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第26回東京国際映画祭 クロージングセレモニー

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第26回東京国際映画祭 クロージングセレモニー

2013年10月25日

東京サクラGPは『ウィー・アー・ザ・ベスト!』

受賞者&審査員.jpg


 第26回東京国際映画祭が9日間の日程を終え、25日に閉幕した。当日はTOHOシネマズ六本木ヒルズでクロージングセレモニーが行われ、各賞の受賞結果が発表された。コンペティション部門の東京サクラグランプリは、スウェーデン映画『ウィー・アー・ザ・ベスト!』が獲得。受賞者には賞金5万ドルが贈られた。

受賞作品・受賞者一覧

■コンペティション部門
・東京サクラグランプリ 『ウィー・アー・ザ・ベスト!』
・審査員特別賞 『ルールを曲げろ』
・最優秀監督賞 ベネディクト・エルリングソン『馬々と人間たち』
・最優秀女優賞 ユージン・ドミンゴ『ある理髪師の物語』
・最優秀男優賞 ワン・ジンチュン『オルドス警察日記』
・最優秀芸術貢献賞 『エンプティ・アワーズ』
・観客賞 『レッド・ファミリー』

■アジアの未来部門
・作品賞  『今日から明日へ』
・スペシャル・メンション 『祖谷物語-おくのひと-』

■日本映画スプラッシュ部門
・作品賞 『FORMA』


GP監督.jpg 東京サクラグランプリを受賞した『ウィー・アー・ザ・ベスト!』は、パンク・バンドに憧れる13歳の少女3人を描く青春映画。登壇したルーカス・ムーディソン監督(=写真左)は「グランプリ受賞に驚いています。この後は原宿に行って買い物をしようと考えていたぐらいで、まさか受賞できるとは考えていませんでした。この映画は、妻のココが原作を書いています。彼女自身がモデルとなっており、彼女の青春時代に感謝したいです」と喜びの言葉を語り、ココ・ムーディソンさん(=写真中央/右はお嬢さん)も「たくさんの少女、女性たちのインスピレーションになってほしい」と笑顔で語った。
 チェン・カイコー審査委員長は作品について「我々審査員は、グランプリには卓越した完成度を求めた。この作品は情熱と魅力にあふれ、本物の人間の絆を、いきいきとしたエネルギッシュな演技で描いている。審査員は全員一致でグランプリを贈ることに決めました」と高く評価した。

 そのほか、コンペティション部門の審査員特別賞はイラン映画『ルールを曲げろ』が受賞。劇団の海外公演をめぐり、親に反対されても自分の主義主張を変えない現代の若者を描く作品。ベーナム・ベーザディ監督は、「この賞を頂けて大変光栄です。スタッフに感謝したい。この一瞬を、イランの若者たち、アーティストたち、全ての国民たちと共有したいと思います。また新作で皆さんに出会えることを楽しみにイランに帰ります」と感謝の言葉を述べた。

 最優秀監督賞は、アイスランド映画『馬々と人間たち』のベネディクト・エルリングソン監督が受賞。馬のなかの人間的性質。そして人間のなかの馬と相通じる性質、それを描いた大自然のロマンス。エルリングソン監督は「これはとても大事な賞。私だけでなく、スタッフみんなものであり、出演した馬たちのものでもある」と語り、「馬たちに言いたいことはこういうことです。通訳の人は訳せるかな?『ブルルルン!』」と馬の鳴きマネを披露し、会場の笑いを誘った。

 最優秀男優賞は、中国映画『オルドス警察日記』のワン・ジンチュンが受賞。モンゴルを舞台に過労死した警察官を描くドラマ。ジンチュンは「映画祭、ニン・イン監督に感謝します。あと、演技に入り込んで感情を爆発させていた私とうまく付き合ってくれたアシスタントにも感謝(笑)。この賞を受賞し、翼をもらったような気がします。大空に羽ばたいて、暗闇を照らしたいです」と何度もガッズポーズを見せて喜びを表した。

 最優秀女優賞は、フィリピン映画『ある理髪師の物語』のユージン・ドミンゴが受賞。未亡人となった女性が、夫が営んでいた床屋を引き継ぐ物語。ドミンゴは「この賞の受賞は映画にとって大きな力になります。私にこの役を与えてくれたスタッフと喜びを共有したいです」と語った。本作ではシリアスな役を演じているが、母国では著名なコメディアンのドミンゴ。「数日前にフィリピンに戻ったのですが、ホテルの朝食券が付くというので、つられて日本に戻ってきました(笑)。今回が最後の日本滞在ではありません。まだまだドン・キホーテで買い物が残っているので、また戻ってきます」と持ち前のジョークを連発し、観客を笑わせた。

