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『アナと雪の女王』が社会現象化、ディズニー井原氏、廣村氏に聞く

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『アナと雪の女王』が社会現象化、ディズニー井原氏、廣村氏に聞く

2014年04月30日


井原氏(右)と廣村氏.jpg


 『アナと雪の女王』がディズニーのファミリー映画という枠を超えた大ヒットを記録している。すでに動員は800万人、興行収入は100億円を突破(4月19日現在)。街では主題歌「Let It Go」を口ずさむファンの姿も数多く見られ、“アナ雪現象”という言葉まで生まれた。

 世界的にも当たった同作だが、日本は米国に次ぐ興行成績を収め、アニメ映画の世界興収歴代1位更新の立役者となった。なぜ、ここまで多くの人々の心を惹きつけることができたのか。配給するウォルト・ディズニー・ジャパン スタジオ・グループ マーケティングの井原多美エグゼクティブディレクター、廣村織香マネージャーに制作の舞台裏、宣伝展開を聞いた――。



「嬉しい」と「ホッ」とした気持ち

――興行収入は100億円突破が確実視されています(インタビューは4月8日に実施)。まず、これだけの大ヒットになった率直な気持ちを伺えますか。

廣村 「嬉しい」というのが素直な気持ちです。初めて観た時から歴史に名を残す映画だと思い、それを伝える使命があると感じていたので、果たすことができて嬉しいです。でも、もっと多くの人に観てもらいたいと思っています。

井原 嬉しいのと同じくらいホッとしたという気持ちもあります。この映画が持っているポテンシャルはすごく高いので、その力を最大限引き出すことができたという、使命を達成できた安堵感ですね。最後は「神頼み」というところまでやり切ったので、結果がどうなろうと悔いはなかったです。

――100億円突破という数字は想定していましたか。

廣村 「絶対に行ける」という確信こそなかったですが、作品のポテンシャルはそれだけのものがあると思っていました。

『アナと雪の女王』.jpg

大ヒット上映中! (C)2014 Disney. All Rights Reserved.


――日本の大ヒットを受け、米国本社からの反応はいかがでしたか。

井原 お祝いのメッセージは来ましたが、公開前のプレッシャーも凄かったです(笑)。全世界で、日本が最後の公開でしたから。アニメーション映画を公開する時の日本市場への期待は非常に大きいのです。昨年夏公開の『モンスターズ・ユニバーシティ』も、インターナショナル(米国を除く全世界)で日本が1位の興収(約90億円)となり、シェアは20%を占めました。製作総指揮のジョン・ラセターからは「『モンスターズ・ユニバーシティ』が90億円行ったんだから、世界でそれ以上にヒットしている『アナと雪の女王』はもっと行くだろう」と言われていて(笑)。「それはプレッシャーだな…」と思っていたのですが、ジョン・ラセターは正しかったですね。


吹替できる日本人はいるのか?

――『Frozen』という原題を『アナと雪の女王』にした経緯を教えてください。

廣村 邦題を決めたのは昨年の3月頃です。その段階では全編を観ていなかったのですが、エルサとアナという姉妹が出てくる話だということはわかっていました。本当は仲が良かったのに、エルサの魔法が原因で離れてしまった2人が引き起こすドラマ、というストーリーがわかるタイトルにしたくて、『アナと雪の女王』に決めました。

井原 ディズニーアニメーション史上初めてのWヒロインというのは訴求力があると思いましたし、両方とも非常に共感できるキャラクターです。あと、ファミリー層だけに留まらず、大人の女性にも観てもらうにはどうしたらいいか、大人の女性が楽しむ実写映画のように売っていくにはどうしたらいいかを考えた中で生まれた邦題です。

――他にも候補はあったのですか。

廣村 原題のまま『フローズン』という案もありましたし、原案のアンデルセンの『雪の女王』にするアイデアもありましたが、『アナと雪の女王』が最もその後のプロモーションをイメージしやすかったです。

アナと雪の女王.jpg

大ヒット上映中! (C)2014 Disney. All Rights Reserved.


――声優は、エルサ役を松たか子さん、アナ役を神田沙也加さん、雪だるまのオラフ役をピエール瀧さんが演じています。どういう経緯でこの3人に決めたのですか。

廣村 宣伝の人間としては「宣伝しやすい、露出しやすい人」という点も大きなポイントを占めがちですが、『アナと雪の女王』はオリジナル(字幕版)があまりに素晴らしく、「それを吹替でできる日本人は誰なのか? 本当にいるのか?」という課題がありました。ですから、今回は声優さんや俳優さん、どんなジャンルの方でもいいので、純粋に最もエルサやアナ、オラフになりきれる方を選びました。3人はミュージカルや舞台、音楽など色々な分野で活躍されていて、この役をできるのはこの方たちしかいないと思っていましたが、実際に演じてもらうと私たちの想像を遥かに超える素晴らしさで、最適なキャスティングができたと思います。

――ピエール瀧さんは最近『凶悪』にも出ていましたからね。ギャップに驚きました。

井原
 オラフはムードメーカーでありながら、重要な台詞を持つキャラクターです。声を担当される方は、面白いだけでなく、人間的な深みや厚みを持っている方でなければいけないので、瀧さんはぴったりだと思います。

廣村 我々が感動した字幕版と同じか、それ以上の吹替版を作るために、ご一緒させてもらった方たちでしたね。

――ディズニーアニメーションは吹替版のキャスティングが絶妙だと思うのですが、どのように決めているのですか。

井原 吹替制作を専門にしている「キャラクターボイス」という部署があり、そこと我々宣伝チームが初期段階からアイデアを出し合い、共同作業をしています。制作・宣伝など色々な立場で考えた結果、最適な人を選び出し、米国本社にプレゼンして了解を得ています。松さんや神田さんも、デモで録った音楽を本社に聴いてもらい、「素晴らしい」という声が挙がりました。

――キャラクターの声を決める部署は、ほかの洋画メジャー会社もあるのでしょうか。

井原 「キャラクターボイス」という専門的な部署があるのはディズニーだけだと思います。もともと、何語でしゃべっても同じ人がしゃべっているような形に管理する役割を担っているのですが、最近は「同じような声」という以上に、それぞれの国に最も適した人を起用するということに重点が置かれ始めており、松さん、神田さん、瀧さんはそのような方向性になった中で決まったキャスティングでした。 (つづく)




全文は、月刊文化通信ジャーナル5月号に掲載
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取材・文/構成: 平池 由典





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