で潰してもらいました。不気味と感じてもらえたのは嬉しいです。

――試写会では、意外にも「泣けた」という人がいるようですね。

紀伊 例えば、ゼロ号試写の時に、キャメラマンの人が「なんか俺泣けたんだけど…」と話していました。面白いもので、この作品を“ホラー”と思って観ている人と、“映画”と思って観ている人がいるんです。“ホラー”と思って観ている人は、お化け屋敷のように「あ~怖かった」と楽しんでくれていますし、〝映画〟と思って観ている人は、物語がしっかりしているので「こんなホラー映画見たことない」と言います。


ジャンル映画で勝ちたい

――地元の福岡県宮若市の協力により、廃校を使って試写会を行われていました。反応はいかがでしたか。

紀伊 めちゃくちゃ良かったですよ。NHKが試写会の取材に来てくれて、ニュースで取り上げてくれたんです。そこでインタビューを受けた女の子たちが「怖くてほとんど観れませんでした」と話していました。僕らとしては、これでいいのか?と思いましたが(笑)。ちなみに、宮若市の旧犬鳴トンネルに上がっていく道は、福岡県警によってバリケードが設置されたんです。この映画を観て影響を受けた人がトンネルを訪れることを懸念し、そのような対応になったようです。それほど地元ではこの映画が注目されているのだと思います。

――客層のメインターゲットは。

紀伊 徹底的にティーンに向かってやっています。

――全日本プロレスの選手が稼働するイベントも行われています。全日本プロレスは製作委員会にも参画しているそうですね。

紀伊 ご縁があって、出資をご相談したら即決して頂きました。2月5日には、帝国ホテルにプロレスリングを設置し、映画のキャストと全日本プロレスの選手が対決するというイベントもさせてもらいました。

――興収の目標は。

紀伊 2桁(10億円以上)に乗ってくれれば嬉しいです。

――東映がホラーを作るのは、最近では珍しい気がします。

紀伊 東映はジャンル映画の会社だと思っています。日本映画は、カテゴリーでいうと「ドラマ」ばかりです。僕らも海外にしょっちゅう行きますが、「なぜ日本映画はドラマばかりなんだ」とよく言われます。例えば男と女の「好きだよ」という話はフィジカルじゃない。それらはドラマのカテゴリーです。でも、東映はアクション、フィルムノワール、アニメーションで食ってきたわけです。僕は、ホラーやSFも含めて、ドラマとは別にカテゴライズされるものを総じて“ジャンル映画”だと思っていて、ここで勝ちたいと思っています。東映グループには、東映の企画部、テレビ部、コンテンツ事業部、東西の撮影所、テレビ・プロダクション、セントラル・アーツ、東映ビデオ、東映アニメーションがあり、モノづくりの会社だと思っています。でも、色々なジャンルが映画の中に存在しないと、モノづくりができる会社がたくさんあっても、可能性が少なくなるわけなので、常に多様なジャンルを提供し続けたいと強く思っています。東映らしいものを作りたい。「東映らしさ」の定義は人それぞれあると思いますが、「東映らしい」と思った人が多い時に、この会社の映画の可能性があると思っています。『孤狼の血』の時は、「これは東映の映画だ」と、メディアもオールドファンも盛り上がり、高い評価につながりました。今回の『犬鳴村』も同様だと思います。誠実に作ったつもりなので、業界の人にも観てもらいたいです。(了)



取材・文 平池由典

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