 最優秀芸術貢献賞は、メキシコ映画『エンプティ・アワーズ』が受賞。あるモーテルで出会った男女の束の間の誘惑ゲームを描くもの。アーロン・フェルナンデス監督が帰国してしまったため、セールス・エージェントのフレデリック・コルベ氏が代理で登壇し、「日本の映画市場は大変重要。パワフルで強い映画業界であり、素晴らしい環境です。このメキシコ映画に賞を与えてくださってありがとうございます」とコメント。また、フェルナンデス監督から喜びのビデオレターも上映された。

 観客賞は、キム・ギドク原案の韓国映画『レッド・ファミリー』が受賞。韓国に住む北朝鮮スパイの疑似家族と、隣人家族の双方の矛盾を描く物語。イ・ジュヒョン監督は「光栄な賞を頂いて、胸がグッときています。キム・ギドク監督による素晴らしいメッセージが含まれたシナリオ、そして素晴らしい俳優の力が合わさって大きなエネルギーが生まれました。それが必ず観客の皆さんに伝わると思いました」と述べた。

チェン・カイコー氏.jpg チェン・カイコー審査委員長(=右写真)は総評で、「はっきりと言えるのは、東京国際映画祭は大変組織化され、観客にも情熱があり、スタッフも大変優しいこと。東京での滞在はとても楽しく、これがもっと世界のフィルメーカーに伝われば、さらに良い作品がコンペティション部門に集まるでしょう」とし、来年の開催に向かって、「新しく覚えた日本語で言いたい。『倍返しだ!』」と流行語を使い、次開催での更なる飛躍に期待した。

 なお、日本映画スプラッシュ部門の作品賞は『FORMA』が受賞。女友達の友情の崩壊を描くストーリー。坂本あゆみ監督は感激で言葉を詰まらせながら、「6年前に作り始めましたが、途中で体調を崩して時間がかかってしまいました。その思いを、こういう形で認められて嬉しいです」と語った。クリスチャン・ジュンヌ審査員は「鑑賞した8作品はエネルギーに溢れた作品で、チャレンジングな気持ちにさせられた」と総評し、パオロ・ベルトリン審査員は「全員一致で『FORMA』だった」と審査の内訳を明かした。

 また、アジアの未来部門の作品賞は中国映画『今日から明日へ』が受賞し、次点のスペシャル・メンションとして日本映画『祖谷物語‐おくのひと‐』に決定。『今日から明日へ』は、高学歴にも関わらず低収入にあえぐ「蟻族」を描く青春ニューウェーブ映画。ヤン・フリロン監督は「胸がいっぱい」とコメントし、ガッツポーズで俳優・スタッフと喜びを分かち合った。なお、青山真治審査員は「釜山映画祭と今回の東京映画祭で20本のアジア映画を観ましたが、問題意識は強いものの、笑える映画が1本もありませんでした。問題意識を追及するために必要なものは『笑い』です。ですから、個人的にはあまりノレませでした」と現在のアジア映画の傾向に釘を刺した。

椎名ディレクター・ジェネラル.jpg セレモニーの最後に、今回からディレクター・ジェネラルに就任した椎名保氏(=右写真)が登壇し、「振り返ると、台風と台風の隙間をうまくくぐり抜けて、天候に恵まれた映画祭でした。閉会式も、台風はじっと待っていてくれた(笑)。17日は安倍総理、ポール・グリーングラス監督、トム・ハンクスさん、三谷幸喜さん、役所広司さんなど多数のゲストに参加頂き、華やかにオープニングを迎えることができました。期間中は多くのスタッフと210名のボランティアが頑張ってくれました。2020年、東京でのオリンピック開催が決まりましたが、それまでに東京国際映画祭は7回あります。若い、才能のあるクリエイターが、東京国際映画際を目指して出品し、世界に羽ばたいていく、そのような映画祭になるために1年1年積み重ねていきたい」と述べ、「また来年、東京でお会いしましょう!」と映画祭を締めくくった。 了


取材/文・構成 平池 由典

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