東映 岡田裕介代表取締役グループ会長 “映画存続のために業界一丸に”
2016年04月05日
存続のためには業界一丸に――2014年の4月1日付で代表取締役社長のポストを多田憲之さんに譲られ、岡田さんは「代表取締役グループ会長」になられました。それからは、従来より俯瞰的な立場で東映や業界を見ることができたと思うのですが、その感想を伺えますか。岡田 東映を強化していくために、多田社長には、社内を見てもらい、しばらくの間は私が対外的な部分を受け持つと話をしていました。子会社に関しては彼が知らないところもあったので、必ず一緒に討議してきまして、2年経って、彼も東映全体がやっと見えてきてくれたかなと思っております。ですから、本当の意味で私が俯瞰的に見られるのは、今年4月以降からかなとは思っています。一方で、映連の会長をはじめ、東京商工会議所とか、東映以外の仕事が増えてきまして、それもひとつの自分のお役目かなと思っています。映画界は、その他の業界の方からどう思われているのかがわかってきて、東映もさることながら、まず映画が今後存続可能なのかを見極めていくことが大事だと思っています。
――業界全体について思うところがあるわけですか。
岡田 映画は、思ったより世の中からの注目度が高く、売上の大きさだけでなく、色々な方面に波及する力があります。でも年間興収で2千億円突破しましたなんて、胸を張って言えない数字のような気もします。バラバラにやっていれば、踏みつぶされてしまうような業界だと思うのですね。
松竹さんや東宝さんともライバルというわけではなく、邦画が全体でどうやって生きていくのか、洋画の流れがどうなっていくのか。ある程度業界がまとまっていないと。映画はテレビと長年競合関係にあったのですが、今はこういう形で共存していくんだと、接点が見出せたと思うのです。今度はインターネットも含めて、どういう接点を見出していくのか。その中で、映画が残っていくのかどうか。お客さんが、決められた時間に、映画館へ来て、観るという行為が、今の若者たちから下の世代に続いていくのか。その習慣をつけていくために業界が協力していかないと、存続できないのじゃないかと思います。
個々に動くと、ライオンに襲われるシマウマみたいなものですよ。シマウマも群れで固まっているとライオンも手をつけにくいですが、一頭になった瞬間に襲われます。我々はどちらかと言えばシマウマだと思うのですね。そういうシマウマ的な中で、一緒になっていかなきゃいけない部分はあると思います。
――映画界がどう思われているのかがわかった、という話がありましたが、どのような印象を持たれているのでしょう。岡田 特異な業界だと思われていますよ。でも文化的には非常に意義のある媒体というか…。広告をうつために映像娯楽を提供するメディアというわけではなく、文化としての価値を認めて頂いているのはよくわかります。『海難1890』でもたくさんの企業の方が応援してくれて、「こういう映画には企業として協賛しなくては」などという意識が皆さんの中にあって、無理なくやって頂いている感じがありました。東京商工会議所でも、大企業のお歴々の方々に、私が映画業界やテレビ業界がどうなっているのかを説明しても、皆さんが興味を持って聞いてくださる。単なる娯楽ばかりの観点ではないのです。
東映建工が絶好調――東映の話に戻りますと、2月12日に発表された2015年4~12月期連結決算は、売上高、営業利益、経常利益が歴代1位を記録しました。その要因は何でしょう。岡田 色々な要素がありますが、ご存じの通り映画が良いわけではありません。その中で、他の部門が非常に頑張ってくれています。ひとつは、ネットバブルがこの会社に起こったことが大きいです。昨今、色々な動画配信プラットフォームが立ち上がったわけですが、ソフトがないのですね。そこで、東映の過去のソフト(作品)が売れました。東映も東映アニメーションも版権ビジネスが好調で、それが高収益を生み出しました。
――シネコンの内装などを手掛ける子会社「東映建工」の業績も後押ししたのではないですか。建築内装事業部門の売上が前年同期比119.3%増の109億5600万円になっています。岡田 これは全てにおいて良かったです。東映太秦映画村のリニューアルや、東映グループの不動産に関する内装などをやっていますけども、シネコンの興行会社が導入する4DXなども早くから東映建工が内装を手掛けていました。非常に評判が良く、他社さんの案件にもかかわらず、ほとんど東映建工がやらせてもらっている状況です。シネコン内装の評判が上がってきて、業界では、何かあれば東映建工に頼もうというムードが出てきて、一気に売上を押し上げました。これもある意味で4DXなどのシネコン内装バブルが来たのが大きな理由だと思います。
続きは、文化通信ジャーナル4月号に掲載。